この記事でわかるポイント
- 2020年4月1日から大幅な民法の改正が行われた
- これまでのファクタリングが根幹から変わってくる ?
- 将来債権を利用したファクタリングが可能になってくる !?
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、オリンピック年度となる2020年4月に民法改正が施行されました。
【参考サイト】法務省:民法の一部を改正する法律(債権法改正)について
これまでも、様々な法律が改正された中、どうしてこのたびの民法改正が大きな注目を集めているのでしょうか。それは、民法成立が約120年前のことで、法律の内容が時代にそぐわなくなってきた、というのが大きな理由です。
実はこの民法改正、なぜ注目を集めているかといえば、ファクタリングに大きく関わる債権法の改正が行われるからです。
目次
2020年4月1日から施行された「民法改正」とは
いよいよ、民法が改正されましたね。
そうだね。業界にとっては、待ちに待った朗報であることは間違いのないところだよ。
ところで、ファクタリングに関連性があるのが債権法ということなんだけど、具体的にはどのように変わっていくのかしら。
それを説明する前に、民法の改正の経緯を簡単に説明しておこう。
分かりやすく説明、よろしくお願いします ! 先輩。
日本の主だった法律は、敗戦後の戦後まもなくGHQの指揮下の元、民主主義国家の礎として作られたものです。もちろん、それまで現存する法律もあり、そのほとんどが明治維新以降に作られたものでした。
民法とは、私法の一般法について定めた法で、私人間の権利義務関係を規律する法律のことを指します。一般的に知られるのが民法の三原則で、これを権利能力平等の原則/所有権絶対の原則/私的自治の原則としています。
しかし、これらの法律は、100年以上も前に作られていることから、明記されていない部分は法的な解釈も難しく、民法学者や法曹実務家が解釈で補っていました。今回の施行は、こうした現代社会になじまない、あるいは電子化など新たな分野のルールに対応する為の法改正となっています。
ここで主だった改正の内容を把握しておきましょう。
まず、法定利率が年3%に定められたことです。これまでは、標準となる法定利率が年利5%とされていました。現在の日本は、バブル崩壊後デフレの影響もあり、預金しても利率が低く、逆に借り入れの場合は金利が高すぎるという不具合がありました。とりあえず今回3%となりましたが、景気の動向によって今後変化するものとみられています。
次に、消滅時効期間の変化です。これまで、一定期間行使しなかった権利に関して、時効の起算点が無条件で10年とされていたのが、債権者が権利を行使できることを知った時から、5年間といった時効期間が新たに加えられました。
そして、大きく注目される点が、個人根保証契約では極度額を定めなければならなくなった事です。これは、保証した人の責任を保護するもので、簡単に言えば、契約上限度額を定めなければ無効となると定められました。
今後は、不動産賃貸や根保証契約など、詳しくその内容を見極めて契約する必要が出てきます。
なるほど。保証契約のあり方も変わってくるということね。
そうだね。あまりに高い限度額が設定されると、保証人になる人も少なくなるデメリットが指摘されているよ。
うーん、そう考えると法改正すべての事案が、良いことずくめという訳ではないのね。
ここでは、ファクタリングに着目して、大きな焦点となっている債権譲渡に関する改正を見ていこう。
ファクタリングで最大のネック ! 債権譲渡禁止特約の見直し
経営や経理に携わる方であれば、債権譲渡禁止特約というものをご存じのことでしょう。
債権とは、債権者が特定の債務者に対して、一定の行為を要求する事のできる権利のことで、ビジネスの上では金銭の支払いに関して利用されることが多いものです。
債権にも様々なタイプがありますが、ビジネスに多く利用されるのが、金銭の支払いを目的とする「金銭債権」となります。
ファクタリングは、こうした債権を買い取り現金化するものですが、これらの債権に債権譲渡禁止特約が盛り込まれている場合、基本的にはファクタリングを行うことができませんでした。
債権譲渡禁止特約は、売掛先の会社などが取引の際に契約事項に盛り込むもので、第3者に債券が移るのを阻止する為のものです。ではなぜ、わざわざ債権の譲渡禁止を契約に盛り込むのでしょうか。
それは、第3者に債権が渡る事によって、不特定の人物が関わって来る事を防ぐ意味で契約に盛り込むのです。例えば、債権が闇金や反社会勢力団体などに譲渡された場合、売掛先企業に対して、様々なトラブルが起こることが予想されます。
債権譲渡禁止特約は、こうした意味でも、売掛先企業を守る意味として使われていました。
しかし、債権譲渡禁止特約があることで、ファクタリングを行うことができません。こうした意味でも、今回の民法の改正で、債権譲渡禁止特約の見直しが行われるようになってきたのです。
ただし、全面的に債権譲渡禁止特約が、完全に撤廃されるわけではありません。とはいえ、いくつかの制約こそありますが、債権法の改正によって債権の譲渡禁止特約の無効と対抗要件が明記されました。これにより以前よりもファクタリングが行いやすくなったことは間違いありません。
債権譲渡禁止特約は、会社間で取り交わされる契約の事だよ。
この第3者に債権が移るのを阻止する為というのが目的なのよね。
そうだね。つまりは、売掛先企業の自衛策というわけなんだ。
債権譲渡禁止特約付きでも、ファクタリングができるという事 ?
