この記事でわかるポイント
- 銀行の裏事情について
- 銀行融資の金利の仕組みと金利の下げ方
- 金利の基準となるレートについて
よく色々なサイトで、銀行の融資は資金調達が難しいことや、審査がやたら厳しいといったことを目にします。
しかし実際には、中小企業の利用者も多く、つぶれてしまう銀行も見当たりません。確かに、民間のノンバンクなどに比べてみると、審査が厳しいのは事実ですが、決して融資が行いにくいわけではありません。
銀行での融資は、かなり難しいとよく耳にするんだけど、実際はどうなの ?
今でも多くの銀行があるという事は、それだけ需要が高いことを意味していると思わないかい。
確かにそうよね。
例えば、銀行から融資を受けている場合と、消費者金融からお金を借りる場合とじゃ、受ける印象が違ってくるよね。
例えば、銀行から融資を受けている場合と、消費者金融からお金を借りる場合とじゃ、受ける印象が違ってくるよね。
銀行の審査が厳しいことは確かだけど、貸し渋りを行っているのかどうかは別問題なんだ。
そこで今回は、銀行の裏事情である金利に関して、詳しく解説していこうと思う。
それはとても興味深いわね。
まずは、主な銀行業務について、説明していくよ。
よろしくお願いします ! 先輩。
目次
銀行の代表的な金融商品サービス
一般の方には、少し分かりづらいかもしれませんが、銀行も普通の企業のように、事業を行う会社の一つです。
銀行は金融機関として、様々なサービスを提供しており、それらの名称が金融商品として様々なサービスを私たちに提供しているのです。
銀行の金融商品は、各銀行により内容が多少異なってきますが、代表的な金融商品を挙げてみましょう。
銀行預金
銀行の最も身近な金融商品です。普通預金のほかにも、預け入れの期間が定められている定期預金や、定められた一定額を預金する定額預金などが知られています。
もともと、定期預金や定額預金は、利回りが良いことで知られていますが、現在はゼロ金利政策などの影響もあり、利子に対しての利点はほとんどありません。
金銭信託
銀行により「〇〇信託」などの名称があり、利用者になり替わり、銀行がお金の管理や運営を行う運用方法で、その収益を受け取る方式の仕組みになっています。
債券
債券の種類には、国債や地方債 / 社債 / 金融債などがあり、償還日となる満期日には、金利をプラスした収益が得られる仕組みになっています。
外貨預金
日本円を、ドルなどの外貨通貨に交換し預金するものです。外貨建てで預金することにより、大きな利回りが見込めるメリットがあります。
投資信託
運用のプロが投資運用し、出た利益によって、投資家へと還元されるという仕組みの金融商品です。
個人年金保険
保険料を積み立てることにより、将来年金として一定額を受け取れる金融商品です。
個人年金保険は種類も多く、変額制や定額制などもあり、受取期間が確定している「確定タイプ」一生涯受け取れる「終身タイプ」とがあります。
融資
融資とローンは、名称が異なるだけで、どちらも同様の借り入れといった手段になります。
銀行によって、ローンの名称は異なりますが、住宅ローン/マイカーローン /教育論 /カードローン /リフォームローンなど、様々なローン商品が知られています。
銀行事業は、預金や信託のように、お金を集める一方で、こうした融資を行うことにより利益を出しています。
一般的な企業が、商品やサービスそのものを販売しているのに対して、銀行は金利を含む手数料によって、金融事業全般を行っていることがお分かりいただけるはずです。
形も無いのに、商品なの ?
サービスとしての一つの形だね。銀行に限らず、あらゆる金融機関は、金融商品として取り扱っているんだ。
次に、今回の主題である、銀行の金利に関して解説してみよう。
銀行融資の金利は固定それとも変動金利 ?
