この記事でわかるポイント
- 意外にも古かったファクタリングの歴史
- ファクタリングを利用するうえでのデメリットとメリット
- ファクタリングは利用するタイミングが重要
ファクタリングの事は、だいぶ理解できてきたようだね。
先輩のおかげですよ。近ごろは、小さな会社を経営している叔父にも、説明できるようになりました。短期間で資金調達できるファクタリングって、ほかの資金調達方法よりもかなり優れていますね。
確かに借入金とはならないファクタリングは、手軽に資金調達できるという意味では、他と比べて優位性が高いよね。
でも、デメリットとかリスクも当然あるんでしょう?
確かにあるね。手数料の問題とか直接的なものは比較的わかりやすいんだけど、後天的なリスクも考えておかなければならないんだ。
今日はそんな話しをしてみよう。
よろしくお願いします、先輩!
ファクタリングの誕生はイギリスですが、実際に広く利用されたのはアメリカで、これ以降世界中で認知される事となりました。
実は日本でも、すでにバブル期の頃にも存在していましたが、法律上の弱点や手形中心の社会ということもあって、しばらくは沈静した状態が続いていたのです。
ファクタリングがにわかに脚光を浴びた背景には、黒字倒産の増加が増えてきたということがその理由の一つとして挙げられます。
売掛債権を利用するファクタリングは、利便性の高い資金入手方法として注目を集めていますが、果たして良いことばかりなのでしょうか。
【参考記事】2020年最新版 ! 上手にファクタリングを活用する「上級者テクニック」について
確か、日本ではファクタリングを国が後押ししているのよね。
そうだね、大企業はともかく、中小企業はちょっとしたことで資金難に陥りやすいから、少しでも利便性の高い資金調達方法が必要なんだよ。
それでファクタリングを少しでも、利用しやすくする為に民法改正が行われるんだよね。
そういうこと。まずは、分かりやすく整理するためにも、ファクタリングの歴史からおさらいしていこう。
目次
ファクタリングの歴史
ファクタリングの存在は、現在のように当たり前となっている貨幣ができる以前から、行われていたと聞けば、誰しも驚かれるのではないでしょうか。その起源は、メソポタミア文明にまで遡るといいますからまさに驚きです。
当時の取引は、まだ物々交換などが主流の時代で、主な取引には穀物や銀などが、通貨としての役割を果たしていました。実際問題として、隣の村どうしの商いならまだしも、領主や諸侯などの取引においては、大量の物資を現物交換するのは現実的ではありません。
なぜなら、取引に利用する穀物や銀などを、取引ごとに毎時集める為には、かなりの労力も必要となるからです。そこで、利便性の良い取引方法として、賃借契約が行われるようになってきました。これは、現代に残されているハムラビ法典にも記載されていることで、穀物や銀に対してそれぞれ利息率を定めたものです。また、これらの違反行為に対しても、罰則が設けられています。
その後、銀行といった形態が登場すると、様々な金融取引が行われるようになり、資金の貸し付けや不動産の買い取りを始め、小切手や為替手形などを含めた、幅広いベンチャー投資が行われるようになりました。
次は、ファクタリングの手法について、簡単におさらいしておこうね。
ファクタリングのタイプについてのおさらい
ファクタリングには、大きく分けて2社間ファクタリングと、3社間ファクタリングというものが存在します。これは契約の違いによるもので、2社間は利用者の会社とファクタリング会社、そして3社間ファクタリングは、2社間に売掛先の企業加えた3者間で契約を行うものです。
2社間ファクタリングの流れ
3社間ファクタリングの流れ
名称の違いにより、様々なファクタリングが存在していますが、医療関連のメディカルファクタリングは、3社間ファクタリングと同様の構図で行われています。いずれにせよ、ファクタリングは、2社間あるいは3社間で契約が行われ、売掛金を債権とした売却が行われるのはどれも同じです。
経済産業庁も推奨するファクタリングですが、いまだマイナスイメージがつきまとっているのも、ファクタリングを利用する多くの会社が、資金難によるサービスを利用しているからこそほかなりません。2社間ファクタリングは、売掛先企業に債権の売却を知らせる必要がありませんので、秘密裏に契約を行うことができます。
ただし、債権譲渡の時に気をつけて欲しいのが、契約が完了した後でもそのままにしておくと、債権を譲渡したことが、銀行や売掛先に知られてしまう可能性があるからです。その為、契約が完了したら、すぐに抹消手続きをとることをお勧めします。
2社間ファクタリングだったら、取引き先の会社に知られる事はないのね。
基本的には、外部に知られる事はないね。
でも法的にもまっとうなファクタリングなのに、どうして取引き先の会社に知られたくないのかしら。
いろいろな要因があるけど、資金難であることを知られたくないということだよね。つまり、相手先企業から見て経営が苦しいことを知られてしまえば、最悪の場合契約を打ち切られてしまう可能性もあるからなんだよ。
なるほどね・・・
会社が黒字なのに、倒産するってことあるの?
