この記事でわかるポイント
- デフォルトについて
- 償還期請求権について
- 契約前の内容確認と万が一、支払い不能に陥った場合の対処方法
ようやく、世間に認知され始めたファクタリングの存在ですが、2020年4月の民法改正によって、クラウドファクタリングなど、新たなサービスも提供され始めてきました。
【参考記事】【2020年最新版】民法改正後のファクタリングはどう変わる ?
本来、ファクタリングは、債権の売却による取引を意味するものですが、初めての方であれば、ファクタリングの種類に驚きを覚えるのではないでしょうか。
ファクタリングの基本は、2社間ファクタリング及び3社間ファクタリングとなります。
2社間ファクタリングの流れとしては、利用者側は売掛債権をファクタリング会社と契約し、債権の譲渡及び売却を行うもので、利用者は契約後に手数料が差し引かれたお金を、受け取るといった一連の流れがあります。
しかし、それで契約が完了したわけではなく、その後売掛先企業からの通常サイトでの入金が行われ、入金された売掛金をファクタリング会社に渡して初めて完了となるのです。
それでは、仮に支払い不能になってしまうと、どういった結果を招いてしまうのでしょうか。
なぜファクタリングは後で売掛金をファクタリング会社に返さなければならないのに、借り入れにならないのかしら?
基本的に売掛金を債権として扱い債権の売却を行うからね。2社間ファクタリングの場合、売掛先企業からファクタリング会社が直接もらうと売掛先に知られてしまうから、後払いという方式をとっているんだ。
だから2社間ファクタリングの場合は、秘密が守られるって言うわけね。
そうだね。今回はファクタリング契約において契約不履行を行ってしまったケースを想定し、どういったことになるかを詳しく説明していこう。
よろしくお願いします。先輩 !
まずは、デフォルトについて解説するよ。
目次
デフォルトとはいったい何 ?
デフォルトとは英語で、欠席 / 怠慢 / 不履行 / 棄権 / 初期値 / 既定値などの意味を持つ単語ですが、日本でもビジネスの世界やIT業界で多用され、単に「デフォ」などと言ったりもします。
IT関連では、コンピューターやソフトウエアを指す事の多いデフォルトですが、これらは使用を開始する際に、前もって利用方法や使用環境に合わせて、様々な設定項目の入力や変更を行う必要があることが多いものです。
年々高度になってくる、こうしたハードウエアやソフトウエアですが、利用者がいちいち細かな設定をしなければならないのは、非常に煩わしいものです。
そこで、開発側であらかじめ、一般的な利用環境を想定して、利用者に対して使いやすく設定する事をデフォルトと言います。
一方で、経済及び金融業界でデフォルトと言えば、義務や債務の不履行といった意味が強く、「債務不履行」といった形で、ニュースや新聞などで見かけることも多いのではないでしょうか。
この、債務不履行となるケースは、例えば債権の発行元が、元本や利息の支払いの遅延あるいは不払いとなり、元本の償還が不可能になりかねない状況を示しているものです。
企業がこの債務不履行を起こしてしまった場合、信用は大きく下がり、自社株価の低下や最悪倒産につながってしまう恐れがあります。
さらに、一般人に分かりやすく説明すると、ブラック及びブラックリスト入りと呼ばれるものです。
債務不履行は、様々な要因で起こるもので、多重債務や超過債務などといったケースが多く、企業間では売掛金が回収できずに、連動して買掛先が債務不履行となってしまうケースが増えています。
こうしたケースで倒産することも多く、いわゆる黒字倒産となる事が多いといえます。
デフォルトという言葉自体は以前からよく聞く言葉だけど、ひな型的な意味でよく使っているわね。
デフォルト自体の意味は案外広いからね。でも、金融業界でデフォルトといえば、かなり緊急性を要する言葉で、「デフォルトが起こった」と聞くと、スタッフ間に緊張感が走ることになるよ。
資金回収不能の危険性があるからだよね。
ファクタリングの場合も同じようにデフォルトの危険性はあるんだけど、意外な事と思かもしれないが利用者による使い込みも多いんだよ。
軽率な「資金の使い込み行為」には要注意 !
