この記事でわかるポイント
- 経済危機の時こそ利用したい制度である
- 危機回避の為の共済制度を利用したい中小企業経営者は必見
- 掛け金の自由度が高いから負担軽減に役立つ
以前であれば、就職するなら大企業とばかり、就活にいそしむ学生がほとんどでしたが、最近の事情は多少変わりつつあるようです。
以前、大企業信仰は現在のようですが、実は国内の大企業の割合は企業全体の約3%にしか過ぎず、ほとんどが中小企業以下の企業割合で占められています。
つまり、日本の経済は、この中小企業によって大きく支えられていることになります。
確かに、以前に比べて、どうしても大企業に就職しなくては、という話もあまり聞かなくなったわ。
大企業は、世間体も良いし、ステータスも高いのだけど、離職率も15%前後なんだよ。
せっかく大企業に受かったのに、やめちゃうなんてなんだかもったいないわね。
だから、ステータスのある大企業よりも、自分の力を引き出せる中小企業の方が人気があったりするんだ。
でも、規模が小さいから、経営が大変なのじゃない ?
確かに、資本力の低い中小企業は、大企業に比べると、経営者の手腕が問われるのは間違いない事だね。
今回は、そうしたことを踏まえて、中小企業が利用しやすい共済制度のことを解説してみようと思う。
共済制度 ? 助け合いの積立みたいなものかしら。
そうした意味合いが強いものだね。まずは、中小企業とはどのような会社を指すのかを説明しておこう。
よろしくお願いします ! 先輩。
目次
大企業と中小企業の概念とは
学生たちが就職を希望する際、ほとんどの学生たちが第一志望に、大企業を選ぶことがほとんどです。
しかし、大企業は難関とされるだけあって、内定をもらうだけでも無理ゲーと言われています。
それもこれも、大企業そのものの実数が少ない為、かなり狭き門になっていることは、だれしも理解していることでしょう。
現在、日本の企業数は、法人を含め約413万社ほどあるとされていますが、その中で大企業とされているものは1万2千社ほどですので、絶対数が少ないことは、それだけ就職が厳しいことを意味しています。
では、大企業とは、いったいどのような会社を指しているのでしょう。
実は、大企業の概念自体は存在していないものであると聞けば、皆さん驚かれるのではないでしょうか。
しかしながら、逆に中小企業や小規模企業の概念は存在しています。
中小企業庁の公式HPでは、中小企業とは、中小企業基本法第2条第1項の規定に基づく定めがあり、小規模企業も同条第5項の規定に基づく定めが定義づけられています。
これによると、気になる中小企業基本法の定義は以下の通りです。
中小企業者の定義
製造業その他
資本金及び出資額が3億円以下の会社及び、従業員数が300人以下の会社及び個人事業主。
卸売業
資本金及び出資額が1億円以下の会社及び、従業員数が100人以下の会社及び個人事業主。
小売業
資本金及び出資額が5千万円以下の会社及び、従業員数が50人以下の会社及び個人事業主。
サービス業
資本金及び出資額が5千万円以下の会社及び、従業員数が100人以下の会社及び個人事業主。
ただし、中小企業の概念は、あくまでも原則的なものであり、法律や制度によって解釈が異なる場合もあるようです。
例えば、大企業を傘下の一部子会社のように、大企業と密な関係にある企業などは、中小企業を対象とする助成金及び補助金制度から外れる場合もあるということです。
ちなみに、小規模企業の概念は以下の通りです。
小規模企業者の定義
製造業その他
従業員20人以下であること。
卸売業/小売業/サービス業
従業員数5人以下であること。
このように、中小企業や小規模企業の概念は、中小企業基本法によって定められていますが、大企業の概念ははっきりしたものはありません。
小規模企業は、約360万社とされていますので、中小企業の実数としては約50万社程度と推測されます。
中小企業としての、規定があったのはうなずけるんだけど、大企業の規定がなかったのは意外ね。
そうかも知れないね。ただ、全体的にみれば、大企業なんかほんのわずかだから、社会的には祖語は生じていないね。
という事は、日本の経済で重要なのは、こうした中小企業なのね。