一般の人には理解しにくいだろうけど、例えば働いていて、給料が支払わずれずにいたらどうする ?
えっ ! そんなの困るに決ってるじゃない。お洋服のローンも残ってるし、第一買い物も光熱費の支払いもできないわ。
企業はそんな状況に陥った場合、倒産してしまう可能性が高いということなんだよ。
つまり、売掛金の回収ができないってことね。
そういうこと。次の項で、もう少し説明しておくね。
黒字なのに経営が苦しくなる
冒頭で、黒字倒産が増えているとお伝えしましたが、黒字倒産とは帳簿上は黒字になっているのにもかかわらず現金が手元にない為に支払いができず倒産に陥ってしまうということです。
俗に言われる「勘定合って銭足らず」という状況です。
ニュースでは、黒字倒産の事をほとんど伝えませんので、一般の方はそれほど気には止めていないかもしれません。
実は、2016年度での国内倒産の半数は黒字倒産とされています。つまり、赤字倒産と同じ比率で、黒字倒産が起こっているということになります。
国内でM&Aが増えてきているのもこの黒字倒産を回避する一つの手法で、資金繰りの悪化によってM&Aを行わざるをえないといった企業も年々増えています。
資金繰りの悪化は、いわば病のようなもので、一刻も早く病状を直さなければ、更なる重症に陥ってしまいます。そこで、注目されているのが、ファクタリングの存在というわけです。病気には、必ずと言っていいほど、その原因が存在します。
先輩 ! M&Aってなんですか ?
分かりやすく言うと、企業間の合併や企業の買収が、M&A(Mergers and Acquisitions)ということになるね。
そう簡単に、会社の合併とか買収ができるものなの ?
簡単じゃないけど、双方の思惑が合意すれば可能だよ。
なるほど。
ただし、敵対的M&Aもあるから、すべてのM&Aが論理的な合意で行われるわけではないよ。少し脱線しそうだから、話しを元に戻すと、黒字倒産は資金悪化が原因で起こることが多いんだ。
資金繰り悪化の原因となるものは、主に以下のような理由です。
資金繰り悪化の主な原因
- 銀行などの金融機関から融資を断られてしまい資金調達ができない。
- 取引き先の売掛金の支払いサイトが長く、下請けや従業員に支払いができない。
- 突然の取引先の倒産。
そのような状況でファクタリングは短期間で現金を入手する「薬」となり得る手法です。
なるほど、お金がないと困るのは、私だけじゃないのね。
ハハハ、会社の経営が不安定な場合、資金を注入することによって正常化が図れるんだよ。
そこで、ファクタリングの出番なのね。
ファクタリングは、短期間の資金調達方法として、かなり優れているからね。風邪をひいても初期症状だったら早めに薬を飲んでみれば治るからね。
うまいことを言うわね。つまり、ファクタリングは薬って事だね。
じゃ、その効果を簡単に解説してみるよ。
ファクタリングの「薬」効果とは
まず、ファクタリングは借入金とはなりません。一般的な銀行融資や、ビジネスローンなどは借入金にあたるもので、会社にとっては負債となるものです。
借金が増えてくれば、当然の如く利子の支払いが増えてきますので、中長期的に考えてみても会社の資金繰りを悪化させる原因ともなるものです。
売掛金は、会社の資産にあたるものですので、借入とはならないわけです。また、ファクタリングを利用する効果には、取引が信用情報に記載されることがないということです。
2社間ファクタリングにおいては、売掛先の企業にも知られる事なく、売掛債権の売却が可能ですので、信用問題を気にする必要がないのです。
また、ファクタリングを利用する際にも、融資などと同様の審査があります。しかし、一般的な民間のファクタリングは、審査はさほど厳しくなく、普通融資などで断られてしまう赤字決算や税金の滞納、ブラックなどであっても、ファクタリングを利用することが可能です。
もちろん、連帯保証人や担保も必要としませんので、必要な書類さえそろえてしまえばいつでもサービスの利用ができ、状況によっては即日での債権売却が可能となります。また、リコースの契約で行われますので、売掛先が倒産したとしても、リスクを負う必要は全くないのです。
