この記事でわかるポイント
- クリニックと病院はそれぞれに役割があった
- 開業するなら様々な制度を活用しよう
- クリニックの科目によって資金調達は変わる
一般の人から見ると、医者はステータスの高い職業の一つですが、難関である医大の受験合格、さらには医師免許の習得を経て、研修医へとその道のりは長いものです。そして、同じ医師でも、大学病院や研究機関へ身を投じる方がいる一方で、一国一城のあるじとして自分の腕を生かし、開業医を目指す方も多くいらっしゃいます。
やっぱり、お医者さんはあこがれの存在よね !
コンパなんかで、女の人は医者を見ると、目の色が変わるって言うけど。
そうね、普通車と高級外車の違いくらいはあるわね。
確かに、高所得者には医師は多いけれど、それはほんの一部なんだよ。
狙うなら、やっぱり開業医かしらね。
開業するのは、そんなに簡単じゃないけどね。
その辺のところを詳しく知る為にも、今回はクリニック開業について解説してみよう。
ああ、楽しみ ! よろしくお願いします、先輩。
まずは、基礎的なところから、病院とクリニックの違いについて説明するよ。
目次
病院とクリニックは別もの ?
同じ医療系の施設でも、病院とクリニックとがありますが、以外にその差がどこにあるか、ご存じない方が多いのではないでしょうか。近隣の医療施設をのぞいてみると、病院やクリニックのほかにも、医院や診療所などの名称もよく見かけます。これらの名称の違いは、いったいどこにあるのでしょう。
実は、医療法によると、こうした医療機関は、病院と診療所に分けられているということです。この医療法では、病床数により区別されており、20床以上が病院、そしてそれ以下が診療所と区別されています。
つまり、病床数が19以下または、無床である事が診療所の条件となっていたのです。しかし、あくまでも、こうした名称は屋号の一つといった考え方もある為、呼称としては病院あるいは、クリニックのどちらも使って良いとされています。
しかし、病院として登録されている場合、先に述べた通り病床数など、様々な制限があります。例えば病院の場合、第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域、工業地域並びに工業専門地域には設置できないことになっています。クリニックの場合、こうした制限がありませんので、自治体などの条例の定めのない限り、どこの場所でも営業が可能なのです。
スーパーのテナントやマンション / ビル店舗などに、クリニックや医院などが多いのは、こうした理由からだったのです。また、病院の制限として、医師や看護師/薬剤師などの最低配置人数に、特定の制限が設けられていますが、診療所の場合は医師が一人といった以外には、特に制限は設けられていません。
このように、病院とクリニックには、病床数による規模の制限が設けられています。つまり、簡単に言えば、比較的規模の小さな医療機関が診療所であり、クリニックや医院なども診療所として、扱われているということです。
また、開業医とは、大学病院や大規模医療機関で従事する勤務医の対義語で、自らがクリニックや病院などを経営する医師のことを指していいます。先に述べた通り、総合病院など大きな要因と比べて、クリニックなどは制限が少なく、比較的規模が小さくて良い為、開業医を目指す意思も多くいます。
これはほかの業種に比べ、医療機関は設備資金が高額になりやすい為、規模の小さなクリニックの方が、開業しやすさに差があることが大きな理由です。
へーえ、規模の違いによって、病院の名称が異なっていたのね。
病院という名称を、使ってはならないということは無いんだけど、いわゆる同業種の区分わけ程度に考えておくといいよ。
そうよね。
いわゆる診療所は、独立した開業医なんだけど、重度の疾病や難しい病気を判断して、設備の整った病院に紹介してくれる末端医療の役割も果たしているんだ。
なるほど ! 勉強になります。
まずは、クリニック開業に関しての解説ということで、専門科目ごとの必要な事業資金の目安を説明していこうと思う。
開業時の専門的な科目ごとの初期投資の目安
一昔前までは、医者といえば、総合的な医療従事者としての立場でしたが、高度な医療が進むに従って、専門性を帯びてくるようになってきました。現在では、小児科を除き、それぞれの分野の専門医として、活躍される医師がほとんどです。