いや、2020年4月以前の過去のケースについては、基本的に第3者に譲渡することはできないよ。ただ、2020年4月以降は、債権譲渡禁止特約を付与しない契約が増えてくると言った方が分かりやすいね。
なるほど。
そこで、この債権法を改正によってファクタリングがどのように変わるのかを説明しておこう。
債権法改正によりファクタリングがどのくらい変わってくる ?
ファクタリングの利用者はそのほとんどが企業の経営者たちです。少額にしろ、大きな額面でも、ファクタリングは資金調達を手軽に行える方法として、以前よりも随分と認知されてきました。
気になるのが、オリンピックの年2020年4月から施行される民法改正、その中でも債権法改正による施行なのではないでしょうか。内容は把握していても、その実態は具体的にどのように、ファクタリングに関して有利に働くかという点でしょう。
例えば、現在一番利用頻度の高い2社間ファクタリングですが、メリットとして売掛先に知られず債権の売却が可能で、融資とは異なり早ければ即日での現金化が可能だというところです。
しかし、一番のネックとして、債権譲渡禁止特約付きの債権では、ファクタリング会社が受け付けてくれず、取引ができませんでした。
今回の債権法改正により、債権譲渡禁止特約付きの制約が無くなった為、こうした債権であっても、基本的にはファクタリングが可能となったわけです。
これは、いわば3社間ファクタリングと、同条件ともいえるもので、つまりはこれまで、手数料の高さで懸念されていた2社間ファクタリングの手数料が、引き下げられる可能性を示しています。
しかも、スピード感は、3社間ファクタリングよりも速いわけです。債権法改正により、2社間ファクタリングは、かなりの恩恵を受けそうですが、デメリットが全く無いわけではありません。
厳密に言えば、債権譲渡禁止特約が取り払われるのは2020年4月以降の債権で、それ以前の債権に関しては無条件というわけにはいかないのです。
さらにデメリットとして債権譲渡通知が必須となってしまいますので、これまでの2社間ファクタリングの秘匿性は全く無くなってしまいます。
なるほど、債権譲渡禁止特約の撤廃って、こういった意味なのね。でもそうなると逆に気になるのが、売掛先企業の自衛策が無くなるわけよね。
そうなんだけど、その点はきちんと保護されるようになっているんだ。
債権譲渡禁止特約が撤廃されると売掛先の安全性はどうなる ?
今回の民法改正で主な変更点となるのが以下の項目です。
民法改正の主な変更点
- 定型約款に関する規律と瑕疵担保責任の廃止
- 契約不適合性の重視
- 消滅時効制度/法定利率/保証制度の見直し
そして、不動産賃貸借契約における、敷金の返還や原状回復義務の明確化の取り決めが行われました。この中で、ファクタリングにおいて関係性の深い注目点に債権の譲渡性の変更があります。
平たく言えば、2020年4月1日以降、債権譲渡禁止特約を盛り込むことができなくなるわけですが、ファクタリングを行う利用者にとってはかなりの優位性があります。
しかし、ここで気になる点が一つ。
これまで、売掛先企業は、悪意のある第3者に債権が譲渡されないよう、債権譲渡禁止特約を盛り込んでいたわけですが、これが全面的に撤廃されると、トラブルが発生しないか不安に感じるはずです。
では、債権譲渡禁止特約が撤廃されると、売掛先企業の債権に関する安全性はどうなるのでしょう。厳密に言えば、このたびの民法の改正により、 譲渡禁止とされてきた債権は、譲渡制限債権へと変わります。
つまりこの制限とされているのが、売掛先による対抗措置の存在で、債務者は譲渡人に弁済することで、譲受人への対抗が可能となりました。かいつまんで言えば、債権譲渡禁止特約がある理由は、不特定の第3者に債権が渡る事を懸念したものです。
実際に、悪意をもった利用者が、複数のファクタリング会社に二重譲渡を行った場合、大きなトラブルに発展してしまいます。
しかし、今回の譲渡制限債権により、売掛先企業は買掛先企業に対して通常通り支払いを行えば、ファクタリング会社に対して対抗措置を取れるようになりました。
いずれにせよ、譲渡禁止の債権は取引先との契約違反となりますので、よく理解したうえでファクタリングを利用する必要があります。
ああそうか。対抗措置が行えるわけね。
そうだね。だからこそ、売掛債権の譲渡契約がかなり重要なファクターになってくるね。
将来債権を利用したファクタリングが可能になる ?