こうしてみると、かなり有効なお薬となるのね。
確かにね。でも、ファクタリングはすべての面で万能ではないんだよ。
じわりと回り出すファクタリングの「毒」
にわかに、脚光を浴びてきたファクタリングですが、この背景には中小企業が資金作りに苦慮しているというのがその理由に挙げられます。
経営上では黒字にかかわらず、資金不足の悪化が原因により、倒産してしまうといった企業も少なくなく、融資を行うにも銀行融資では審査が厳しすぎるといった現状がありました。
銀行も銀行でバブル期の反省から審査をかなり厳しくし襟元を正しているのですから、文句のつけようがないわけです。そこで、ファクタリングが注目されたわけですが、ファクタリングを有用に利用していく為には、法律の整備が必要でした。
その為、2017年に民法の改正が行われ、2020年4月の施行が行われたわけです。これにより、売掛債権に対して柔軟な対応ができ、さらにファクタリングが広まっていくことが予想されています。経済産業省も推奨するファクタリングですが、決して良いことだけではないことを覚えておく必要があります。
なぜなら、ファクタリングは、あくまでも売掛金の前倒しであり、手数料や掛け目といった問題があるからです。
つまり、売掛金の支払いサイトまで待てば、100%売掛金の入手が可能なのに対して、手数料や掛け目によって目減りしていく為、利用すればするほど経営状態の悪化につながるからです。
ファクタリングは毒って、どうしても納得できないわ !
それじゃあ、もっと分かりやすく説明しよう。例えば、2社間ファクタリングだと、手数料の相場が10%から30%の間だけど、売り上げの純利益が30%だったら、利益が全くなくなることになるよね。
ま、そうだけど。
ということは、原材料費のみの回収で、企業の光熱費や人件費などは支払えなくなるんだ。
あっ!
だからこそ、ファクタリングを利用する際には、有効な活用術が必要になってくるんだよ。
うまくファクタリングと付き合っていくには
ファクタリングの、デメリットはほかにもあります。例えば、売掛先に知られたくない場合、2社間ファクタリングを利用しますが、売掛先が個人事業主だった場合、債権譲渡登記が行えない為、3社間ファクタリングしかできません。
3社間ファクタリングは、売掛先を加えた契約となる為、内緒でファクタリングを行うということができないのです。
注意点としては、2社間ファクタリングでも、債権譲渡登記を必要としないファクタリング会社も存在しています。その為、債権譲渡登記が気になる方であれば、しっかりと確認を取っておきましょう。
ファクタリングとうまく付き合っていく為には、ファクタリングの性質をよく見極めて利用していくことです。資金がショートしてしまい、取引き先の入金あるいは、銀行への返済が間に合わなければ、信用問題にまで発展してしまいます。
一度失ってしまった信用は、先々の融資にも響き、一度失ってしまった信頼は取り戻すのが非常に難しいとされています。また、資金繰りを改善する事により、キャッシュフローの安定につながりますので、短期でのファクタリングの運用は適切な判断とも言えます。
3社間ファクタリングって、手数料が安くてかなり有効な方法と思ってたけど。
根底にあるのは、ファクタリングに関する認知度がまだまだって事だね。
そうね。取引き先の会社の理解が、得られるかどうかにかかってくるのよね。
そういうことになるね。だからこそ、ファクタリング会社選びも大切になってくるんだ。
自分の会社にぴったりのファクタリング会社選び
ファクタリングを利用するにあたり、最も大切なことは、自社に合わせたファクタリング会社選びを行うことです。注意しておきたいのは、ファクタリングを利用する方のほとんどが、急いで資金を調達したいと考えているところです。急いては事を仕損じるといいますが、ファクタリングの利用に際しては、まさにこうした言葉がぴったりと当てはまります。