そうなんだ。しかし、経営の実情としては、毎年多くの破たんした会社がいるのも事実だよ。
年間8,000社以上の企業が倒産する現状
昨今の日本企業の倒産の件数は、2005年から2014年にかけては年間10,000社以上、2015年以降は毎年8,000社以上といった倒産件数で推移しています。
リーマンショック当時と比べてみると、2008年の倒産件数は1万5,646件と当時の半数程度に落ち着いています。
現状でのコロナ倒産も含めて、2020年に予想される倒産件数は、これまでに最高数の倒産も考えられます。
2020年3月時点では、7カ月連続の増加で推移しており、コロナウイルス関連の倒産数は12件発生しています。
また、2020年4月24日時点での、コロナウイルス関連倒産の数は、全国で93件と大きく膨れ上がっています。
この状況は、政府の緊急事態宣言延長によって、さらに加速するものと予想されています。
年間の倒産件数って、かなりの数なのね。
もちろん、大多数は小規模な事業者が多いね。
そこで、どんな原因によって、倒産してしまったのかを項目別に分けて検証してみよう。
現在のコロナウイルス関連倒産は、特別だとしても、なぜこのように毎年数多くの倒産が起きているのでしょう。そこで、倒産の直接の原因となる大きな要因を、上位個別に見ていきましょう。
倒産の直接要因
- 【1位】販売不振によるもの
- 【2位】既往 (きおう) のしわ寄せによるもの(※以下で説明)
- 【3位】連鎖倒産によるもの
- 【4位】過小資本によるもの
- 【5位】放漫経営によるもの
件数こそ少ないものの、ほかにも以下のような倒産理由があります。
- 信用性の低下によるもの
- 過大な設備投資によるもの
- 売掛金回収難によるもの
- 在庫状況の悪化によるもの
- その他の要因によるもの
以上が、倒産に至る大きな要因とされているものです。
このデータは、2005年から2014年までの、倒産データをもとにしていますが、基本的な順位はどの年も同じように推移しています。
尚、「【2位】既往 (きおう) のしわ寄せによるもの」とは、経営状態が悪化しているなか、対策を打たないまま過去の資産を食い潰してしまい倒産に至ることです。
対策が遅れがちになってしまうのは、直接的な原因がつかみにくく、いくつかの要因が重なってしまうことが原因だとされます。
少し分かりづらいかもしれませんが、この倒産原因をみると、決して赤字収支による倒産ばかりではありません。
逆に、半数近くは、決済が黒字だったのにもかかわらず、倒産してしまった典型的な黒字倒産が多く発生しているのです。
連鎖倒産や売掛金の回収難も、黒字倒産に陥りやすいもので、売り上げ拡大を狙った無理な設備投資も、大きな経営破たんを招くことがお分かりいただけるでしょう。
この第2位の、既往のしわ寄せというのは、かなり厄介みたいね。
そうなんだけど、原因が分からなくて放置するのではないから、一種の放漫経営ともいえるものだよ。
連鎖倒産とか、回収困難というのは、取引先の会社が悪いのよね。
そうだね。そこで、今回の問題となる中小企業倒産防止共済制度について説明しておこう。
中小企業倒産防止共済制度とは
中小企業倒産防止共済制度は、経営セーフティー共済とも呼ばれる保障制度の一つです。
中小企業倒産防止共済制度は、独立行政法人「中小企業基盤整備機構」の運営する共済で、いわゆる国が全額出資を行う公的な機関です。
この共済制度は、加入している会員企業が、万が一取引先企業が倒産した場合、積み立てた掛金総額の10倍の範囲内で貸し付けが受けられるといったシステムとなっています。
参考:https://www.chusho.meti.go.jp/faq/faq/faq16_tosankyosai.htm
上限は8,000万円で、回収困難な売掛債権等の額以内であれば、融資を受けることができます。
この中小企業倒産防止共済制度は、中小企業倒産防止共済法に基づいて施行された共済制度で、加入して会員となり、月々の掛け金を支払うシステムです。
加入資格条件となるのは、中小企業基本法の規定で定められた、国内の中小企業事業主であることが条件で、掛金月額は5,000円から200,000円まで、5,000円刻みで掛け金を選ぶことができます。
