この記事でわかるポイント
- 融資と出資の違い
- それぞれのメリットとデメリット
- 資金調達のしやすい方法
念願がかない、ようやく会社を設立したとしても、更なる事業の展開や事業の拡充を図るためには、更なる事業資金が必要になることも多いもの。
とはいえ、たびたび銀行に頭を下げるのもプライドが許さないといった若い経営者もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、何も資金調達は、融資ばかりがその手段ではないのです。
資金調達の方法は、たくさんあるとは言うけれど、そんなに必要なのかしら。
手札はたくさんあった方がいいね。
そういうものなのね。
僕たちが普段利用するローンやキャッシングもそうだけど、それぞれに利便性が違うからだよ。
なるほどね。
今回は、同じ資金調達方法として、出資による資金調達と融資の方法を比較してみたいと思う。
出資といえば、会社に資金を援助してもらう方法のことね。
そうだね。まずは、おさらいとして銀行融資の基本的なスタイルを解説しておくよ。
よろしくお願いします ! 先輩。
目次
銀行融資の基本的スタイル
まず銀行の融資は、ほかの金融機関の融資やローンと比較して、金利がかなり安いという特徴を持っています。
銀行融資の金利は、商品によっても異なりますが、利率が2.125%からといった商品も多く、ノンバンクが5%から18%ということをかんがみても、かなり金利が低いということがお分かりいただけるかと思います。
銀行融資の代表的な種類は、以下の通りになります。
証書貸付
いわゆる、借用証書を提出する融資の事で、金銭消費賃借契約書を取り交わすことになります。借入期間は、運転資金で最長7年、設備資金として借りる場合は最長15年が平均的な設定です。
返済方法は元金均等返済が一般的で、利息は残りの元金の金額で計算され、毎月元金の返済と一緒に支払う事になります。
当座貸越
当座貸越には、一般当座貸越と専用当座貸越の2種類があり、事前に取り決めた金額を上限とした融資の一種です。
利用者が、好きな時に自由にお金の借入や返済ができる為、いちいち手続きを必要としません。
一般当座貸越は、当座預金残高を超える額を引き出そうとした場合、不足分が自動的に貸し越しになる借入方法となります。
そして、専用当座貸越の場合は、普通預金や当座預金とは異なり、専用口座から必要な金額を引き出す借り入れ方式です。
あらかじめ、担保を提示しておき、担保の評価額に応じて上限額を設定し、借り入れを行うことが多い方法です。
手形貸付
いわゆる手形担保融資と呼ばれるもので、約束手形を振り出すことにより、これを担保に融資を受けます。
手形担保融資は、利息は基本的に一括先払いで、返済は期日一括返済が基本となりますが、利息の分割や期日前の一括返済なども可能です。
手形割引
銀行や専門の金融機関で、手形の期日が来る前に、現金化する方法で手形を譲渡し、期日までの利息や手数料などを差し引いた金額が、支払われることになります。
利便性が良く、資金がショートした際によく用いられる方法ですが、手形が万が一不渡りになった場合、手形割引の依頼者は、金融機関に対して全額を補てんする義務が生じます。
売掛債権担保融資
売掛債権を担保にし、融資を行う手段ですが、後日売掛金が入金された際に、返却するといったシステムです。
債権の譲渡登記など、ファクタリングによく似ていますが、こちらはあくまでも借り入れという形で行われます。
【参考記事】ファクタリングとは?【コレを読めば100%理解できる!】(保存版)
不動産担保融資
土地や家屋を含む、不動産を担保として融資を行うもので、無担保融資に比べるとさらに高額の借り入れが可能です。
銀行も、不動産という担保がある為リスクが少なく、低金利で長期の融資を可能としています。ただし、調査や審査に時間がかかることから、短期の融資にはあまり向いていません。
信用保証協会付き融資
銀行の融資で代表的な借入方法で、公的機関である信用保証協会の保証をつけて、融資を申し込む保証協会付き融資です。
【参考記事】信用保証協会での融資制度を徹底解説 !【初めて利用する方必見】
なぜ、信用保証を協会の保証が必要かというと、中小企業や小規模事業者などは、一般的にみて金融機関から信用度が低いとみなされ、借り入れが行いにくいからです。
その為、信用保証協会が債務保証をすることで、そうした中小企業や小規模事業者に対して、融資を可能としました。
ただし、信用保証協会に対して、一定額の保証料を支払う必要があります。
プロパー融資
信用保証協会付き融資と、真逆にあるのがこのプロパー融資という借り入れ方法です。
メリットとしては、信用保証協会に対して保証料を支払う必要がなく、融資を受けられること。
支店長決裁のプロパー融資であれば、短期での融資が受けられること。
会社の規模が大きくなると、比較的高額融資を受けられるという点が挙げられます。
ただし、企業と銀行間の信用が重視される為、審査が非常に厳しいといったデメリットがあります。
また、銀行側から、会社経営に対して、厳しい注文が付けられることも多く、自由に事業を展開することが難しくなる場合もあります。
最近では、企業間で融資の見直しを行う際に、ほかの銀行に乗り換えるといった選択肢が考えられます。
ほかの銀行に借り換えを行う際、基本的には信用保証協会からの保証を受けることはできません。
したがって、ほかの銀行に乗り換え時には、プロパー融資が必然となります。プロパー融資は、前述の通り、審査が厳しいといった難点があります。
しかし、ほかの銀行の乗り換え持や、価値のある不動産が担保として提示できる、または支店長決裁枠を利用することで、スムーズな融資が可能になることを覚えておきましょう。
銀行融資で一般的な融資といえば、プロパー融資と信用保証付きの融資だね。
信用保証が付いているか、いないかの違いよね。
厳密に言えば、プロパー融資の場合、会社の信用を重視するから、外部からの信用を必要としないんだ。
それから、手形割引って融資になるの ?