ファクタリングを利用する多くのお客は、つなぎ融資的な存在で、ファクタリングを活用している方が多いようです。
融資やローンとは異なり、短期間で資金入手が可能なファクタリングは、即効性といった面でもかなり有効な方法となります。
しかし、資金ショートを回避したとはいえ、あくまでも一時的に売掛金の前倒しをしたに過ぎません。なぜなら、売掛金の入金日には、改めてファクタリング会社への入金を行う必要があるからです。
ここで、利用者に気をつけて欲しいのは、会社の債務を優先するあまりに、本来ファクタリング会社へと入金するはずの、売掛金を使い込んでしまうことです。
会社可愛さに、資金を優先させてしまうことはよく理解できますが、ファクタリング会社へと入金が行われなければ、契約不履行となってしまいます。
あくまでも、利用者側が売掛金を受けとるのは回収代行に過ぎず、横領してしまえば法的にも違法行為とみなされてしまいます。こうした使い込みは、2社間ファクタリングの利用者に多いのもその特徴です。
一般的に行われている、債権買い取りのファクタリングは、2社間及び3社間ファクタリングが基本となります。債権買い取りファクタリングとしては、診療報酬及び介護報酬ファクタリングといったものもありますが、基本的な流れは3社間ファクタリングと同様のものです。
3社間ファクタリングでは、3者間で行われる契約となります。つまり、直接売掛先企業や該当の団体や自治体から、ファクタリング会社が直接売掛金を回収する為、利用者が売掛金を着手してしまうことはほとんど無いからです。
気持ちはわかるけど、お金を返さないのは大問題ね。
そうだね。でもデフォルトは使い込みだけじゃなく売掛先企業の契約不履行もあるからね。そこで償還請求権について少し解説しておこう。
ファクタリングでよく耳にする償還請求権とは何 ?
償還請求権とは、遡求権(そきゅうけん)を意味するもので、手形関連の事案に使われ、リコースとも呼ばれるものです。
遡求権では手形の当事者、つまり手形の振出人及び手形の裏書人、また保証人として署名した人物は、支払期日に支払いが拒絶された場合、または支払われる見込みがなくなった際には、責任を負う義務があるという事です。また、小切手も同様に、約束手形などと同じく遡求義務があります。
では、売掛債権を扱うファクタリングのケースでは、この償還請求権はどのような扱いを行っているのでしょうか。
まず、ファクタリングを実行するうえで、償還請求権の扱いは、ファクタリング会社に買い取ってもらった売掛債権が、その売掛先の会社の倒産などで、回収不可能になった際にはファクタリング利用者に対してその金額の支払いを請求できるといった権利のことを意味しています。
これまでのファクタリングでは、償還請求権ありの契約が一般的でした。
しかし、最近では、償還請求権なしのノンリコースでの契約が、ファクタリング業界の主流となってきています。
ファクタリングで償還請求権無しが主流となったのは、どんな理由からなの ?
簡単に言えば売掛金を債権として、その権利をファクタリング会社に譲渡してしまえば最終的な権利がファクタリング会社側に移るから、万が一の場合であってもファクタリング会社が対抗措置を取れるからなんだよ。
なるほど、対抗措置かあ。
つまり、デフォルト対策のほかに二重譲渡の対抗措置がとれるという話なんだ。
そういうことなのね。
もちろん償還請求権アリ・ナシどちらの場合でも、メリットやデメリットは存在するよ。
ファクタリングにおける償還請求権のメリットとデメリット
ファクタリングにおける償還請求権は、償還請求権ありのリコースと償還請求権なしのノンリコースに分離することができます。
償還請求権ありの場合は完全保証、償還請求権なしの場合は一部保証とも呼ばれる事があります。
この償還請求権アリとナシの件ですが、簡単に言えば、償還請求権なしの場合は、元の所有者からファクタリング会社へと権利が移ることになりますので、ファクタリング会社が売掛債権に対して、全部責任を持つという意味です。つまり、ファクタリング会社が、まるまる損失を被る契約ということになります。
では逆に、償還請求権ありの場合は、どうなるのでしょう。
償還請求権ありの場合は、元の所有者の権利がそのまま残りますので、売掛金債権の元の所有者に、一部補償を請求できる契約が生じるわけです。
つまり、売掛先が売掛金の支払いを行わなかった場合、ファクタリングを利用する本人が、その責任をこうむることになります。
なるほど。ファクタリング利用者にとっては、償還請求権なしのメリットが大きいんだね。
そうさ。そこで二つを比較して、簡単に見分けられるようにしよう。
では、さらに分かりやすく、簡単な表にまとめてみましょう。
メリット | デメリット | |
償還請求権有りの場合 | 売掛先が倒産しても、利用者に一切影響なし | 手数料が高めに設定されてしまう |
償還請求権無しの場合 | 手数料が低めに設定される | 売掛先が倒産した場合、一部を償還する必要あり |
表を見てお分かりのように、負債を抱えるリスクのないのが「償還請求権なし」ということになります。
表にまとめるとよく理解できるわね。
そうだね。次にファクタリング契約に関する話しだよ。
特に重要な内容だから、しっかりと確認しておこう。
ファクタリングの契約は法的にも有効
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、ファクタリングを直接結び付ける法律は、現在のところ存在していません。
その為、現状では、民間のファクタリング会社が、大小様々乱立している状況にあります。
しかし、ファクタリングに関する法律は無くとも、債権に関する法律は存在しますので、ファクタリングの場合は債券法により、すべての法的根拠をもつことになります。
ファクタリングでは、前倒しといった形で、利用者がファクタリング会社から債権分の現金を前倒しでもらい、後日現金を返済するといったスタイルですが、返済しなければ詐欺罪に当たってしまう可能性があります。
詐欺罪は、人あるいは会社をだまして、物品や金品を奪う行為で、だまして財産上不法の利益を得る行為も詐欺罪にあたります。
こうした犯罪を行った者に対しては、最高で10年以下の懲役に罰せられることもあり、だまし取った金品は没収あるいは追徴されることになります。
また、組織的に行われた場合は、さらに罪が重たくなります。横領罪は、他人の物を横領する犯罪で、自分が専有するものであっても、横領罪は成立します。
業務上横領罪が適用されれば、最高10年以下の懲役が科せられることになります。
ファクタリングは、売掛債権の譲渡&売却により、ファクタリング会社から現金を得る方法です。
法律上は、ファクタリングの契約が行われた際に、売掛金を債権とする所有者は、ファクタリング会社となります。
したがって、売掛金を使い込んでしまえば、故意でなくとも、詐欺罪あるいは横領罪が適用される恐れがありますので、甘く見ることはできません。
使い込まれないようにファクタリング会社が先に売掛金を回収する事はできないの ?