融資やローンの金利には、固定金利と変動金利の二つのタイプが存在しています。
まず、固定金利ですが、借り入れの際にあらかじめ決められた返済期間で、金利が固定された返済方法となります。
そして変動金利ですが、設定された一定の期間で、金利が見直されるタイプの返済方法となります。
固定金利と変動金利が、どのような返済方法であるのかが分かったところで、まずは双方のメリットとデメリットを確認しておきましょう。
固定金利
メリット
金利そのものが固定されている為、収支計画が立てやすく、返済額が変化しないので安心感がある。
デメリット
変動金利よりも、金利が高めに設定されていること。
公定歩合によっては、基準金利そのものが下がることもあり、変動金利より返済額は多めになる可能性がある。
変動金利
メリット
固定金利に比べると金利が低めで、公定歩合による金利の上昇がなければ、返済額が低く抑えられる可能性がある。
デメリット
逆に公定歩合により、金利が上昇してしまうリスクがあり、将来の返済額が増えることによって、返済が苦しくなる可能性がある。
こうして比べてみると、金利だけを見ると固定金利よりも低く抑えられる為、変動金利が有利なように見えます。
ただしリスクも大きく、急激な金利の上昇によって、返済額が増える可能性があります。
では実際に、銀行から融資を受ける場合、固定金利なのか変動金利なのかを確認してみましょう。
これまでに説明した通り、融資といっても様々なタイプの融資がある事がお分かりいただけたかと思います。
しかし実情を見れば、銀行融資は基本的に、変動金利が採用されていることが多いのです。我が国の現状は、皆様方がご存じのように、ゼロ金利政策の影響で金利が0.1%の期間が、約20年ほど続いています。
しかし、景気が良くなれば物価も上昇していき、同時に金利引き上げ政策がとられることは間違いありません。
現在、国内は長きにわたってデフレ状態が続いていますが、逆にインフレになってしまう危険性もはらんでいますので、金利を徐々に引き上げていく必要があるのです。
この時、銀行が固定金利で融資していると、銀行側が逆ザヤの状況に陥ってしまい、負債を大きくしてしまう危険性があります。
その為に、ほとんどの銀行融資は、基本的には変動金利が採用されることになりました。
金利には、固定金利と変動金利があるのね。
銀行の融資は、基本的に変動金利を採用していることが多いんだけど、金融公庫などは利益の追求が必要ないから、固定金利にしていることがほとんどだよ。
次に、銀行金利の仕組みを見ていこう。
短期プライムレートと長期プライムレート
銀行融資の金利は、ただやみくもに設定されているわけではなく、様々なデータや数値をもとに定められることになります。
その中でも、基準になる金利とされているのが、「短プラ」と呼ばれる短期プライムレートです。
初めて耳にする、という方が多いかと存じますが、簡単に言えば、短期融資の実行の際に、銀行が企業に対して設定する「最優遇金利」の事をいいます。
業界では、短プラと呼ばれることが多く、最優遇金利とは銀行が企業に融資する際に適用する、最も優遇された金利を意味します。
正しい、どの企業でも、最優遇金利が適用されるわけではなく、企業として銀行から見て、最も信用度の高い優良企業とみなされた場合、初めてこうした優遇措置が受けられることになります。
短プラは、銀行融資の金利として、画一的なものではなく、各銀行ごとに異なるのが一般的で、銀行が融資を決める時に、その基準として設定していることがほとんどです。
では、この短プラは、具体的にどのように定められているのでしょう。短プラの大まかな計算方法は、預金による調達コスト+銀行の利ざやを算出し、各銀行が独自に定めるのが一般的です。
その中で、銀行が融資を行う際には、短期プライムレート+α=融資金利といった計算式で、最終的な金利が決定されることになります。
この+αですが、これは銀行に対するリスクをあらわすもので、具体的に言えば融資を受ける企業側の信用力を示しているものです。
ではさらに、具体的にその例を簡単に解説してみましょう。例えば大手企業ですが、上場企業が多いなか、企業としての格付けはかなり高いといえます。
逆に中小企業は、格付けとしてはかなり低く、同時に信用力も低いとみなされるのが一般的です。
大手企業 | 貸し倒れリスクが低い | +αは小さい | 融資金利は短プラに近い金利が受けられる |
中小企業 | 貸し倒れリスクが高い | +αが大きい | 融資金利は短プラより高い金利が設定される |
このように、審査による格付けにより、+αの数値によって金利が決定されることになります。
一方で、貸出期間が1年以上のものは、長期プライムレートと呼ばれますが、現在では銀行融資に際して、金利との連動制はほとんどありません。
なるほど。短期プライムレートでの融資が普通なのね。
銀行融資の金利には、もう一つスプレッド融資というものがあるんだ。
そして、そこで重要なのが、資金調達の必要性ということになるね。
スプレッド融資と短期プライムレート融資の違い
銀行融資を理解するうえで、スプレッド融資の事をまず理解しておきましょう。
ご存じのように、銀行は預金や信託/債券の販売など、様々な金融サービスにより資金を集めています。
こうした資金は、融資として貸し出され、それに伴う手数料などが銀行の利益になっています。
しかし、当然の事ながら、融資額が巨額になってしまうと、資金が足りなくなるといった状況が生み出されます。
しかし、ご安心ください。