融資ではないけれど、銀行融資のサービスを説明するうえで、知っておいて欲しいサービスの一つだからね。
次に、出資による資金調達の方法を説明しておくよ。
出資を利用した資金調達の方法
一般的な出資といえば、投資家などが株式と引き換えに、特定の企業に資金を提供することが良く知られています。
いわゆる出資も「将来のリターンを見越して資金を投じる」という形では投資の一種といえます。
ただし、出資といっても、株式の売買による方法だけではありません。
出資の種類には、株式の売買のような金銭出資と、金銭以外の財産の出資として財産出資あるいは現物出資があります。
また、支援により、助力を行うといった形の労務出資や、信用出資といったものもあります。
ここでは、一般的に行われている、財産出資に関してのご説明を行います。
まず、株式公開(所謂「上場」)による資金調達ですが、第3者割当増資による新株発行を視野に入れることができます。
また、単純な投資による出資元としては、以下のようなところを挙げることができます。
主な出資元
- ベンチャーキャピタル
- エンジェル投資(個人投資家)
- 中小企業ファンド
- クラウドファンディング
投資を目的としていますので、企業に対してさらなる事業の成長が見込まれるのであれば、出資先は選び放題ということも考えられます。
特に最近では、クラウドファンディングが熱い注目を集めています。
クラウドファンディングは、ネット上のサーバーを通じて、不特定多数の希望者から出資を募るもので、小口から大口の出資を可能としています。
【参考記事】2020年度最新版 ! 個人事業主におススメのクラウドファクタリング
もちろん、出資者は、投資としてのリターンを求めていますので、何らかの見返りが必要です。
ただし、クラウドファンディングの場合、現金だけというわけではなく、あらかじめリターンを提示しておくことが可能です。
リターンの一例
- 新しく開発された商品
- 商品を格安で購入できる権利
- 特定の商品の送付
- 商品券や一部の権利
ほかにも、出資による資金調達方法として、従業員持ち株会といったものもあります。
これは、休養などの天引きにより、毎月一定額の購入資金で、会社の持ち株を購入する制度です。
銀行預金よりも利回りが高く、融資に対する利息よりも低く抑えられる為、会社のメリットはかなりあると言えるでしょう。
ただし、リターンがなければ、社員たちに不満が生じてしまいかねません。
このように、会社の外部から出資を受けることにより、安定した資金調達が可能となるわけです。
なるほど、出資も投資の一つなのね。
出資も投資も同じものなのさ。
ということは、会社の成長の見込みを判断して、出資を行うという事よね。
そうなるね。例えば、モノづくりにおいて、世界的にも有名な町工場だけど、ベンチャー企業として出資してもらう会社も多いんだ。
なるほど。詳細な技術が売りということね。
何の変哲もない一般企業よりも、卓越した技術をもつ町工場の方が、投資家にとっても大きな魅力を感じるんだよ。
ふむふむ、となると出資してもらうのにも、会社にどんなメリットがあるのかを理解してもらう必要があるわね。
それも踏まえて、融資と出資によるメリットとデメリットをまとめてみよう。
【融資と出資】各々のメリットとデメリット
銀行融資は、デットファイナンスと呼ばれる資金調達方法で、出資による資金調達は会社の資産を活用する方法として、エクイティファイナンスと呼ばれます。
両社の資金調達方法は、根本的に手法が異なりますので、単に比較することはできませんが、一定の項目を注視することにより、どちらが有利であるのかを確認することは可能です。
そこで、融資と出資によるメリットとデメリットを、特定の項目別に確認してみましょう。
【資金調達のしやすさ】
銀行融資は審査が通りにくく、融資が受けにくいとされていますが、中小企業や小規模事業者でも、信用保証協会などを活用すれば、融資は行いやすいといえます。
一方で、出資の場合、中小企業は株式など一般的ではなく、出資者はすぐに見つからないことから、資金調達はやりにくいといえます。
【経営権への影響】
返済が厳しい状況に追い込まれた場合、銀行からの出向や経営に直接口を出されるといったケースがあります。
裏を返せば、返済さえ滞りなく行っていれば、経験に影響を与える事はありません。一方で、出資の場合出資額に応じた、出資比率が大きく影響を及ぼします。
例えば、株式であれば50%以上を保有する事ができれば、その出資者に経営権が移ることを意味しています。このように、出資や融資に関しては、ケースによって経営権や大きく影響を与えることになります。