つまり、あまりにも資金作りだけに捉われてしまっては、足元をすくわれてしまいかねないということです。現在のところ、ファクタリングは、かなり利便性の高い資金作りの方法ですが、ファクタリングそのものを規制する法律などが存在していきません。
つまり、少なからず悪質なファクタリング会社の存在も考慮して、ファクタリング利用に臨まなければならないということです。自分の会社にぴったりのファクタリング会社選びとは、どの観点を重きに置き、業者を選んでいくかという点に尽きます。支払いの期日が迫っており、少しでも早く現金化を考えるのであれば、スピード感に特化したファクタリング会社を選ぶ。
手数料や買い取り額を優先するのであれば、査定にある程度の日数がかかっても、大手のファクタリング会社を選ぶことをお勧めします。多くの利用者の中には、手数料の安さから、3社間ファクタリングに魅力を感じる方も少なくありません。しかし、相手先に知られてしまうというリスクがあることを、心しておかなければなりません。
会社にとって、大事な売り上げだからこそ、優良なファクタリング会社を選んでいかなきゃね。
そうなんだけど、一番大切なのは、自分の会社に有利な条件で、契約できるファクタリング会社を見つけるって云う事だね。
でも、これから先は、これまでよりも、さらにファクタリングの認知度は高まると思うよ。
民法の改正ね !
期待されているファクタリングの可能性
ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、2020年度4月には民法の大改正による施行が行われました。
【参考記事】【2020年最新版】民法改正後のファクタリングはどう変わる ?
細かな変更点や改正点は、あえて控えておきますが、この中で注目したい改正点に再建法の改正が挙げられます。これまで、かなり自由度の高い資金調達方法として、ファクタリングが紹介されていましたが、決してそうではありませんでした。
第一の課題として、譲渡禁止特約の問題が、ファクタリングを難しいものとしていました。今回の改正により、より柔軟な債権の売却が可能となり、更なるファクタリングの可能性が注視されています。
最近では、これまで発生した債権でのみ、ファクタリングが可能としていましたが、将来債権も買い取可能となることも予測されています。将来債権とは、将来も同様の取引が行われるであろう、売掛金に対しての予想債権とも呼べるものです。
将来債権が可能となれば、これまでよりもより一層、高額売掛債権の売却が可能となるはずです。ファクタリングの強みは、借入金とはならず、信用機関にも記録が残らないことで、かなり大きなメリットとなることは間違いありません。
法改正のポイントは、譲渡禁止特約の自由化と将来債権の自由化に注目だね。
確か、手形なんかは、譲渡禁止特約があるわよね。
ここでは割愛するけど、ファクタリングでは、一応制約はあるけど、かなり自由な取引きになることは間違いないね。
将来債権って、なんで注目されるの ?
これまでのファクタリングの基本は、売掛金が発生してない状況では、サービスの利用が可能だったんだよ。
いまいち分かりづらいんだけど・・・
簡単に言うと、売掛先会社との間で、何年も取引きが行われている状況なら、これからも売掛金が発生する事が見込めるよね。
つまり、取引きがこれからも予想できるのが条件なのね。
そうさ、将来債権のメリットは、これまで以上に額面の大きなファクタリング取引きができるって言うことなんだよ。
ただ、これまでの話しで述べた通り、ファクタリングは毒にも薬にもなり得るから、状況に応じて適切に利用していくことが大切だね。
まとめ
ファクタリングは、資金繰りにおいて短期間での資金入手が可能なことから、中小企業の間でにわかに注目を集めています。
2020年度の民法の大改正により、更なるファクタリングの利便性が期待できますが、ファクタリングの性質をよく考えておかなければ、かえって経営の悪化を招く原因ともなります。まずは、冷静になってファクタリングのメリットと同様に、デメリットのことをよく踏まえて、賢く利用していくことをお勧めします。
以上、【危険】ファクタリングは「毒」にも「薬」にもなる…でした。
\ メリット盛り沢山 /