銀行間では、こうした資金不足した状況下において、互いに資金を融通し合うといったシステムがあります。
これは、銀行間取引とされるものですが、銀行間取り引きにおける金利は「TIBOR」と呼ばれているものです。
TIBORは、東京市場における銀行間取り引きの金利のことで、Tokyo Interbank Offered Rate、略して「タイボー」と呼ばれています。
TIBORによる銀行間融資には、1週間/1ヶ月/2ヶ月/3ヶ月/6ヶ月/9ヶ月/1年物などがあります。この時、適用される金利は、銀行の間で取引する調達コストと銀行の利ザヤ、つまり調達金利+スプレッド=融資金利となります。
スプレッド融資は、このTIBORが元となるもので、銀行間取引による資金調達が原資となっているわけです。
特徴としては、短期プライムレート融資よりも低金利で、特に大手企業向けによく行われている融資のタイプです。
つまり、短期プライムレート融資が、預金などが原資になっているのに対して、スプレッド融資は銀行間取引による、資金調達が原資となっているのが大きな違いです。
では、短期プライムレート融資と同様に、大手企業と中小企業で金利の違いを見ておきましょう。
大手企業 | 信用度が高くスプレッド融資が受けやすい。 |
中小企業 | 信用度が低い為、短期プライムレート融資の方が受けやすい。 |
ただし、中小企業が、スプレッド融資を受けられにくい、というわけではありません。スプレッド融資は、一定の信用度を指標にしている為、財務体質が良い優良企業であれば、スプレッド融資による低金利の資金調達ができる可能性があります。
基本的には、短プラ融資もスプレッド融資も、調達コストに銀行の利ザヤを載せたものが、融資金利という点ではどちらも同じです。
つまり、格付けが良く、財務体質も健全であり、取引実績も豊富な企業ほど、低金利による優遇措置が受けられるということになります。
なるほどね。銀行の金利は、こうして決められていたのね。
それからもうひとつ、銀行融資の受けやすさを知るうえで、決定的な指標があったんだ。
それは興味深いわね。
銀行からの信用力の評価と融資の金利要素
銀行融資において、企業の格付けは、融資する側の銀行のリスクを表すものであり、最終的な金利の決定にも大きく影響を及ぼすものです。
銀行融資は、とかく審査が厳しく、融資が受けにくいと言われていますが、決してそのようなことはなく、実際に多くの中小企業も銀行融資を得て事業を行っています。
では、企業の格付けとは、具体的にどのようなものなのでしょう。
実は、銀行が独自で行う企業の格付けは6段階に分類されています。
銀行の6段階の企業格付け
- 【ランク1】正常先
- 【ランク2】要注意先
- 【ランク3】要管理先
- 【ランク4】破綻懸念先
- 【ランク5】実質破綻先
- 【ランク6】破綻先
【参考記事】銀行のスコアリング評価と信用格付評価を上げるためできる5つのこと
このように、ランク1を最上ランクとして、格付けが下がるごとに銀行の信用度は低くなっていくことになります。
つまり、銀行融資を受けるにあたり、最上位ランクの正常先である事が、融資を受ける条件となるわけです。ここでもう少し、正常先について詳しく説明しておきましょう。
正常先は、銀行の信頼度が最上位であり、業況良好で財務内容に問題が無い、と認められることが大前提です。
具体的な経営状況は、決算書がその証拠書類となりますが、当期利益がプラスとなっており、純資産の部にはマイナスがない状態を満たしていることが条件です。
ただし、決算に赤字があったとしても、一過性のものであり、個別に十分な余剰資金や資産の保有が認められ、債務の返済能力に問題がないと判断できる場合は、この限りではなく、正常先とみなされることもあります。
信用格付けの評価方法は、100点満点で評価されるのが通例で、決算書の数値を使って行う定量評価が80点、定性評価及び実態評価20点の二つの要素が加味された評価点となります。
定性評価及び実態評価は、決算書の数値では評価しにくい要素および、返済潜在力の評価のことです。
これを見てお分かりのように、80点と配点の多い定量評価が自動で評価で、7割方から9割方が決定されると認識しておいて下さい。
つまり、銀行の評価において、決算書の存在はかなり比重の高いもので、企業の格付けや金利は、この決算書で決まっているといっても過言ではないわけです。
銀行融資を受けるに際して、決算対策を事前に講じておくことが、格付けの評価を上げることにつながり、融資も行いやすくなっていきます。
銀行の融資は、格付けによって評価が決められていたのね。
銀行の審査が、厳しいといわれるのも納得だろ ?
じゃさ、決算書が提出できない個人事業主は、かなり不利よね。
そのことはないよ。融資を受ける上で、必要な書類はまだまだあるし、特に計画書の提出は、融資に与える影響が意外と大きいものなんだ。
銀行を納得させる書類を、用意するということかしら ?
担当者も人間だから、納得させる書類の提出は、好感度アップには必要不可欠なものだよ。
なるほど、先輩 ! 勉強になりました。
まとめ
銀行融資の審査は、非常に厳しく分かりづらいものとされてきましたが、こうして解説してみると、どのような判断基準で金利を設定しているかがよくわかります。
銀行融資を、有利に進めていく為には、決算対策が大きな意味をもつことがわかりましたので、事前に決算書の準備を進めておくとともに、経営計画や業績の経緯を説明できる書面を、添付しておくとよいでしょう。
以上、銀行融資の金利はこうして決められていた…でした。
\ メリット盛り沢山 /