まず、将来債権のことをよく理解する為、その性質がどんなものであるのかをよく見極めておく必要があります。
通常、ファクタリングにおいては、売掛金が発生している状態、つまり取引が確定している売掛債権の譲渡売却を行うものです。将来債権とは、その時点では売掛債権が発生していなくとも、将来的にみて売掛金が発生する状態のことを指しています。
将来債権には、基本的には特定の条件があります。つまり、取引を行う会社間で、長期にわたって取引を行っていた実績、あるいはこれに準ずる契約が交わされている事が必須条件となります。これまで、将来債権に関しては、過去において発生した債権に限ったもので、将来発生が確実な債券であっても取引が不可能でした。しかし、このたびの民法改正によって、その状況は大きく変わることになります。
2020年4月に施行される債権法の改正では、改正案466条で「将来債権の譲渡性」が明文化されました。その記された内容の一部を抜粋すると「債権が現に発生していることを要しない」といった文言が加わりました。
このように、将来債権の譲渡がはっきりと明記されたことで、ファクタリングにおいて、事実上将来債権の売却が可能となったわけです。
実はこの、将来債権の譲渡が可能になった経緯は、1999年に行われた診療報酬に関する裁判がありました。判決は、将来債権の譲渡が有効だと認められ、これに伴って今回の民法の施行で、将来債権譲渡の有効性が認められたわけです。
今回の法改正の施行により、将来債権を有効に活用できるようになりました。メリットとして考えられるのが、商品やサービスが未納であっても、また債権の締め日前でもファクタリングの利用ができるようになりました。
売掛金が発生していなくてもファクタリングが出来るって、利用者にとってかなり有利なんじゃない ?
そういう事になるね。単純にこれまでの資金調達が、2倍にも3倍にもなるってことだから。
でも当然デメリットもあるのよね?
あるね。そこで次の項で、将来債権ファクタリングにおけるメリットとデメリットを見ておこう。
注意しておきたい将来債権におけるメリットとデメリット
ファクタリングを利用された経験のある方ならご存じのように、ファクタリングは融資やローンなどとは異なり借入金とはなりません。
2020年4月の民法改正により、将来債権が有効に活用できるようになりました。これまで、発生している債権にのみファクタリングが適用されていましたが、将来債権が活用できるようになり多くの経営者がこれを朗報として受け止めているのではないでしょうか。
しかし、この将来債権ファクタリングにも、メリットと同様にデメリットが存在していることを忘れてはなりません。
将来債権のメリット
まずメリットですが、将来的に回収が見込める債権を利用できる為、これまで以上に資金調達可能額も増えることになります。また、ファクタリング会社に対して一括払いではなく、分割払いも可能となります。
というのも、売掛先の会社から、支払いが行われるのが月ごとになる為、ファクタリング会社もこれに対応することが考えられるからです。
さらに、貸し付けではありませんので、分割払いで支払いを行う際には、分割手数料などが発生する事はありません。
将来債権のデメリット
デメリットとしては、これまでと同様に売上金の前倒しを行うことになりますので、経理面での管理がこれまでよりも重要となってきます。
そして注意点ですが、将来債権に関しては取引実績と取引年数、そして毎月の売掛金の金額が一定かどうかが重要なポイントとなってきます。
つまり、ファクタリングの審査においてこれらの項目が重要視される為、取引先と契約歴が浅い、あるいは毎月一定の売掛金額でない場合は審査に落ちてしまう可能性があります。
またこれまで通り、取引先の企業の信用度以外にも、支払い実績が重要視されることは間違いありません。
デメリットの方が、少ないように感じるけど ?
ここには説明されていないけど、将来債権はあくまでも入金の見込みがあるというだけだから、ファクタリング会社にとってはリスクは大きくなるよ。
という事は ?
「リスク=手数料UP」という図式が成立するね。
良いことずくめでは無いけど、資金調達といった面ではかなり優秀よね。
そうだね。だからこそファクタリングは、これまで以上の価値を持つことになるね。
まとめ
2020年4月の民法改正後は、これまで一部の会社で利用しにくかったファクタリングが、今まで以上に利用しやすくなることでしょう。
特に、譲渡禁止特約の撤廃など、買掛先及び売掛先互いにデメリットが無くなってきた為、更なる活発なファクタリングの利用が予想されます。
事業拡大等、資金調達のひとつとして覚えておくとよいでしょう。
以上、【2020年最新版】民法改正後のファクタリングはどう変わる ?…でした。
\ メリット盛り沢山 /