【返済義務の有無】
銀行融資は、借入金として資金調達を行えますので、当然銀行への返済義務が生じます。また、金利に応じた、利息の支払いが必要となります。
出資の場合は、返済義務は一切ありませんが、配当を行うなど出資者に対して、一定のリターンが必要になります。
出資による資金調達は、返済の義務がありませんので、返済による圧迫がなく、資金繰りが安定するという大きなメリットがあります。
このように、銀行融資と出資による資金調達は、それぞれにメリットとデメリットがあります。
選択肢としては、企業にとって実績を持っているなら融資、将来的に明るいのであれば出資といった見方ができます。
また、代表者の信用状況により、融資や出資を判断することも必要です。
して、融資は経営者が、会社の連帯保証人になる点と、出資ではそうした連帯保証人が不要である事も、資金調達に際して判断材料の一つにしたいものです。
根本的に、融資と出資は全く異なる資金調達方法だから、簡単に比較は出来ないんだけどね。
両者に共通する比較対象が、この3つということなのね。
どちらも、メリットとデメリットがあるから、経営者の考え方一つというところがあるんだ。
でも、返済義務は無いのなら、出資を利用する方が有利な感じがするけど。
じゃ、実際に融資と出資を比べてみて、どちらが有利なのかを検証してみようか。
融資と出資による資金調達はどっちが有利 ?
これまで、銀行融資と出資による資金調達を見てきましたが、双方ともに一長一短があり、どちらが良いのか一方的に決める事はできません。
ただ、会社が返済不能に陥ってしまった場合、連帯保証人である代表者が、その返済を肩代わりしなければなりません。
出資の場合は、連帯保証人そのものを必要としませんので、万が一会社が倒産してしまったとしても、出資者に対して返済義務が生じる事はありません。
このことから見れば、会社が万が一返済不能に陥ったとしても、出資の方はかなりリスクが少ない手段と考えられます。
企業としても、リスクを気にせず、事業に打ち込むことができる為、思い切った事業展開を行うことができます。
ただし、出資にによる資金調達も、ケースによる例外というものがあります。
それは、出資額で株式を買い戻すなど、一定の条件をつけて出資する可能性があるということです。
出資に際して、連帯保証人は無いものの、万が一倒産してしまった場合、出資額の返済義務が生じてしまうことと、同様の義務が生じてしまうわけです。
結局のところ、銀行融資にするか、出資を募るかといった選択肢は、会社の状況に応じて選択する必要があるということです。
前述のように、出資率が高くなれば、どうしても経営に口が挟まれ、自由な事業展開が行えないという事も少なくありません。
特に、株式の比率は50%を超えてしまうと経営権を取られてしまいます。
最悪、M&Aと同様に、会社を売却されてしまうという危機もあり、手放しで出資に賛成するのは危険といえます。
また、株式の場合、経営に口を出されたくないからと言って、株式を買い戻するとは限りません。
なぜなら、必ずしも出資者が売却してくれるとは限らず、逆に足元を見られ、高い株価でしか売却しないということも十分考えられます。
出資の場合は、基本的には資金の返却義務はありませんが、逆に言えば出資者に返金したいと思っても、出来ないということになります。
ただし、決してこのように、悪いことばかりではありません。
出資者によっては、経営に対して的確なアドバイスをくれたり、事業を大きくしたいが為、協力的な場合も少なくないからです。
こうして整理してみると、どちらも一長一短があるのね。
どちらにせよ、融資してもらう、出資してもらうということになるから、第3者頼みという部分は否めないね。
でも、会社の信用力が強かったり、技術力に優れていたりすれば、逆に売り手市場なのじゃない ?
会社経営に自信があれば、そうした考え方もできるね。いずれにせよ、経営者が最終的に判断しなければならないね。
まとめ
資金調達の方法で、意外と見落としがちなのが、出資による資金調達の方法でしょう。
投資と出資は対のもので、どれだけ会社に魅力があるかで、その価値は変わってくることから、小規模の事業者でも大きな資金調達が可能なケースもあります。
資金調達を考えた場合、それぞれのリスクを踏まえて、選択肢を絞っていくのがベストです。
以上、「融資」と「出資」どちらが良いの?違いとメリットとデメリット…でした。
\ メリット盛り沢山 /