この記事でわかるポイント
- デットファイナンスの基本
- 借入によるメリットとデメリット
- 貸借対照表の重要性について
ファイナンスとは、資金調達を意味する言葉ですが、多くの企業にとって円滑な資金調達は、急務な課題となっています。
昨今では、世界規模での経済の低迷が危ぐされていますが、これまで影響の原因とされてきたバブル崩壊後、あるいはリーマンショック時などの金融危機とは、いささか根幹的な問題が大きく異なっているようです。
最近、新型コロナウイルスの影響で、コロナ倒産が多くなっていると言われているわね。
リーマンショックの時よりも、さらに倒産件数が増えそうな勢いだね。
じゃ、どこの会社も、資金調達には四苦八苦しているんじゃない ?
そこで、資金調達についての話なんだけど、今回はデットファイナンスについて解説してみようとおもう。
なんだか、怖そうな資金調達方法だね。
ハハハ、こちらはデット、スペルはDebtだから死を意味するDeadとは全く違うよ。
う、ごめんなさい。
話を戻すと、今は世界的規模の景気低迷で、どこの国も経済を優先させようと思って、無理をしているきらいがあるね。
なるほど、経済危機が起こりつつあるのかしら ?
可能性としてはあるよ。ただ、リーマンショックの時とは違って、金融機関にはお金があるから、状況は全く違っているね。
まずは、基本的な話として、借入について解説しておこう。
よろしくお願いします ! 先輩。
目次
借入とは何であるのか
そもそも借入とは、金融機関からお金を借りることを意味していますが、似たような言葉に貸し付けや融資、ローンやキャッシングなどの用語があります。
実はこれらの用語は、それぞれに借り入れのタイプによって区分わけされています。
まず貸し付けは、利息及び支払期限を定めて、お金を貸すことを指しています。
次にローンは、目的別用途により、住宅や教育費に関する支払いが足りなくなり、金融機関から借りることで、それらの支払いに充てることを意味します。
また融資の場合、企業が事業資金として、借り入れを行うもので、事業資金には運転資金と設備資金とがあります。
また、一般の方が生活の為に、借り入れを利用する方法として、クレジットカードのキャッシングが挙げられます。
借入先の区分としては、クレジットカード会社のような民間の金融機関と、国が運営する公的機関とがあります。
公的機関には、住宅金融支援機構や年金住宅福祉協会などがあり、審査は比較的厳しいのですが、金利がかなり安いといった特徴があります。
ローンの種類には、大きく分けて目的の定められていないフリーローンと、住宅や教育の為の学資資金など、目的が限定されたものに区別されています。
目的が決められたものに関しては、利用目的を証明する為の必要書類を、提出することが義務付けられています。
また、ローンには、借り入れの際に担保の有無による区分わけとして、担保付きローンと無担保ローンとがあります。
住宅ローンなどは、担保の必要な有担保ローンに区分されているもので、基本的には購入する土地や家屋などがその担保となることが多いようです。
借入先については、民間の金融機関として、クレジットカードの発行を及び、フリーローンなどの取り扱いを行う信販会社および、クレジットカード会社があります。
また、銀行などの金融機関は、会社や個人も含めて、様々なローンに対応しているという特徴を持ちます。借り入れに際しては、どの機関であっても、必ず審査が必要となります。
審査を行う理由は、返済能力の有無を確かめる為です。簡単に言えば、返済能力があると見なされれば審査は通りやすく、逆に返済能力なしとみられてしまえば、審査は通りにくくなってしまいます。
また、借入先によって、審査の内容は異なってきますが、借入金額やその用途、借り入れを行う会社によっても提出書類などが変わってきます。
つまり、デットファイナンスとは、お金を借りるということなのね。
基本的にはそうだね。
デットファイナンスは、企業にとって負債にあたるものなんだけど、負債のすべてが借り入れとは限らないんだ。
商品が売れなくて、赤字を出せば、それも負債になるのよね。
