この記事でわかるポイント
- 決算書の作成方法と読み方
- 決算書の役割について
- 金融機関等から融資を受ける際に必要なこと
一般的な平社員であれば、ほとんど見ることのない決算書ですが、会社経営者であれば、必ずかかわってくるものです。
一般の方には、なじみはありませんが、決算書は経営をひもとき、分析する為の情報がぎっしりと詰まっています。
決算書をないがしろにすれば、黒字倒産にもなりかねない状況を招く、恐れがあるともいわれています。
決算書って、家計簿みたいなものなのかな ?
あながち間違っちゃいないけど、さらに細かい情報の集大成ともいえるね。
大きな会社で必要になるものなの ?
小さな会社でも必要さ。決算書はいわば、会社の成績表をみたいなものなんだ。
なるほど。少し分かりかけてきたみたい。
一般人にはあまりなじみがないからね。
そこで今回は、決算書の役割と必要性について詳しく解説してみようと思うんだ。
それはぜひ知りたいわね。
まずは決算書が、どのようなものであるのかを説明してみよう。
よろしくお願いします ! 先輩。
目次
決算書とはどういったもの ?
一般的には、決算の時に開示される事が多い為、決算書と呼ばれる事が多いのですが、正式には「財務諸表」といいます。
決算書は、一定期間の区切りとして、企業の経営状況や財務状況を表す書類の事です。
決算書は、いくつかの項目の集約書類であり、主に以下の4点が財務諸表に当たるものです。
4つの財務諸表
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
- 株主資本等変動計算書など
このうち、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つが特に重要視され、財務三表と呼ばれる重要な書類となります。
決算書は、主に自社の企業活動を示すものであり、事業資金の流れとして、一会計期間で区切って作成されるものである為、決算書の名称を主に使用しているのが現状です。
ではなぜ、こうした決算書が必要となるのでしょうか。実はこの決算書、取引先及び金融機関などに対して、自社に関する一定期間の収支や資産状況の報告をすることを目的とするものです。
また、前述の通り決算書は、一連の企業活動を一会計期間で区切って作成されますので、株式を公開している場合は株主に対して報酬を支払う必要もありますし、税務署に税金を支払う際にも必要となるものです。
さらに、この会計期間は、原則的に1年間で区切るのが一般的です。なぜなら、一定期間で線引きすることにより、経営の見直しが行えるからです。
つまり、事業資金が足りているか、また一定の利益が出ているか、無駄なコストがかかっていないか、負債が増えていないかなど、様々なトラブルを察知できるからです。
こうした経営のトラブルは、事業が傾くきっかけにもなりかねません。その為決算書の作成は、1年おきに決算書を見直すことにより、次年度の事業計画を立てる事が目的となります。
前述の通り、株式を公開している場合は、株主に対して配当を行う必要がありますが、その為にも企業は株主に対し、会社の経営状況の具体的な内容を決算書によって、報告する義務があるのです。
さらに、金融機関に対して、融資による資金調達を行う際にも、この決算書は必要となります。融資の場合は、必ず審査が行われますが、その融資の可否を判断する材料として、決算書を提出する必要があります。
もちろん、必ずしも審査に際し、様々な提出書類がありますが、その中でも決算書は審査に対し、融資する判断材料として、大きな比重を占める重要書類となります。
決算書って、一つの書類じゃなかったのね。
そうだね。決算書は、財務三表を含む、様々な書類で構成されているんだよ。
なんだか難しそうね。
基本的な読み方さえわかれば、さほど難しいことは無いよ。
まずは、決算書の基本的ない見方を解説しておこう。
基本的な決算書の読み方
これまでの解説で、決算書がどのようなものなのかが理解できたところで、実際にどのようにして作成するのかを学んでおく必要があります。その為にも、決算書の読み方をマスターしておかなければなりません。
決算書はjすでに述べた通り、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の財務三表で構成されています。
これらを追って、順に説明してみましょう。
財務三表
貸借対照表
貸借対照表は、バランスシートをとも呼ばれるもので、B/S(通称「ビーエス」)と略称することもあります。
この貸借対照表は、簡単に言えば企業がある一時点において、どれくらいの財産や権利を有しているのか、またはどれだけ債務を負っているかを表したものです。