使い込みの可能性は、基本的に2社間ファクタリングの形のサービスとなるね。2社間ファクタリングは売掛先に知られないのが前提だから、取引先の企業に直接回収を持ちかけることは難しんだ。
それで債権の譲渡が必要になるんだね。
そういうことになる。つまり、売掛債権の権利がファクタリング会社にあることを示しておく必要があるんだ。
契約の内容をしっかりと把握しておく必要あり
どのような契約にしろ、契約内容のすべてを把握するのは、法律の専門家でなければなかなかに難しいことです。
とはいっても、法的な拘束力をもつ契約ですので、署名なつ印を行ってしまえば、本人の承諾のうえで契約が完了したことになります。
世の中には、様々な契約詐欺も横行していますので、悪質なファクタリング会社にだまされないためにも、防護措置として、契約の内容をしっかりと把握しておく必要があるのです。
すべてを把握することは難しいものですが、いくつかのポイントに絞って、契約時の注意事項としておきましょう。
まず、契約書の内容ですが以下のポイントを、しっかりと押さえておきましょう。
- 約束通りの手数料が守られているか
- 手数料に消費税がかかっていないか
- 掛け目は何%か
- 債権譲渡登記はあるのか、あれば債権譲渡登記の費用はどうなるのか
- 支払い条件及び返済期日
- 返済できなかったケースはどうなるのか
さらに、リスクを極力抑える為にも、契約書や重要書類のコピーは必ずもらい、トラブル防止の予防線を張っておきます。
契約の内容をしっかりと把握しておくことは大切だわ。
そのためにも書面の内容で重要な項目に関しては、確実に目を通しておく必要があるね。
支払い不能に陥った際にはこうなってしまう
ファクタリング会社にとってローリスクで知られる3社間ファクタリングは、ファクタリング利用者の会社とファクタリング会社、売掛先の会社との3者間で行われる契約となります。
その為、ファクタリング会社が直接売掛先会社から売掛金を回収しますので、ファクタリング利用者が使い込みを行ってしまうといったリスクはありません。
2社間ファクタリングの手数料が高めなのも、こうしたリスクがある為で、本来支払わなければならない取引先の売掛金を着服してしまった場合、取り返しのつかないことになってしまいます。
まず、よほどのことがない限り、告訴といった手立てはとりませんが、「損害賠償請求」されることは間違いありません。
本来引き渡すはずの売掛金とは別に「遅延賠償金」が上乗せされ、一括で返却できなければ分割での支払いを要求されます。
これを拒否すれば当然賠償責任を問われ、詐欺や横領といった刑事告訴に踏み切ります。
ダメージは、当事者だけではなく、会社の経営に影響することは間違いないでしょう。
万が一、支払い不能に陥った場合は、速やかに専門家の手によるアドバイスを受けるようにしましょう。
使い込みの可能性は2社間ファクタリングだけというのは分かったけど、良識のある人だったらそんなことはしないよね。
使い込みの可能性は否定できるものではないんだ。悪意でなくとも、企業の事情もあるからね。
契約は絶対だからね。
もちろん正当化できるものではないが、そこまで資金難に陥っているのならM&Aを含めた経営改善策を考えるのも経営者の手腕だよ。
まとめ
悪意のあるなしにかかわらず、ファクタリングにおいて、契約内容というものは法的な拘束力があります。ファクタリング会社によっては、こうした使い込みを逆手に取り損害賠償金支払契約に切り替え、実質的な借入の契約にしてしまう場合もあります。
ファクタリング利用の際には、必ず売掛金の引き渡しまで考慮しておく必要があります。
また、ファクタリング契約においてノンリコースの存在はファクタリング利用者がリスクを負わないといったメリットがありました。
しかし、逆にファクタリング会社がすべてのリスクを背負う形になりますので、どうしても利用手数料などが割高となってしまいがちなのです。
以上、ファクタリング会社へ資金を返済できない場合の対処法…でした。
\ メリット盛り沢山 /