そういうことだね。基本的には、負の財産の事を意味するからね。
次に、デットファイナンスについて、その仕組みを解説しておこう。
デットファイナンスの仕組み
デットファイナンスの英語表記は、Debt Financeで、直訳すると借入金融となります。また、このDebtには負債といった意味があり、Financeは資金調達を意味する言葉で、負債に関する資金調達方法のことをデットファイナンスといいます。
なぜ、負債にあたるのかというと、借り入れは借金であり、貸借対照表上でも負債の部に記載されるものだからです。
一般的に、起業する際には、銀行を含む金融機関などの融資による、事業資金の調達を行いますが、アセットファイナンスやエクイティファイナンスによる資金調達が難しいからです。
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アセットファイナンスとは、会社の資産の売却や担保による資金調達方法で、起業時には会社資産を持たないのが普通です。
また、エクイティファイナンスは、出資による資金調達方法で、特定の出資者を募る必要があるからです。
新規事業において、アセットファイナンスは不可能に近く、エクイティファイナンスに関しても、優れたアイデアや余程の縁故がない限り、資金調達はかなり敷居の高いものになってしまいます。
つまり、資金調達方法としては、大きく分けてこの三つがあるのですが、新規事業に限っては、ほとんどの企業がデットファイナンスを利用することになるわけです。
さて、このデットファイナンスの仕組みは、融資を含む借り入れによる資金調達方法です。
具体的な方法としては、銀行などの金融機関による融資、社債や私債の公募あるいは、コマーシャルペーパーによる資金調達方法です。
コマーシャルペーパーとは、有価証券にあたるもので、短期の約束手形とされるものです。いずれにせよ、共通しているのは、必ず返済しなければならないという点です。
コマーシャルペーパーのことをもう少し細くすると、企業が短期資金の調達を目的に、マーケットに対して割引形式で発行する、無担保の約束手形のことを指します。
返済期限となる償還期間は、一般的には1か月から3カ月間が多く、金利水準は企業の信用力に反映される為、開業時に行うにはかなり無理があります。
しかし、一定の信用力が得られるならば、金利をかなり低く抑えられるメリットがある為、短期プライムレートより低いコストで、資金を調達できることが多い有効な手段と言えるでしょう。
借金は悪といった考え方もあるけど、企業にとっての借金は、事業を維持する為にも会社を大きくするにも必要なことなのね。
確かに、自己資金のみで、経営を行うというのも一つのやり方なんだけど、自己資金以上の投資はできないからね。
デットファイナンスの仕組みを理解したところで、どんな種類のがあるのか特徴を含めて説明しておくよ。
デットファイナンスの種類と特徴
デットファイナンスの大きな特徴は、アセットファイナンスやエクイティファイナンスによる資金調達方法と比べても、調達先がかなり豊富だという点です。
【参考記事】「融資」と「出資」どちらが良いの?違いとメリットとデメリット
そして、ある程度まとまった資金を得やすく、帳簿上負債として記載されますので、利息などの支払いは損金として扱われ、税金に関して優遇措置が取れることにあります。
では、豊富なデットファイナンスの種類と特徴を、個別に簡単に解説しておきましょう。
銀行からの融資
融資のタイプとして、プロパー融資と制度融資があります。
プロパー融資の場合、企業の実績と信用力を重視している為敷居が高く、起業する際や中小企業の場合、信用付き融資などの制度融資がおすすめです。
日本政策金融公庫の融資
起業向けには、新事業活動促進資金や創業融資制度などがあります。
担保や保証人なども不要で、金利が安いのが魅力ですが、それなりに審査は厳しく、時間も長くかかってしまうが難点です。
自治体からの制度融資
制度融資は、信用保証協会が債務保証をする仕組みのことで、いわゆる保証付き融資がこれにあたります。
信用保証協会が、利用者に対して保証を行い、自治体認定のもと、銀行に融資の紹介を行うといった制度です。