つまり専門医とは、医学の高度化及び専門化に伴って、診療科や分野の専門性をもつ医師の事で、それぞれに細分化された区分が設けられています。したがって、開業する際にも、それぞれに専門性をもつ特徴がある為、おのずと開業資金も異なってきます。そこで、各診療所の、開業時にかかる費用の目安をご紹介しておきましょう。
内科
クリニックでも、かなり件数が多いのがこの内科ですが、最近ではさらに細分化され、糖尿病専門や消化器病専門クリニックなども見られるようになってきました。
主要な設備 電子カルテ/レセコン/超音波診断装置/心電計/X線撮影装置/内視鏡など。
資金の目安 約1,800万円~3,500万円程度
整形外科
大まかに言えば、骨と筋肉を診る診療科がこの整形外科です。診療とともに、リハビリを実施するところも多い為、医療事務や看護師に加えて、放射線技師や理学療法士及び、リハビリ助手などの職種と設備も必要で、スタッフが多くなる傾向があります。
また、リハビリの専門施設も必要な為、比較的規模が大きくなりやすいのも特徴です。
主要な設備 電子カルテ/レセコン/X線撮影装置/超音波検査装置/骨密度測定装置/低周波治療器/牽引器/平行棒など。
資金の目安 2000万円以上
眼科
眼科は比較的、医療設備が少ないように思われがちですが、眼病手術などの設備が必要な場合、開業費が高額になってきます。また、目が不自由なお年寄りも多く、車いすや杖をついた方に対応できるよう、バリアフリーが推奨されています。
主要な設備 電子カルテ/レセコン/スリットランプ/オートレフケラトメータ/自動視野計/眼底カメラなど。
資金の目安 約2,000万円~4,500万円
皮膚科
近年では、アトピー症の患者も増え、需要も多いのが皮膚科の特徴です。年齢層も幅広く、男女問わず子供から年配の方まで来院される方が多く、シミの除去などの施術も増えてきています。標準的設備はあまり多くありませんが、各種レーザー機器などを導入する場合、負担費用も高額になってきます。
主要な設備 電子カルテ/レセコン/顕微鏡/無影灯など。
資金の目安 約500万円以上
耳鼻咽喉科
比較的患者層は、高齢者よりも小児が多く、ほかのクリニックと比べてみても、患者数がかなり多いのが特徴です。したがって、いかに医師の診療動線を、短く設計できるかがポイントとなってきます。
主要な設備 電子カルテ/レセコン/耳鼻科診療ユニット/ネブライザ/X線撮影機器/聴力検査室/専用内視鏡など。
資金の目安 約2,000万円以上
精神科/心療内科
最近目立って多くなってきているのが、いわゆる心の病、精神性疾患の病気にかかってしまう患者さんたちです。基本的には薬の投与と、心のケアのサポートが中心ですので、全クリニックの中でも、比較的設備は安価で済みます。また、精神科医の運営に加えて、内科などほかの科目を併設するクリニックも増えてきています。
主要な設備 電子カルテ/レセコンなど。
資金の目安 約400万円以上
小児科
乳児から未成年者まで、幅広く対応するのが小児科の特徴です。総合的な診断が必要とされ、水痘/おたふくかぜ/麻疹/風疹など感染性の強い病気も多い為、隔離室まで誘導できるよう、他の患者と接しないような設計が必要となります。また、親御さん同伴で来院されることが多く、駐車場なども確保しておく必要があります。
主要な設備 電子カルテ/レセコン/X線撮影装置/自動現像機/超音波診断装置/心電計など。
資金の目安 約1,000万円以上
産科/婦人科
いわゆる女性の病気に特化しているのが、この産婦人科と呼ばれる診療所です。最近では、女性医師も多く、トータルケアの面でもその安心感からか、支持されるクリニックは多いと言えるでしょう。最近では、インターネットの普及もあり、サイトから事前予約できる利用者も多く、ホームページの作成は戦略的にも重要と言えます。
主要な設備 電子カルテ/レセコン/コピー複合機/診察用ベッド/イス/内診台/X線撮影装置/自動現像機/超音波診断装置/コルポスコープなど。
資金の目安 約2,000万円以上
このように、診療所といっても、診療科別で必要な事業資金も異なってきます。また最近では、新型コロナウイルスの影響もあり、院内感染を防ぐ為の防護策も必要となってきます。来院する患者はもちろんの事、そこに従事する医療関係者たちの安全を図るとともに、施設内の安全性を高める設備も、重要なポイントとなっています。
整骨院とかも、クリニックとか医院の名称がついているわよね。
確かに、今回は医師免許を持つ、開業医という分類で説明しているよ。
かなり、対応している診療科目で、必要な開業資金というのは変わってくるのね。
ということは、費用をかけた病院の方が、儲かるってことかしら。
