この記事でわかるポイント
- 民法の大幅改正について
- ファクタリングに関する民法改正の要点
- ファクタリングがもっと活用しやすくなる !?
経済産業省が、ファクタリングを奨励する背景には、国内の経済状況が大企業に有利に働いているということが挙げられます。
特に銀行は、バブル期の反省などから、以前よりもかなり審査を厳しくし、簡単に借り入れができないといった状況が、さらに融資を借りにくい状態にしてしまっているからです。
大資本を抱える大企業に比べると、中小企業などの零細企業は、一般的には資本力はあまりなく、不動産などの資産なども持ち合わせていないというのが現状です。
そこで、目を付けたのが、売掛金を債権として売却するファクタリングの導入です。
目次
120年ぶりの民法改正
大手の銀行が大企業寄りになってしまうのは仕方のない事よね。
利益が大きい方へと傾いていくのは仕方のない事だけど、依存してしまうのは日本社会にとって大損失なんだ。
そこが経済産業省がファクタリングを推奨する理由の一つなのよね。
そうだね。ビジネスを円滑に進めていく為にも運転資金の有用性は計り知れないものがあるんだ。
そのために民法の大改正が行われたのよね。
ま、法律自体が古く、時代にそぐわないということもあって、かなり画期的な法改正になっているのがその特徴なんだ。
今回はこの法改正を踏まえて、ファクタリングがどう変わっていくのかを解説していこう。
2017年に民法の大幅な改正が、120年ぶりになされたことから、各業界で大きな注目を集めています。今でも毎年のように、様々な法律が改正される中、なぜこのように民法の改正だけが熱い注目を集めているのでしょうか。それは、これまで民法による、経済的な側面を規律する改正がなされていなかったことにあります。
【参考記事】【2020年最新版】民法改正後のファクタリングはどう変わる ?
簡単に考えても、私たちに最も身近な法律として存在する民法が、1世紀以上も見直されなかったことには、いささか驚くばかりです。今回の法改正の特徴としては、グローバル化する現代社会に、対応することを目的とした改正と言えます。
120年前の法律を、これまで現行法として許容していきましたが、実際には現状にそぐわないといった部分がありました。現状では、専門家である民法学者や法曹実務家が、実務で補っていましたが実情ではカバーがしきれない部分が目立ってきたというのが本音でしょう。
そこで、今回の民法改正となるのですが、実情に合わないとされる部分については、現代社会に適応する形で改正され、現存しないルールに関しても、これを明文化するといった法改正となっています。この法改正には、ファクタリングに関する改正も含まれており、大きく分けて五つのポイントに着目することができます。
120年も変わらなかったって、かなり驚きなんだけど。
ハハハ、ま、判例も参考にしながら、だましだましやってきたという感じかな。
それでこの法改正は、かなりざん新なものになったの ?
ざん新というよりも、今の時代に見合った法律になったということかな。まずは、今回の法改正で、新たに施行される法律を見ておこう。
楽しみだわ。よろしくお願いします ! 先輩。
民法改正により新たに施行される法律とは
現行法でもある日本のあらゆる法律は、開国による一時的なグローバル化によって、促進されたものと見てとることができます。それまで、江戸幕府による鎖国政策により、海外からの情報は制限されていましたが、それでも完全にシャットアウトすることはできませんでした。
結局は過度な締め付けによって、内乱を招く結果となりましたが、これが新たな時代を開くきっかけとなったわけです。それまでの日本の旧文化になり変わり、新たな幕開けとなった明治時代は、権力ではなく法律で平等に人を裁くという世の中になりました。現在の日本の法律は、海外の法律に照らしあわせ、日本の風習にあった法律に作り上げられてきたのです。
しかし、当然の事ながら、明治時代から大正時代に入り、昭和/平成/令和と時代は移り変わってくると、どうしても時代にそぐわない諸問題が出てきます。これまでは、解釈を上手につなぎ合わせることで、法律を運用してきましたが、それも限界が近づいたということで、民法改正に踏み切ったわけです。
今回は、民法の大幅な改正に基づき、新たに施行される内容は多岐にわたります。その中でも、ファクタリングに関連する改正内容について、以下の条項に対する改正が行われることになったということを、まずは覚えておきましょう。抑えておきたい、主な変更条項は次の通りです。
- 定型約款に関する規律
- 瑕疵担保責任の廃止/契約不適合性の重視
- 消滅時効制度の見直し
- 法定利率の見直し
- 保証制度の見直し
新たに施行される法律に関する注意ポイント
定型約款に関する規律について
2020年度4月に新たに施行された民法改正案ですが、一見ファクタリングとはあまりかかわりのないのではないかといった項目もみられます。ですが、実際には、深くかかわっている条文もありますので、ここでは簡単な解説と法律に関する注意ポイントとして、いくつかの点を挙げておきましょう。まず、定型約款に関する規律についてですが、ファクタリングにおいて契約にかかわるポイントとなります。つまり、約款とは、商品やサービスを購入した際に、消費者との契約条項や免責事項などが規定されているものです。この条項で注視しておきたいのが、約款の内容を理解できなくとも契約は有効となりますが、消費者側の一方的に不利益になる条項が設けられている場合は、これを無効とするという点です。
いろいろと難しいことばかりだけど、私たち一般人にはあまり関係のない話かしら?
