この記事でわかるポイント
- 新創業融資制度について
- 無担保&保証人無しでの融資が可能
- 小中規模の事業向けの融資性である点
企業の経営者として、成功をしてみたいと願うのは、誰しも一度は考えるのではないでしょうか。そこで、一番に頭に思い浮かべるのが、どうやって資金を集めるのかということです。
ですが、手持ちの資金が乏しい、あるいは貯蓄も十分に無いから、あきらめるというのは時期尚早というもの。実は、事業資金を調達する、とっておきの方法があったのです。
大きな会社でなくてもいいから、女性起業家というものにはかなり興味があるわ。
女性ならではの分野も随分増えてきているから、最近は女性の経営者がずいぶんと目立つようになってきたよ。
憧れはあるのだけど老後のことを考えるのが先かな。
そんなことはないよ。最近は20代や30代全般で、会社を立ち上げるという話もよく聞くし、実際に若手経営者はずいぶんと増えてきているよ。
会社を興す為には先立つものも必要だから、ちょっと無理かなって。
何も事業資金は、自己資金で賄う必要はないんだよ。
でも経営の経験も無いのに、簡単に融資が下りるとは思えないわ。
そうか。それでは今回は起業する際に必要な事業資金を、どうやって融資してもらえるか、といった点について解説してみよう。
それは、かなり興味ある話。先輩、早速解説をお願いします。
じゃ、初めてでも比較的融資の下りやすいとされる、日本政策金融公庫を紹介しよう。
目次
日本政策金融公庫の歩み
一般の方には、あまり聞き慣れない機関ですが、起業を志す方なら一度は、聞いたことがあるのではないでしょうか。以外に聞こえるかもしれませんが、日本政策金融公庫は一般企業と同様に、株式会社といった存在です。
ただし、一般的な株式会社とは異なり、日本政府が100%出資する株式会社だというところです。つまり、なぜこのような会社が存在するかといえば、日本政府が株主の会社で国の政策を維持する為に、必要不可欠だという点が主な理由です。
もちろん、名称でお分かりの通り、金融に関する事業を行う会社で、その目的は金融支援を行う為の会社だったのです。具体的な、事業目的は、国の政策に基づく中小企業や小規模企業、農林水産業などの経営の成長・安定を支えています。
また、国内の地域経済の活性化と金融安定などを支える為に、金融支援を行うのが主な業務となっています。日本政策金融公庫は、一般的には日本公庫と呼ばれ、民間の金融機関を補完する役割を担っています。
ではなぜ、こうした機関が必要とされているのでしょうか。それは、起業家は一般にみて、業歴のある事業者に比べると、信用力でどうしても見劣りしてしまうことです。実際に銀行を始め民間の金融機関は、信用力の劣る起業家への融資は相対的にリスクが高いため消極的なのは皆さまご存じのことではないでしょうか。
そこで、そうした民間では、融資しづらい小規模事業者に対して、積極に対応してくれるのが、日本公庫の存在と言えるものです。
日本政策金融公庫は2008年10月に設立された比較的新しい会社ですが、もともと国の機関として政策金融を行っていた会社でした。これは、国民生活金融公庫・中小企業金融公庫・農林漁業金融公庫と、もともと独立していた期間でしたが、これらが統合され、日本政策金融公庫として新たに設立されたという経緯がありました。
日本政策金融公庫は「こっきん」とも呼ばれ、一般的な金融機関が融資しにくい、補完金融といった役割を担っています。ただし、一般的な金融機関とは異なり預金を預かることはありません。税理士・中小企業診断士といった専門家と連携していることも多く、資金力の乏しい起業家たちの最後の砦ともいわれる存在です。
金融公庫って話では聞いたことあるけど、日本政策金融公庫の事だったのね。
ビジネスの世界では「こっきん」といった愛称で呼ばれることも多いよ。「会社を興すならまずはこっきんで。」というのも珍しい話じゃないよ。
へーえ、そうなんだ。
まずは融資を考える際に、真っ先に名前が挙がる「新創業融資制度」について解説しておこう。
新創業融資制度の概要
新創業融資制度とは、日本政策金融公庫が推し進める事業で、国民生活事業の一環で行われている融資制度のことです。この融資制度の特徴は、新たに起業される方及び、事業を開始して間もない方に、無担保・無保証人でご利用いただける融資です。ただし、国の機関からの融資制度ということもあり、ご利用の際には次の要件に当てはまる必要があります。
創業の要件
これから新規事業を始めようとされる方または事業開始後税務申告を2期終えていない者がこれに該当。
雇用創出等の要件
- 雇用の創出を伴う事業であること。
- 現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める者。
- 産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方。
- 民間金融機関と公庫による協調融資を受けて新規事業を行う者。
自己資金要件