ハハハ、一概には言えないね。
適当といわれるかもしれないけど、儲かっているところもあるし、赤字のクリニックももちろんあるよ。
むう、判断が難しいわね。
開業するだけでも大変だからね。
そこで、資金調達に関する問題として、借り入れのポイントを説明しておこう。
クリニック開業資金は余裕をもった借り入れが大切
皆さんは、借金と聞くと、どのようなイメージを持たれているのでしょうか。ローンも立派な借金のうちですが、一般論として個人的な借金には、あまり良いイメージが無く、借金が悪いものと捉えがちな方も多いかと存じます。確かに、遊戯や博打などなどの借金は、悪いものと言えますが、あくまでも借入金は個人のものであり、事業での借入金とは異なってきます。
では、個人での借金と、事業で必要となる借金とでは、どこが異なっているのでしょう。事業で必要な借入金は、事業資金として扱われています。借り入れの主な目的は、事業を拡大し充実させていくことにあり、個人の借入金は自身や家族の為の借金がほとんどです。事業での借入金は、いわば投資のようなもので、借入金を投入することにより、より一層売り上げなどの利益を生み出す楽しみがあります。
つまり、事業資金の借り入れは、負債としてのマイナスのイメージではなく、逆に将来を見据えたプラスのイメージを持ちます。
最近では、断捨離などと、節約や契約が推奨されていますが、事業を継続するにあたり、こうした考えはかえって、マイナスに転じてしまうこともあります。というのも、無理して借入金を減らし経費を抑えたとしても、肝心の事業資金の不足により、経営難を引き起こしかねません。こうした状況下では、売上や利益が出る前に、クリニックの運営継続が困難になってしまい、借入金自体がすべて無為なものになってしまう恐れがあるからです。
また、借金は悪いものといった考え方から、極端に返済期間を短くしてしまうのも考えものです。なぜなら、返済期間を短くすると、月々の返済額が大きくなり、経営を圧迫してしまう恐れがあるからです。したがって、可能な限りゆとりをもった返済期間を設けることにより、より緩やかな返済を可能にするのです。
これまでに説明した通り、クリニック開業にはかなり高額な費用を要します。場合によっては1億円を超えることもあり、なるたけ負債を減らそうと、ギリギリの借り入れを行う方も多いかと思います。しかし借入は、開業時にできる限り、多く借りた方がいいとされています。
なぜなら、ゆとりを持った医院運営を行う上で、重要になってくるのが運転資金の重要性だからです。開業時の運転資金は、数カ月先の赤字をカバーするものです。つまり、余裕のある運転資金は、早期に経営を軌道に乗せることができる、大きな要素だったのです。
なるほど、あまり借金したくないから、ギリギリ借りるのは、かえってマイナス要素が大きいのね。
必ずしもそうとは言えないけど、開業したての頃は資金難に陥りやすいから、余裕を持っておくことが大切なんだ。
そういえば、診療報酬なんかは、かなり遅れで入金されるのよね。
つまり、そういうこと ! 下手をすると2カ月近く収入が無いから、余裕をもった運転資金が必要なのさ。
そしてさらに、その運転資金を、効率よく使っていくことこそ大切なんだ。
運転資金をうまく使いこなしてアピール
一般論ですが、医者はステータスが高く、高学歴高収入の職業として見られる事の方が多いようです。確かに、医師といった職業は、社会的地位も高く、あこがれの仕事の一つですが、すべての開業医が儲かっているわけではなさそうです。
というのも、医療機関でも少なからず倒産はあり、2018年のデータを参考にすると約40件の倒産件数となっています。その中でも、クリニックや歯科医院などが、ずば抜けて多いのがその特徴です。古今より、医者と坊主は食いっぱぐれがないと言われますが、決してそのようなことはなく、医師免許といったステータスを有していても、時代や経済情勢などから、上手に立ち回る事ができなければ、職を失ってしまうこともよくあることです。
では、なぜ開業医でも、事業に失敗してしまうのでしょうか。これは、患者数に大きな関連性があり、開業医の場合、年収は患者数で決まるともいわれています。つまり、患者数の減少が、事業の継続を致命的なものにしているといえます。
例えば1日の患者数ですが、その平均診療単価は、約5,800円相当とされています。これを年収に換算すれば、少なくとも1日の患者数が5人増えれば、クリニックの収益が約590万円増えることになります。逆もしかりで、患者数も減少は、直接医療経営の減収を招くことになります。
