この記事でわかるポイント
- エクイティファイナンスとは
- エクイティファイナンスの種類
- エクイティファイナンスのメリットとデメリット
資金調達の手法は、様々なものがありますが、一般の方が最初に思い浮かぶのは、融資やローンといった借り入れではないでしょうか。
融資やローンは、いわば借金にあたるもので、返済の義務があります。しかし、多くの資金調達の手段がある中、返済義務の生じない資金調達方法もあるのです。
返済の必要のない、資金調達方法なんてあるの ?
例えば、国や自治体の制度で、補助金や助成金というものもあるよ。
それって、個人で借りられるものじゃないんでしょ?
いや、個人に対応している補助金や助成金もあるよ。
なるほど、それは魅力的ね。
今回は補助金や助成金以外で、返済不要な資金調達方法の解説をするよ。
ほかにもあるんだ。
エクイティファイナンスと言うんだ。
へーえ、興味深いわね。詳しく教えてください ! 先輩。
まずは、エクイティファイナンスについて説明しておくよ。
目次
エクイティファイナンスの概要と仕組み
資金調達の方法として、融資などの借り入れを利用するデットファイナンス、売掛債権の売却や不要在庫の売却など、会社の資産を利用したアセットファイナンスがあります。
そして、もう一つの資金調達方法として、会社の資本を利用するエクイティファイナンスを挙げることができます。
一見して、会社の資産と資本は、同じもののようですが、資産とは違い資本は、事業資金となる元手を表すものです。
もう少し、具体的に言えば、株主などから出資金を募い、それに企業の利益を合わせたものを資本金と呼んでいます。
また、狭義の概念として、貸借対照表上において、資産と負債の差額として捉えられる場合もあります。
簡単に言えば、エクイティファイナンスとは、新株を発行して資金調達を行うことを指して言います。
エクイティは英語でequityといい、自己資本や株主資本を意味する言葉です。
つまり簡単に言えば、株式の発行などを利用した資金調達方法が、エクイティファイナンスと言うことになるわけです。
では実際に、エクイティファイナンスの仕組みは、いったいどのようなものなのでしょう。
企業の中でも、株式会社はごく一般的に存在しますが、こうした株式会社は、エクイティファイナンスによる、資金調達を行った会社とも言えます。
なぜ、多くの企業で、株式が有用な資金調達方法として、用いられているかといえば、出資する株主にこそお金の負担がかかるものの、企業としての負担が極めて少ないからです。
というのも、株式の発行などによる出資は貸借対照表上、負債として扱われず、資本として扱われるからです。
融資のような借入金とは異なり、あくまでも会社の資本であり負債ではない為、金融機関からの評価も全く影響がありません。貸借対照表は、バランスシートとも呼ばれるもので、このバランスシートを確認するだけで、企業の財務状況だけでなく、安全性や手元流動性についても、確認できるといった優れたものです。
負債が増え過ぎてしまえば、正常な経営がなされてないとみなされ、融資での審査が通らないということもしばしば起こりえます。
エクイティファイナンスの特徴は、こうした株式からなる資金調達方法ですが、出資者に対して配当といったリターンを行わなければならない一方、出資金を返済する義務がないのが、大きな強みとなります。
資本による資金調達って、なんだか分かりにくいわね。
ま、簡単に言えば、会社に出資してもらって、それを事業資金にするといった方法なんだ。
なるほど、それなら理解しやすいわ。
では、エクイティファイナンスで、代表的な新株発行による資金調達を見ていこう。
新株発行によるエクイティファイナンスの種類
時価発行増資
いわゆる新株発行の事で、時価及びじかに近い価格で新株を発行します。株価が高ければ、発行が少なくとも、多くの資金が調達できますが、価格は企業の魅力や信用力が重視されます。
新株予約権
新株予約券とは、事前に設定した価格で、新株を購入できるというものです。安い時期に新株を購入できれば、その後会社が上場した際など高値で売却できることになります。最近では、ベンチャー企業を中心に、優秀な人材を採用する為、発行することも多いものです。新株予約券は、社債とともに発行したり、金融機関からの融資に利用する事も可能です。
株主割り当て
既存の株主を対象に、増資といった形で、新株を割り当てるのがこの株主割当です。保有数に応じて割り当てられますが、株主に対して購入の義務はありません。
第三者割当増資
株主割当とは異なり、増資といった形で第3者に対して、新株を割り当てるものです。注意点として、経営者や既存株主の出資比率が下がる事により、一株当たりの価値が下がってしまう恐れがあるという点です。また、それは分配請求権が、減ることを意味しています。
株式公開・上場
多くの事業者が、最終的な目標と掲げているのが、この株式公開及び上場と言えるでしょう。株式公開は、IPOつまりイニシャル・パブリック・オファリング、とも呼ばれるものです。