例えば、運転資金や設備資金を得る為、銀行などの金融機関から、融資を行うことが多いと思います。
このような融資は、当然借入金となり、企業が負債を抱える事になります。つまり、事業において、会社がどのように資金調達を行い、さらにどのように資金を流用したのか、そして売り上げの発生状況など、財政状態を示したものが貸借対照表です。
資産と負債/資本をまとめて記載する為、バランスシートと呼ばれるのもその為です。貸借対照表は、プラスである資産の部と、マイナスである負債の部とを分けて記入します。
記入方法は、右側に会社の資金を工面した方法を書き、左側にその使い道を示す事により、最終的には左右の数値は同額になります。
資産には、大きく分けて流動資産/固定資産とあり、負債には月々の支払いのような流動負債と、借入金などの固定負債とがあります。
重要なのは、貸借対照表は現在の資産が、安定したものであるかを把握する為の書類という点です。簡単に言えば、総資産から負債を差し引けば、簡単に純資産を導き出すことができます。
資産よりも負債額が多ければ、経営難とみなされ、逆に純資産が多ければ、経営が順調に行っている根拠となるものです。
このように貸借対照表は、会社の財務状況を簡単に把握できるものである為、融資の際などに必ず銀行に提出する書類の一つとなっています。
バランスシートって、聞いたことがあるわ。
資産と負債が一目でわかるから、バランスシートって呼ばれているんだよ。次も重要な書類の一つ、損益計算書を見ておこう。
損益計算書
ひと目で見てお分かりのように、損益計算書は会社の損益を記した書類です。
もっと分かりやすく言えば、損益計算書は、事業における収益/費用/利益の3要素から成り立つ、決算書のひとつです。
英語では、Profit and Loss Statementと記され、P/L(通称「ピーエル」)といった記号で表記されます。
この損益計算書は、主に企業が一定期間内にどれだけの収益をあげているのか、そして事業経費としての費用をいくら使ったのかが分かります。
そしてさらに、その収益から費用を引いた分の、最終的な利益がいくらあるのかを表すのに役立つ書類です。損益計算書の科目としては、売上高/売上原価/販売管理費が挙げられます。
ここから、最終的な利益は当期純利益を導き出しますが、利益と呼ばれるものには以下のように5つのタイプが挙げられます。
売上総利益
事業で得られる利益の事で、売上高から原価や仕入費用を差し引く事で計算します。
営業利益
売上総利益から、広告宣伝費や一般管理費を差し引いたもので、一般管理費とは、会社を運営していく上で通常かかる経費の事で、給与や会社の家賃及び光熱費などが挙げられます。
経常利益
本業以外の収益と、それにかかった費用とを差し引いて、営業利益を足したものです。数式であらわすと、営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用 = 売上総利益となります。
税引前当期純利益
経常利益に、特別損益を足し引きした利益の事で、特別損益とは巨額の損益や突発的な損益などが含まれ、固定資産の売却や災害による損害などが含まれます。
当期純利益
1年間の企業収益のうち、諸経費あるいは税金を差し引いたものが、最終的な企業の利益となる当期純利益です。
ここで重要なのが、最終的に利益が出ているかいないかという点です。しかしながら、損益計算書上で、営業利益が赤字なのに、経常利益及び当期純利益が黒字のパターンは要注意です。
なぜなら、企業として本業の売り上げがないのにかかわらず、副収入など臨時的な収入でカバーしていることになるからです。
このような場合、経営の立て直しや修正できなければ、倒産といった危険性もあります。
確かに重要な書類なのね。
そうだね。出入金も含めて、利益が一目でわかるのが損益計算書の特徴さ。同じく、重要な書類の一つが、このキャッシュフロー計算書だよ。
キャッシュフロー計算書
CFと略称する事もあるキャッシュフロー計算書ですが、貸借対照表と同様に、経営面で必要となる重要書類の一つです。
なぜ重要なのかといえば、単に収入と支出がわかっても、それがいつどのように行われたのかが分からなければ、すぐに対応することができないからです。
では、キャッシュフロー計算書とはいったいどのようなものなのでしょう。
簡単に言えば、この書類はキャッシュフローつまり、一定期間内の会社のお金の流れが把握できる書付けの事です。
具体的に言えば、このキャッシュフロー計算書では、売掛金や買掛金での与信取引の状況が把握できます。
つまり、売掛金は売上になるものですが、支払いサイトによってはすぐに手元に現金が入ってきません。
また、仕入になっていても、現金が出ていかないという、入出金のずれが発生してしまうからです。