審査時間が長く、2カ月ほどかかってしまうこともあり、自己資金も50%ほど求められることが多いので注意が必要です。
ビジネスローン
ビジネスローンには、銀行系と消費者金融が提供するサービスがあります実績の乏しい中小企業者向けで、担保や保証人も不要で審査もそれほど厳しくなく、即日での融資も可能です。
ただし、法人向けの融資であり、金利がやや高めなのが難点です。
手形割引
会社間取引で、手形取引を行っている場合には、手形割引を利用することがあります。
手形割引とは、商取引で受け取った手形を、銀行や専門業者に売却することを言います。
手形も売掛債権ですので、ファクタリングによく似ていますが、償還請求権があり、手形には振出人の債務不履行の際、買い戻す義務があります。
また、手形割引は、借り入れにあたるもので、この点でもファクタリングとは大きく異なります。
私募債
自社での社債を発行して、投資家から資金を借り入れる方法がこの私募債です。
担保や保証人などが不要で、一般的な融資よりも金利を抑えられるといったメリットがあります。
ただし私募債は、あくまでも借り入れで返済の義務があり、企業の信用力が高くなければ、出資者を募ることは難しいでしょう。
家族や知人からの借入
事業に必要となる資金が、比較的多くなければ、親族や知人からの借り入れも、一つの検討材料となります。
ただし、身近な関係があるがゆえトラブルにもなりやすく、返済条件や借入条件の取り決め、あるいは権利や義務などを文書化しておく必要があるでしょう。
かなり種類は多いのね、中には知らない方法なんかもあるわ。
借り入れによる資金調達は、かなり種類が多いのもその特徴なんだ。
そこで、デットファイナンスに、どんなメリットがあるのかをまとめておくよ。
デットファイナンスのメリット
デットファイナンスは、会社の負債として、借り入れによる資金調達になるものです。
当然、借入額は少ないに越したことはないのですが、上手く借り入れを行う事ができれば、この上ない資金活用術になることをご存じでしょうか。
そこで、デットファイナンスのメリットには、どのようなものがあるのかを、それぞれの項目別に説明していきましょう。
出資と比べ資本コストが安く済む
デットファイナンスと比較するうえで、エクイティファイナンスが挙げられます。
エクイティファイナンスは、第3者の出資による資金調達で、出資者に対して返済義務はないのが最大のメリットですが、リターンつまり、配当などの見返りが必要となります。
デットファイナンスの場合、金利を低く抑え込むことにより、期待収益率を小さくできるといった効果があります。
企業としては、借入金となる元本を事業に使い、借り入れによる利息を利益で補うことさえできれば良いわけです。
つまり、それ以外の収入は利益であり、期待収益率がそれだけ高くなるわけです。
経営権に影響を与えない
これも、エクイティファイナンスの対比となりますが、同じ出資であっても、社債の発行もデットファイナンスとなります。
銀行と同様、こうした出資は、企業外部の債権者という立場である為、経営参加権がありません。
つまり、経営に関与されることなく、自由な事業展開が望めることになるわけです。
節税効果が望める
借入金は、貸借対照表において負債の部に入りますが、利息分については税務計算上、損金として扱われる為、結果的に所得を減らすことにつながる節税効果があります。
つまり、利息の税率分は、キャッシュアウトを防ぐというコストダウンにつながるわけです。
資金調達の選択肢が多い
融資の方法には、公的機関の融資制度利用から、民間の金融機関までさまざまです。
また、目的別用途から自由なものまで、高額融資から小口融資まで、実に多くの選択肢があることは、融資元を見つけやすく、資金調達に有効な手立てと言えるでしょう。
企業信用格付けの向上が見込める
デットファイナンスの特徴として、信用貸し付けであることが、その特徴といえます。
融資の場合、企業の事業実績によって、信用力はアップしていきますが、貸付による返済力もまた信用力アップにつながるものです。