公開する事により、知名度は上がり、信用力が増すことはもちろんのこと、豊富で多様な資金調達が可能となります。ただし、企業は経営情報の開示が求められるほか、自由な株式の売買により、三者の買収リスクが発生します。
似たようなものだけど、新株を発行するということなのね。
株式は多くの企業が行っている、比較的ポピュラーな資金調達方法なんだ。
確かに株式会社というのが多いわね。
では次に、そのほかのエクイティファイナンスについて見ておこう。
そのほかのエクイティファイナンス
従業員持ち株会
会社の株を社員が購入する仕組みのことです。購入に関しては、毎月の給料から天引きということも可能です。事業の業績アップにもつながりやすく、社員のモチベーションが上がる資金調達方法と言えるでしょう。
ベンチャーキャピタル
最近よく聞かれるようになった、ベンチャーキャピタルですが、いわゆる高リターンを狙った投資専門会社のことです。つまり、ベンチャーキャピタルは、常に将来性のある企業に出資する傾向が高い為、それだけ可能性を秘めた条件を示す必要もあります。
中小企業ファンド
ベンチャーキャピタルが、設立する投資事業有限責任組合の事を、中小企業ファンドといいます。中小企業ファンドは、目的別に合わせたファンドを組成する事により、投資家から資金を募ることになります。こうした資金を元に、ベンチャー企業などに投資する事になります。
エンジェル投資
ベンチャーキャピタルが、複数の投資家からなるのに対して、エンジェルは個人投資家単独での投資活動のことです。日本ではごく少数ですが、ベンチャー企業投資促進税制を創設されたことから、条件により出資者は出資金に対して、税金がかからなくなるといったメリットがあります。
クラウドファンディング
最近注目度が高いのが、インターネットを利用した、このクラウドファンリングです。企業自らがファンドを構築し、第3者がそれを見て個人的に投資を行うといった手法です。不特定多数者から資金を募る為、魅力あるリターンを提供する事が、一つのキーワードとなります。
あまり大口の投資は見込めませんが、少額投資でいかに多く集めるかがポイントと言えるでしょう。小規模な事業者が、資金を集めるのに適しており、見返りとなるリターンは配当金などではなく、商品や利用券、商品券や知識など、幅広いリターンの提示が可能です。
このように、エクイティファイナンスは、株式の発行による資金調達が多いのですが、会社資本による資金調達は、会社に投資をしてもらうといった意味でも利用されています。
逆に言えば、企業側に魅力がなければ、出資してもらえないということです。つまり、エクイティファイナンスを成功させる為には、出資者に対して魅力ある事業の提供を行わなければならないということになります。
うああ、たくさんあるのね。
そうだね。クラウドファンディングなんかは、少額の資金調達もやりやすいから、今熱い注目を集めているよ。
個人事業主でも、利用できそうね。
実際に大企業よりも、小規模事業者が活用している例が多いんだ。
なるほど、かなりのメリットね。
そこで、エクイティファイナンスには、どんなメリットがあるのかを解説するよ。
エクイティファイナンスのメリット
返済義務がない
エクイティファイナンスは、出資者に対して投資してもらうことにより、資金調達を可能とする手段です。エクイティファイナンスのメリットは、投資してもらった出資金に対して、返済の必要がないという点です。
その為、いかに魅力的な事業を展開していくかが、資金調達の決め手となるわけです。返済の必要性がないといったメリットは、企業にとって大きな強みとなるものです。
一般的な融資では、返済額とともに利息を支払わなければなりませんので、会社の財務状況に関して大きな負担となります。場合によっては、複数の金融会社からの融資で、多重債務になることもあり、経営が圧迫されてしまいます。
利息が発生しない
返済義務がないということは、同時に利息が発生しないという事です。利息が発生しないという事は、資金調達に際して余計なコストがかからないということです。
例えば、借入金が500万円あり、金利が5%だった場合、利息は25万円になりますので、長期になればなるほど大きなコストダウンといえます。
また、借り入れを行う際には、金利を比較した融資元の比較など、情報収集も必要となりますので、こうした手間もかからないということになります。
資本としての扱いである
エクイティファイナンスによる資金調達は、貸借対照表上ではすべて資本として扱われます。
これが、どういった意味を持つのかを説明すると、会社の負債が少ないということは、事業経営や財務状況の心証が良くなるということです。
融資を受ける場合、負債が多いということは、金融会社から見ると経営難とみられてしまいます。
このように、エクイティファイナンスによる資金調達は、貸借対照表上の負債が増えませんので、会社の評価を下げることなく、ほかの資金調達方法も視野に入れることができるのです。