何を言っているんだい ! 大いに関係あるものばかりだよ。
そうなの ?
そうさ。一部の法律は身近なものじゃないかも知れないけれど、僕たちの生活に身近な法律も多いんだ。それじゃあ実際に、今回新たに施行される法律を見ていこう。
消滅時効制度の見直しについて
消滅時効制度は、債権に関する変更条項で、これまで債権の消滅時効は業種ごとに異なっていたのが現状でした。現行法で例を挙げてみますと、商事債権が5年、診療報酬や工事請負代金は3年、売掛債権は2年とそれぞれに異なっていたものが、一律で5年といったように統一化されることになりました。あくまでも、基本的となる消滅時効ですが、債権の請求において、5年で時効を迎えると理解しておくと分かりやすいかと存じます。
瑕疵担保責任の廃止/契約不適合性の重視について
これは、従来の契約に際して、瑕疵担保責任ではなく契約不適合責任なったということになります。主な改正点としては、損害賠償請求の範囲が広がったことと、一定の条件で契約解除が認められた事が挙げられます。また、特定の条件で追完請求が認められ、代金減額請求も認められることになりました。
保証制度の見直しについて
一見、ファクタリングとは、あまり関係性がないようですが、最近では給与ファクタリングや、不動産賃貸に関する家賃ファクタリングなども行われるようになっている為、知識として覚えておくことが必要です。保証制度の見直しは、これまで貸金などの根保証が、極度額の定めがなければ無効とされていたことに関しての改正案となります。
何が変わったかというと、これまで法人間の継続契約において、代表者が保証する場合であっても、極度額が定められていなければ無効となるということです。また個人ではなく、事業の為の貸金債務については、公正証書で個人保証の意思を確認することが必要となりました。
ただし条件としては、法人が債務者あるいは、代表者が保証人という場合には、公正証書でなくても有効となります。この保証制度の見直しは、賃金に対してだけではなく、家賃などもその対象となることになりました。つまり、家賃に対しても、その極度額を定めることが必要となるわけです。
また、これに関連する変更点として、不動産賃貸借契約における見直しも行われることになりました。最近では、ニュースや新聞などでも、賃貸借契約によるトラブルが続出しています。今回の見直しによって、契約内容の線引きがしっかりと行われ、敷金の返還や原状回復義務の明確化がなされることになりました。
なるほど。確かに私たちの生活に密着しているわね。
そうだね。さらに続きを見ていこう。
法定利率の見直しについて
これまでの既存民法の中で、最も実情にそぐわないとされていたのが、法定利息の問題です。改正前は、支払いの遅延に際してのペナルティとして、1年あたり5%と規定されていました。もちろん、契約による利率が定められていれば問題はありませんが、あまりにも高い年利5%は、高すぎる利息としてかなり問題視されていたのです。
今回の法改正により、法定利率が年5%から年3%に変更されることになりました。では、具体的に実情にそぐわない問題とは、どんなことなのかという疑問です。例えば、バブル期以前においては、銀行預金の金利が5%以上を超えることはざらでしたが、現状ではデフレの影響もあり、金利0%といった状況が続いています。
一方で、借入金に関しては、返済に対する遅延に現行法の5%が適用され続け、借りる側にとって不利な状況が続いていたわけです。今回は、このような状況を改善する為の、措置とも言える改正となりました。
しかし、この3%が現代社会の実情に沿うものとは限らない為、対応措置として3年ごとに見直す条項が定められました。この民法404条改正により、今後は支払いの遅れに際して、年3%の利息の負担となり、約2%の利息軽減措置が実行されることになります。
そのほかの民法改正ポイントについて
今回の民法改正は、2020年4月に正式に施行されることになります。もちろん、ファクタリングには、直接影響のない改正もありますが、改正のポイントを見極めておくことは、今後の会社経営にも役立つものとなります。そこで、ほかの改正ポイントについても、少しふれておきましょう。
ほかの、おもな民法改正について、着目しておきたいポイントとして、時効制度の変更/個人根保証契約の解釈の変更/相殺禁止の緩和/債権法改正を挙げることができます。このうち、ファクタリングに直接影響を与えるのは、債権法改正ですが、この項ではほかのポイントについて簡単にご説明します。