創業資金総額の10分の1以上の自己資金が確認できること。ただし現在、お勤めの企業と、同じ業種の事業を始める方、あるいは認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方であれば、本要件を満たすものとします。
限定した資金用途である事
新規事業を起こす為の資金、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金であること。
また、融資限度額や返済期間に関しては、次の通りの規定があります。
・融資の限度額は、上限を3,000万円とする、ただしこの場合、運転資金が1,500万円であること。
・返済期間は、各種融資制度で定めるご返済期間以内であること。年利に関しては、融資制度・お使いみち・ご融資期間・担保の有無などによって、異なる利率が適用されます。
詳しくは、日本政策金融公庫公式ホームページで、年利の割合の詳細が掲載されていますので、こちらをご参考に確認してください。日本政策金融公庫は、これまでに説明した通り、国民生活金融公庫・中小企業金融公庫・農林漁業金融公庫が統合された機関です。したがって、現在もそのまま、国民生活事業・中小企業事業・農林水産事業と分けられていますので、それぞれに該当する融資制度をお選びください。
なるほど。新規事業を考えるなら、新創業融資制度を利用すればいいのね。
答えを出すのはまだ早いよ。色々な融資制度もあるから、まずはどのような種類があるのかを見ておこう。
「こっきん融資制度」はこんなにもある
日本政策金融公庫公式ホームページを閲覧するほど、実に多くの融資制度があることが分かります。というのも、もともとこの日本政策金融公庫は、国民生活金融公庫・中小企業金融公庫・農林漁業金融公庫とを統合した機関の為、現在でもそれぞれの分野で、独立した融資制度を保っているからです。主な融資制度は、前述の三つの分野が基本ですが、それぞれにさらに細分化した融資制度を持ってるのがその特徴です。まずは、それぞれの分野で、どのような制度があるのかを簡単に説明しておきましょう。
国民生活事業 (事業資金に関する融資)
- 無担保融資制度
- 担保あり融資制度
- 新創業融資制度
- 災害貸付 (台風や地震などのほか、新型コロナウイルス感染症特別貸付など)
経営者の保証を不要とする融資
- 経営者保証免除特例制度
マル経融資
- 小規模事業者経営改善資金
- 生活衛生改善貸付など
教育資金に関するご融資
- 国の教育ローン
- 恩給や共済年金などを担保とするご融資
中小企業事業
- 5年以内のものから20年以内の融資タイプがある
農林水産事業 (農・林・漁・食品産業の融資制度)
- スーパーL資金(農業経営基盤強化資金)
- スーパーW資金(農林漁業施設資金)
- アグリビジネス強化計画
- 農業改良資金
- 青年等就農資金
- 経営体育成強化資金
- 農林漁業セーフティネット資金
- 林業基盤整備資金
- 漁業経営改善支援資金
- 特定農産加工資金
- 食品流通改善資金(生製提携型 / 生販提携型)
年利の目安は、2020年4月現在で、国民生活事業の融資制度が0.3%から2.75%、中小企業事業の融資制度で、0.3%から1.3%の間です。また、農林水産事業の融資制度に関しては、0.1%~0.37%となっており、制度によっては無利子での融資が行われています。
このように、日本政策金融公庫の融資には、実に様々な種類の融資制度があり、極端に低い利息からお分かりのように、基本的には援助目的の金融支援を行う為の制度となっています。条件に該当すれば、どなたでも利用ができ、低金利での借り入れが行えるのがこの融資の特徴です。新規事業以外にも、対応する融資がありますので、会社を興そうとされる方以外でも、ぜひ利用しておきたい制度と言えるでしょう。
随分多くの融資制度があるのね。
すべての職種に対応していなくては不公平だからね。
よくわからない制度もあるわ。
内容を詳しく知りたい場合はそれぞれの融資制度の公式HPを参照してみるといいよ。
でも職種によっては、どの制度を利用するか迷う場合もありそうね。
そうかも知れないね。それじゃ、どの制度で借りた方がよいのか比較してみようか。
創業融資を受ける際にどの制度で借りるのが有利なのか
中には、どの制度を利用しても、お金を借りられればそれで良い、といった方もいらっしゃるかもしれませんが、できれば利息が安いに越したことはありません。では、日本政策金融公庫の融資制度の中で、どの制度を利用するのが有効であるのか、実際に検証してみましょう。
まず、創業融資で、ぜひ利用したいのは、新創業融資制度と、中小企業経済力強化資金制度の二つに絞って良いでしょう。その理由は、どちらの制度を利用したとしても、無担保で借り入れが行えるといったメリットがあるからです。
しかも、保証人及び代表者の保証なども不要ですので、どちらにしてよいのか迷うところでしょう。そこで、この二つの融資制度を比較するにあたり、端的に利息で比べてみましょう。