なお、掛金総額の積立限度額は、800万円と決まっていますので、この額以上の掛け金を増やすことはできません。
中小企業倒産防止共済は、取引先が倒産して売掛金や債権の回収が、困難になった時に貸付を受けられる制度です。
つまり、倒産例の項目で解説したように、連鎖倒産や売掛先企業が支払い不能状態に陥ってしまった場合、この共済制度が適用されるということになります。
中小企業は、もともと資本力が強いわけではなく、大口の取引先が倒産してしまった場合、大きな致命傷になりかねません。
その為、中小企業倒産防止共済制度による貸し付けは、会社の窮地を救う強い味方となってくれるものです。
ただし、前述の通り、中小企業に対しての共済制度ですので、個人事業主などは加入することはできません。しかし、個人事業主であっても、法人成りすることにより、1年以上経過していればこの加入条件を満たすことができます。
中小企業倒産防止共済制度のメリットは、無担保/無保証人/無利子で共済金の貸し付けを受けることができるところです。
注意しておきたいことは、共済制度が受けられる条件が、回収困難となった売掛金債権と、掛金総額の10倍までしか借り入れができないというところです。
また、売掛先相手が、夜逃げなどをしてしまった場合、共済制度を受けることはできません。
中小企業の経営者たちが、お金を出し合って、互いに支えていくシステムだよね。
こうしたシステムは、保険なんかにも利用されているよ。
では次に、どのような状況で、貸し付けが行われるのかを見ておこう。
中小企業倒産防止共済制度の貸し付け適合タイプ
中小企業倒産防止共済は、近年増えつつある黒字倒産の防止目的、といった意味合いの強いものです。
バブル期の崩壊やリーマンショック当初と比べ、倒産件数こそ減少しましたが、逆に黒字倒産の比率が半分近く占めているのも、現在の社会状況を反映していると言えるでしょう。
中小企業倒産防止共済制度は、取引先が倒産してしまい、共倒れを防ぐ為の貸付制度です。
その為、いくつかの条件もありますので、こちらに記しておきましょう。
項目別倒産タイプ事例
法的整理事例
破産手続き開始及び、再生/更生/特別清算開始の申し立てがされたこと。
私的整理事例
債務整理の委託を得る弁護士及び、認定司法書士により、共済契約者に対して支払いを停止する旨の通知を行われた場合。
取り引き停止処分事例
手形取り引きにおいて、最初の不渡りの後、半年以内に2度の不渡りが発生してしまうと、企業に銀行取引停止処分が下ります。
即倒産というわけではありませんが、上場企業の場合、上場廃止となり、当座預金取引と貸出取引が2年間できなくなることは、企業にとって大きな痛手であることは間違いありません。
でんさいネット取り引き停止処分事例
手形の電子取り引きシステムが、でんさいネットです。
当然、手形と同様の2度目の不渡りによる、取り引き停止処分が行われます。
災害による不渡り事例
災害による、甚大な被害などにより、小切手や手形が不渡りとなってしまう状況です。
でんさいネットによる取り引きも同様で、災害による不渡りが認定された場合となります。
特定非常災害による支払い不能事例
特定非常災害により、売掛先の代表者が死亡などした際、弁護士及び、認定司法書士により、共済契約者に対して支払いを停止する旨の通知を行われた場合。
以上が、中小企業倒産防止共済制度の適用事例となります。
現在、猛威をふるっている、今回の新型コロナウイルス問題ですが、コロナウイルスによる関連倒産は、災害による不渡り事例もしくは、特定非常災害による支払い不能事例にあたると推測されます。
ただし、共済制度が適用されるかどうかは、独立行政法人 / 中小企業基盤整備機構に、問い合わせてみるのが確実な方法です。
ご相談は、公式ホームページ内にある、経営セーフティ共済お問い合わせフォームか、電話でのお問い合わせが可能です。
すべて、倒産の原因によって、お金が必要になった場合に借りられるという事よね。
巨額な売掛金が残っていれば、連鎖倒産の原因となってしまうから、企業にとってはこうしたシステムの存在はかなり有り難いものだよ。
メリットはそれだけ ?