自己資本力が上がる
エクイティファイナンスは、資本による資金調達方法ですので、当然調達した資金も資本に含まれます。
その中でも、自己資本率は、資金力があると判断されるもので、銀行などの金融機関の審査でも、この自己資本率を重視しています。さらに具体的に言えば、自己資本率が40%であれば安定した経営とみなされ、70%を超えていれば、かなり優秀な企業と言ってよいでしょう。
財務体質を強固にする効果
前述したとおり、自己資本力が上がる事は、事業をさらに拡大し、会社を発展させることにつながるものです。エクイティファイナンスは、出資が増えれば増えるほど資本力が上がり、返済の必要もありません。
これにより、財務面でも負債が減り、ひいては財務体質を強固なものとする事ができます。自己資本は、新たに事業を展開する為の元手となるものですから、資本力が増すことにより、会社規模の拡大も安定して行えることにつながるわけです。
以上のように、事業強化や財務面での改善を図る為にも、エクイティファイナンスは、非常に有用な資金調達といえます。いつでも、事業資金に投下できますので、こうした状況はビジネスチャンスを逃さない、有効な手立てとなるでしょう。
この返済義務がないというのは、かなり大きな強みよね。
ま、代わりにリターンが必要なんだが、返す必要がないお金というのはかなり魅力的だよね。ただ、良いことばかりじゃないから、デメリットも見ておく必要があるよ。
エクイティファイナンスによるデメリット
いわゆる、資本を増やし、それを資金するエクイティファイナンスは、企業の資金調達方法として、かなり魅力的に感じる経営者も多いのではないでしょうか。
財務強化もでき、自由な事業の展開を図れる事は、どのような経営者にとっても、のどから手が出るほど欲しい状況です。メリットの面だけを見ると、かなり優れた資金調達方法と見えますが、場合によっては致命的なダメージにもなり得るのが、このエクイティファイナンスです。
つまり、エクイティファイナンスは、優位性のあるメリットだけではなく、マイナスとなるデメリットも存在しています。では、エクイティファイナンスによるデメリットには、どのようなものがあるのかを見ておきましょう。
説明責任が生じる
出資者に対して、会社代表は経営者として、説明責任を負うことになります。決算報告書の作成はもちろん、どのような経営状況であるのか、定期的に報告しなければなりません。
経営権を握られる可能性
持ち株比率によっては、経営の実権を失う可能性もあり、また株主会社では株主の意見を無視することはできません。したがって、思うような経営が行えない可能性もあります。
組織構成や支配関係が変わる可能性
持ち株比率によっては、経営に口出しする株主も増えてきます。そうした構図は、組織構成や支配関係が変わる可能性を秘めており、会社全体が円滑に働かない可能性もあり、経営的にも支障が出てしまう恐れがあります。
配当金の支払い
株式などの出資に際しては、見返りといったリターンを支払わなければなりません。
状況によっては、更なる資金調達により、発行株式数や各株主の持ち株比率が、変わってくることも考えられます。
当然、配当政策を調整する必要性が生じてきますが、配当政策は経営に大きな影響を与えることも多く、配当金が増え過ぎてしまうと、会社の利益が減ってしまうリスクがあります。
具体的なリスクが見えにくい
総合的に見てみると、エクイティファイナンスにより株主が増えると、予想しづらい状況も発生します。
株主によっては、経営に一切口を出さないといったタイプの方もいらっしゃいますが、実際にどのような行動に出るのか、新株を発行してみなければわからないという一面があります。つまり、将来の影響を予測しづらいといった一面性をもつのが、このエクイティファイナンスの怖さです。
なんだか、かなりめんどくさそう !
ハハハ、確かに面倒臭いね。
こうしてみると、経営者は会社の経営ばかり考えることはできないよね。
出資してもらうということは、その出資者に対して責任が生ずるということだよ。
返済義務もないしね。
投資としての色合いが強いから、リターンが少なければ、それだけ不満も募ってくるよ。
そこで、安定した経営が求められるのね。
外野の声も聞かなくちゃならないし、いろいろ矛盾したこともあるけど、経営が上向きならば、特に問題が生じることはないよ。
なるほど ! よく勉強になりました。
まとめ
資本金を増やすことにより、企業の体質を強化していく事は、経営者にとって理想の構図と言えるでしょう。
資金調達方法として、返済の必要のないエクイティファイナンスは、まさに理想の資金調達方法と言えます。
しかし、メリットが多い一方で、様々なデメリットも存在しており、正常な経営に支障をきたしてしまう、といった可能性も否定できません。
以上、「エクイティファイナンス」のメリットとデメリットと様々な種類について解説…でした。
\ メリット盛り沢山 /