まず、最初に注意事項として、日本政策金融公庫の金利は、3カ月に一回程度見直しが行われる可能性が、あるということを覚えておいでください。ちなみに、最新の金利情報は公式HPで常に最新の金利が公表されていますので、そちらをご参照ください。2020年4月現在では次の金利が適用されています。
新創業融資制度の金利
- 基準利率2.46%~2.75%
- 特別利率A2.06%~2.35%
- 特別利率B1.81%~2.10%
- 特別利率C1.56%~1.85%
- 特別利率D1.81%~2.10%
- 特別利率E1.06%~1.35%
- 特別利率J1.41%~1.70%
- 特別利率P2.26%~2.45%
- 特別利率Q2.06%~2.35%
なお、利率の変動に関しては、融資期間や使い道・融資額などによって変動があります。
次に、中小企業経営力強化資金の金利についてですが、貸付期間が5年以内のものから、19年超20年以内のタイプまでありますので、5年単位でのご紹介をしておきます。
中小企業経営力強化資金の金利
- 5年以内 基準利率 1.11%特別利率1 0.71%特別利率2 0.46%特別利率3 0.30%9年超
- 10年以内 基準利率 1.12%特別利率1 0.72%特別利率2 0.47%特別利率3 0.30%
- 14年超15年以内 基準利率 1.30%特別利率1 0.90%特別利率2 0.65%特別利率3 0.40%
- 19年超20年以内 基準利率 1.30%特別利率1 0.90%特別利率2 0.65%特別利率3 0.40%
こうして実際に比べてみると、おおよそ中小企業経営力強化資金の方が、お得だということがお分かりいただけるかと思います。利率の幅は、些少に感じるかもしれませんが、借入額が大きくなればなるほど、利率の低さが有利に働くことは間違いありません。
中小企業経営力強化資金というのもあるのね。
新創業融資制度と比べてみると、金利面でかなりお得だということがわかるね。
ですね。
ここで紹介した二つの融資制度だけど、中小企業経営力強化資金の場合は少し特殊なんだ。
中小企業経営力強化資金を利用するには
まず、この中小企業経営力強化資金を利用する為には、認定支援機関のサポートが必要不可欠だということです。では、認定支援機関とは、どのような機関なのでしょうか。
認定支援機関は、経営革新等支援機関とも呼ばれる、国が認定する公的な支援機関のことです。認定支援機関は、主に中小企業や小規模事業者が、安心して経営相談等が行えるところで、商工会や商工会議所などがよく知られています。
また、そのほかにも、中小企業支援者のほか、金融機関・税理士・公認会計士・弁護士等が、主な認定支援機関として認定されています。では次に、こうした認定支援機関を利用するメリットとは、どのようなところにあるのでしょう。
まず、認定支援機関に在籍する方々は、すべてビジネスのプロであるというところです。つまり、融資の分野にも特化している為、相談以外にも手続きのサポートをしてもらえる点です。そして、認定支援機関として認定されていますので、金融機関の評価が非常に高いということです。
したがって、政策金融公庫に対して、信用力を上げることができますので、融資が通りやすく、融資の成功率がアップするとされています。ただし、注意しておきたいのは、認定支援機関だからと言って、どこも同じではないということです。
すなわち、融資を目的にしているのであれば、融資の実績があるかをしっかり聞いて、選んでおくことが非常に重要なポイントとなります。
基本的に融資は、借りる側の信用度が上がれば上がるほど有利に働きます。これは、日本政策金融公庫も例外なく、認定支援機関経由の融資であれば、自身で申し込みを行うよりも、融資が通りやすく、借入金額も多くなりやすいといったメリットがあります。
また、融資は何かと手続きや面倒。しかし、認定支援機関であれば、融資の手続きに慣れていますので、すべてに無駄がありません。また、経営のプロでもありますので、企業の際のアドバイスがもらえるという点では、これに勝るものはないのではないでしょうか。というのも、認定支援機関は、税理士事務所や、現役の中小企業診断士が登録しているケースがほとんどだからです。
なるほど。商工会や商工会議所も、こういった役割があったのね。
いまだに一般の人からは、何をやっているのかわからないという声も聞くけど、経営者のサポートを行っているんだ。
よくわかりました。
注意するポイントとして、一定の期間で金利が変わってくるから、よく注意しておくことだよ。
もし事業を興す機会があれば、参考にさせていただきます。
まとめ
新たに事業を行うのであれば、新創業融資制度の有用性が、かなり理解できたのではないでしょうか。借り入れを行うということは、事業資金を得るとともに長期にわたる返済を行うということです。計画性を持って事業を行う為にも、専門家のサポートを受け、資金調達を行うのがベストと言えるでしょう。
以上、新規事業を始める方必見の「新創業融資制度」について解説…でした。
\ メリット盛り沢山 /