また、もう一つの問題点として、在庫の問題が生じてしまうことです。
例えば、10万円で材料を仕入れ、8万円分が売れたとします。この時、売値はいくらでもかまいませんが、結果2万円の在庫が残ることになります。
つまり、キャッシュフロー計算書を利用する事により、損益計算書からは資金流出額を正確に把握できませんが、手元の資金の流出金10万円を把握することができるのです。
また、このキャッシュフロー計算書では、営業活動/投資活動/財務活動の3つに、入出金を区分するという事を覚えておきましょう。
そして、営業キャッシュフローには、直接法と間接法といった2つの書式があります。注意しておきたいのは、およそ9割ほどの会社が間接法を採用しているという点です。
以上のように、損益計算書は、当期の純利益だけではなく、営業利益や経常利益を見ることにより、具体的に会社がいくら儲かっているのかを把握できる重要な書類ということです。
企業活動の流れは、大きく分けて資金調達 →投資活動 →営業活動によって行われています。したがって、これらを判断する為にも、これまでに説明した財務三表を見ることにより、より具体的に会社の経営状態を把握できることになります。
財務三表は、それぞれに独立した書類ですが、互いに関連性の強い重要書類であることがお分かりいただけるでしょう。
なるほど。同じように見えるけど、それぞれに目的が異なった書類なのね。
だからこそ、決算書のを中でも最重要書類が、これらの財務三表なんだ。次に、決算書の作成方法について、簡単に説明しておこう。
分かりやすい決算書の作成方法
会社経理では、日々の帳簿は欠かせないものですが、1年間の集大成となるのが、この決算書のおおもとと言えるものです。
この決算書の作成方法ですが、基本となるのは段階に分けて、手際よく作成していくということです。では具体的に、段階ごとの作成について、順を追って説明しておきましょう。
【前段階1】決算残高の確定
まず最初は、決算日現時点での各勘定科目の残高が、実際の残高と一致しているかの確認作業となります。
各科目ごとに、現金/預金/売掛金/買掛金/借入金など、勘定科目は原則的にすべて、実際の残高及び在高、そしてあるべき残高と合計残高試算表の科目残高を、各科目ごとに照合する作用となります。
【前段階2】税金関連の計算及び確認作業
確定申告の際に、必ず必要となってくる税金の計算ですが、順序としては消費税→法人税等の順番で計算していきます。
計算した消費税には、帳簿上と多少の差が生じますが、この差を修正し、最終的な消費税額を未払消費税額として、決算書に記載する事になります。
消費税は、売上に含まれている仮受消費税から、仕入や経費などで支払った消費税を差し引くことにより計算します。
次に、法人税等とは、法人税/法人住民税/法人事業税を指すもので、特に専門的な知識が必要となります。
したがって、ほとんどの場合、これらの税金の計算と申告書類の作成は、会社の契約する税理士などの専門家に依頼するケースがほとんどです。
【最終段階】決算書の作成
いよいよ決算書の作成となりますが、確定した残高を確認し、貸借対照表/キャッシュフロー計算書/損益計算書などを作成していきます。
これらの財務三表以外の財務諸表としては、1年間を通した純資産の変動を示す資料として、株主資本等変動計算書があります。
ほかにも、株主向けに報告する為の資料として、会社の事業方針や具体的な内容を記した事業報告書が挙げられます。
また、必ずしも絶対に必要というわけではありませんが、それぞれの計算書の見方や注意事項について記した資料として、個別注記表/附属明細書などがあります。
決算書は、すべて自分で作成する事も可能ですが、小規模の会社では税理士などに、決算書の作成を依頼するケースが多いようです。
いきなり決算書の作成、というわけにはいかない訳ね。
日々の積み重ねの、集大成と言えるものだからね。つね日ごろから、きちんとした経理を心がけておく必要があるね。
だから、経理の人って厳しいのね。
ハハハ、決算書は、融資はもちろん、納税する時、事業報告など、様々な場面で必要になるからね。
だから、成績表なのね。
勉強になります。有り難うございました ! 先輩。
まとめ
このように、決算書はすべての会社に必要不可欠なもので、1年を締めくくるデータとしてだけではなく、先を見据えた事業展開にも必要となってきます。
決算書の読み方を知っていれば、より細やかな社内の状況把握も可能となり、対処法や対応力にも磨きをかけることができます。
どうしても、コストをかけたくないといった方は、サイトなどで無料提供されている、フリーのシェアウェアソフトを活用するのも一つの手です。
以上、決算書の役割と正しい作成方法を100%理解する…でした。
\ メリット盛り沢山 /