まず、時効制度の変更は、一定期間権利を行使しなかった場合、権利の主張ができなくなるといったもので、主観的起算点の新設が設けられました。次に、個人根保証契約とは、私たちに最も身近な一般的な契約事項のことです。
現行法では、貸金などの債務について、根保証を行う場合に極度額、つまり限度額の定めがなければ無効の規定がありました。改正後には、貸金等の債務だけでなく、根保証契約全体に拡大されることになります。つまり、賃貸契約などにも、この法律が適用されることになるわけです。
ここまで見てきたけど、ファクタリングに直接かかわるような法律ではなさそうな感じ。
まあね。ファクタリングに関連する法律は、債権法の改正なんだよ。
ファクタリングに大きな影響があるのは債権法改正
ファクタリングを利用なさっている方であれば、この制度を経済産業省が広く推奨していることはご存じのことと思います。しかし現行法ではいくつもの制限がある為、ファクタリングを行いたい企業やファクタリング会社にとっても資金調達に際するブレーキとなっていました。
しかし、今回2017年の法改正により、このブレーキ的存在であった債権法に関して大きなメスが入れられることになりました。それが債権譲渡禁止特約といった問題です。これまで、日本の産業を円滑に進めていたのは現金に代わる手形の存在です。
ご存じのように、手形には償還請求権というものがあり、満期に支払が拒絶されるあるいは、支払いの見込みが喪失した場合にのみ、手形の振出人及び手形の裏書き人は責任を負う必要があります。企業間が取引きをする際には、正式な契約が取り交わされるのが通例ですが、この中に債権譲渡禁止特約というものがあります。
この債権譲渡禁止特約は、読んで字のごとく債権の譲渡を禁止とするものです。つまり、売掛債権の売却において債権譲渡禁止特約が結ばれていれば、ファクタリングを利用することができませんでした。
では、法改正によってどのように変わるのでしょう。
なるほど。ファクタリングは売掛金を債権として売却するシステムだからね。
そうだね。そこで、この債権法改正によってどのようにファクタリングの状況が変わっていくのかを説明してみよう。
債権法改正により変わるファクタリングの状況
最近にわかにファクタリング業界へ新規参入するファクタリング会社が増えてきているのも、この債権法改正により、ファクタリングがより注目を集めていることほかなりません。従来の債権法の変更点としては、債権譲渡禁止特約があっても債権譲渡が成立するということです。
確かに業界にとっては追い風となるものですが、一概にそうとは言い切れないようです。というのも、これまで売掛先に知られる事なく、債権譲渡が可能であった2社間ファクタリングにおいて、債権譲渡禁止特約がある売掛債権に限り、通知無しのファクタリングはできないからです。
また、今回の変更で、債権譲渡禁止特約のある債権が支払い期限を超えてしまった場合でも、ファクタリング会社が直接支払いを求めることができるようになりました。これらの規制緩和により、ファクタリング利用者はより一層売掛債権の資金化を行いやすくなり、更なる自由度が増していくことが考えられます。
ただし、自由度が増す分、悪徳ファクタリング会社も増える可能性が高く、ファクタリング利用者には十分な注意が必要となります。
今回は簡単に説明したけれど、この債権法を改正は中小企業などの小規模会社にとって大きな力になる事は間違いないよ。
ファクタリングが利用しやすくなるという事よね。
そうだね。難しいハードルが取り払われて、これまで以上にファクタリングが利用しくしやすくなったことは間違いのない事実だよ。
なるほど。これまで以上に資金調達が楽になりそうね。
そういうことだね。
まとめ
ファクタリングそのものの法律はありませんが、これに対応する法律として債権法があることがわかりました。
これまでは企業や個人事業主などの会社が主体でしたが、債権法の緩和によって個人間によるファクタリングも広まっていくものと考えられています。
ファクタリングは債権の売却となるもので借金とはみなされませんので、与信情報が気になる方、つまりブラックの方であっても利用可能となります。
以上、法改正でファクタリングはどう変わる ?…でした。
\ メリット盛り沢山 /