実は、この共済のメリットは、これだけに限らないんだよ。
中小企業倒産防止共済のメリットと注意点
経営セーフティー共済こと、中小企業倒産防止共済には、倒産の危機に際して借り入れが行えるだけではなく、ほかにもいくつかのメリットがあります。
では、いったいどのようなメリットがあるのか、具体的に上げていきましょう。
メリット【その1】売掛先企業の倒産に際し、最大8,000万円までを上限として、無担保/無保証で貸付が受けられる
返済期間は、借入額によって異なり、5,000万円未満であれば5年間、5,000万円から6,500万円未満であれば6年間、そして6,500万円から8,000万円までが7年間の返済期間となります。また、返済期間当初の6カ月は、返済不要となっており、据置期間によって優遇されているのが特徴です。
メリット【その2】掛け金の支払いは節税対策になる
掛け金は、5,000円から20万円の範囲内で、自由に選択できますが、加入後の増額も可能です。
払い込みの掛け金は、すべてが損金または必要経費に算入でき、減額/掛止めもできる為、途中解約のリスクも軽減できるというメリットがあります。
メリット【その3】万が一、取引先が倒産しなくとも借り入れが可能
実は、この中小企業倒産防止共済の特徴のもう一つに、解約金の95%を上限に、無担保/無保証人/無利子で一時貸付を受けられる制度があります。
借入金は、掛け金総額から算出されますので、掛け金が増えれば増えるほど、条件となる760万円に近くなります。
注意しておきたいのは、貸し付け金利は現状で0.9%と低いのですが、返済期間が1年間だというところです。
このように、中小企業倒産防止共済のメリットはかなり大きく、連鎖倒産のリスクに備えながら、掛金を全額損金算入して節税できるのは、とても大きなアドバンテージと言えるでしょう。
借り入れも可能で、税制面でも優遇措置があるのなら、中小企業の経営者にとってかなり有利かも。
ただし、途中解約すると、不利になるから注意が必要だよ。
ただし、注意しておきたいのは、途中解約をしてしまうと、デメリットが生じてしまうという点です。途中解約の事由には、以下の3種類があります。
任意解約
共済契約者自身で解約する場合。
みなし解約
共済契約者となっている人物の死亡、あるいは法人の解散/分割などにより、その時点で解約されたとみなされる場合。
機構解約
掛け金の滞納が12カ月以上あった場合、もしくは共済金の貸付に対して、不正行為があった場合、中小機構側からの解約が行われた場合。
途中解約のデメリット
期日前の任意解約のデメリット
任意解約は、納付月数が12ヶ月以上の場合、契約者は任意に契約解除を申し出ることができます。
ただし、納付した掛金に対して、100%の解約手当金を受け取れるのは40ヶ月以上の定めがありますので、元本割れしてしまう恐れがあります。
つまり、3年4ヶ月未満の解約の場合、元本割れしてしまうことになります。
解約手当金を受け取った時のデメリット
共済を解約した場合、掛け金納付月数によって、解約手当を受け取ることができます。
ただし、法人であれば益金、個人事業主であれば雑収入として扱われますので、つまり、解約のタイミングを考えておかなければ、この手当金相当額の損金と相殺できなくなり、課税の対象となってしまうということです。
共済金の貸付を受けると一定額が差し引かれる
共済金の借り入れは、無担保/無保証人/無利子で行えますが、実は貸付金の1割に相当する額が払い込んだ掛金から、差し引かれてしまうのです。
例えば、共済金の最高借入額は、8,000万円ですが、実質的には7,200万円ですので、その1割に該当する800万円は、受け取れないという事を念頭に置いておく必要があります。
しかし、最終的には、掛け金の100%を受け取ることになりますので、ご安心ください。
ただし、これまでに記述した通り、共済金は無担保/無保証人/無利子での借り入れが可能ですが、無計画に解約してしまうと、いらぬ益金を作ってしまうので注意が必要です。
解約してしまうと、デメリットの方が大きくなってしまうのね。
メリットの方が大きいから、かけ続けておくことに意味があるんだ。
なるほど。よく勉強になりました!
まとめ
中小企業倒産防止共済制度に加入していれば、万が一取引先が支払い不能に陥っても、無担保/無保証人/無利子での借り入れが可能です。
もちろん、メリットとともにデメリットもありますが、いざという時の連鎖倒産に備えながらも、掛金は最大800万円まで全額損金となり、必要経費扱いできますので、経理上も優遇措置が受けられることになります。
以上、中小企業倒産防止共済制度とは【経営者必見 !】 …でした。
\ メリット盛り沢山 /