特に銀行などは、融資の際に企業格付けを実行しており、信用力の高さは返済実績を作ることになり、次の融資に大きく関与してくるものです。
事業規模を戦略的に拡充させることができる
デットファイナンスは、ほかの資金調達を方法より、比較的大きな資金を得る事ができます。
企業を大きくするターニングポイントに、事業拡大がありますが、いざという時に資金を確保できることは、事業戦略において大きな強みとなるものです。
逆に、資金調達が出来なければ、せっかくのビジネスチャンスを逃がすことになってしまいます。
返済金額が決まっている
融資など、借り入れに際しては、必ず返済計画を立てておく必要があります。
毎月決まった金額を利息とともに支払い、いつまでに支払いが完了するのかが定められているものです。返済は計画的に実行されるものですが、投資家の出資によるエクイティファイナンスでは、リターンを求められます。
リターンは利益に応じて求められるもので、デットファイナンスの場合、収益が多くなっても返済額が多くなることはありません。
融資を受けた時点で、返済計画をまとめられますので、事業計画を立てやすくなることにもつながります。
このように、デットファイナンスは、企業の借金であることは間違いにないのですが、借り入れが悪いものではないということが、お分かりいただけたのではないでしょうか。
なるほど。かなりメリットが多いのね。
ここでは、企業に関してのみ解説しているんだけど、個人的にも参考にできることは多いよね。
確かに ! でも、当然デメリットもあるのよね。
どんなものでも、デメリットやリスクは、多かれ少なかれ存在するものだよ。
そこで次の項では、気になるデメリットに関してまとめておこう。
デットファイナンスのデメリット
融資は負債として計上される
貸借対照表上、借入金は負債として扱われるものです。
いわば、企業の借金となるものですが、負債の比率が高くなってしまえば大きなデメリットにもなりかねません。
例えば、貸借対照表を提出する必要がある場合、相手の印象が悪くなり、追加融資を受ける際などに審査に通過する可能性が、低くなってしまうことを意味します。
返済義務の発生
借り入れ後は、利息とともに月々の返済が発生する事になります。
場合によっては、経営の負担となり、売り上げの低迷などにより、返済不能に陥ってしまうこともあります。
利息などの支払い
借り入れに際して、利息が発生する事は致し方のない事ですが、融資元によっては金利が高く、事務手数料や繰上手数料などがかかってくる場合もあります。
自己資本率の低下
借り入れによる負債が膨らむ事は、企業の自己資本率が低下することを意味しています。
借入金は、他人資本にあたるもので、自己資本率の低下はさまざまな弊害を及ぼします。
例えば、取引先からの評判や評価が下がったり、銀行などの金融機関から融資を受けにくくなってしまいます。
また、デットファイナンスではありませんが、国や自治体からの補助金や助成制度が利用しにくくなってしまいます。
財務面での安全性の高さ
デットファイナンスは、資金調達が他人資本となってしまう為、資金調達に成功したとしても必ず返済しなければなりません。
財務状況を立て直す為、借り入れを行うことは有効な手立ての一つですが、借入金が増え過ぎてしまえば、経営そのものを圧迫してしまいます。
デメリットも多く感じるけど、ほとんどが借りる責任なんだよね。
そういうことになるね。
よく、返済は計画的にとはいうけれど、返済計画を作るよりは、守っていく方が難しいものだね。
もし、返済に困ったらどうするの ?
ここじゃ説明できないけど、救済措置や制度もあるから、そうしたものを利用していけばいいね。
なるほど ! よく勉強になりました。
まとめ
返済は計画的になどと、よく耳にしますが、デットファイナンスにおける資金調達は、何よりもまず返済計画を重視する必要があります。
なぜなら、返済が滞ってしまえば、事業計画そのものに支障をきたしてしまうからです。
その為にも、メリットとデメリットを踏まえて、正しく借り入れを行っていく必要があります。
以上、デットファイナンスとは?負債による資金調達方法のメリットとデメリット…でした。
\ メリット盛り沢山 /