特に、開業したてのクリニックは認知度も低く、患者が予想よりも集まらないということがあります。それまで勤務医で、どれだけ経験豊富で患者の評判が良かったとしても、周知されなければ集患にはつながりません。
そこで注目して欲しいのが、運転資金の利用方法です。一般的な考え方として、クリニックなどの運転資金は、固定費や人件費/薬品/必要機材/備品などの購入費に充てられますが、使い道はそれだけではありません。
なぜなら運転資金は、事業を継続するにあたり必要な資金であり、広告宣伝費も運転資金として扱うことができるからです。開業時に起こりうる失敗として、こうした宣伝をせず、思うように集患ができないといったことがあります。
しかし、借入金を上手に活用することにより、看板/新聞折込/内覧会等にお金をかけ、しっかりとアピールする事は、認知度を高めるとともに集患数を増やすことにつながるのです。もちろん、クリニックのホームページも立ち上げ、院内をアピールする事は専門性や医師の人柄を知る上で、必要不可欠なことです。
そういえば、美容関連のクリニックは、かなりネット広告なんかが多いよね。
クリニックといえども、独立した事業だから。それなりの売り上げが無ければ、事業の存続自体が危ぶまれるからね。
そこで、さらに事業として軌道に乗せる為には、様々な支援サポートを活用すると効率的だよ
クリニックを開業するなら支援サポートを利用しよう
開業医を目指すならば、まずは資金の調達方法を探る必要があります。ほかの職種と同様、これから起業するという個人事業主や起業家は、金融機関の利用実績が無いに等しく、民間金融機関の融資は非常に審査が厳しいと言わざるをえません。
そこでお勧めしたいのが、クリニック開業支援サポートを利用するといった方法です。一般的な銀行などの金融機関は、先に述べたように、信用度がゼロの状況で借り入れを行わなければならない為、うまく融資が成功したとしても、希望額に届かないまたは、利息が高くなるといったデメリットがあります。
しかし、クリニック開業支援サポート機関であれば、医療に特化した事業を展開していますので、非常に借り入れが行いやすいといった特徴を持っています。
こうした支援サポート会社を選ぶ目安としては、豊富な取引実績があるか否かという点です。また、サポートサービスの充実度も、見逃せないポイントと言えるでしょう。こうした医療専門の支援サポート会社は、以下のような点で専門性に優れた面を持ちます。
- 医療コンサルティング及び、コンサルティングネットワークを有していること
- 開業資金調達に適した融資が行えること
- 融資以外にリース業務も行っており、理想の医療機関運営を支援できること
- 開業に適した候補地をあっせんしてもらえること
- そのほかのサービス支援が充実しており、開業からすべてをバックアップできること
この中で、特に着目しておきたい点は、コンサルティングネットワークの存在です。また、豊富な取引実績は、ノウハウやサービスの充実度を意味するもので、クリニック開業に精通した担当者が、専門の関連企業を紹介してもらうのに、適した環境が提供されるからです。
こうしたサポート会社は、開業にに適した土地や建物をあっせんしてもらえるほか、改装などの内装工事にも強いのが特徴です。
また、ホームページ作成や広告にも対応しており、各医療機器メーカーや医薬品卸元、医科ディーラー /調剤薬局の紹介なども、受け付けているのは開業に際して大きなメリットと言えるでしょう。サポート会社により、サービスの内容は異なってきますが、リースでのサポートも大きな魅力となります。
また、日本政策金融公庫の創業融資でも、融資の相談や事業をアドバイスを行っていますので、こちらも視野に入れておくことをお勧めします。
へーえ、まさに至れり尽くせりだね。
モチはモチ屋って言うけれど、その道のプロに相談したり頼むのが一番だよね。
そうだよね。開業医だからって、苦労が無いわけじゃないのね。
患者を癒やすのが仕事だから、それ以外のことは任せてしまうのも一つの手だね。
まとめ
医師のように、専門性を持つ職業だと、どうしても開業に関する知識が乏しいといった難点があります。自分ですべてを行うといったやり方は、時間や労力もかかるほか、すべてに目をいきとどかせることができません。
したがって、クリニック開業を目指すのであれば、様々な支援制度やサポート機関をフルに活用していくべきです。
以上、クリニック開業に必要な各種制度について
…でした。
\ メリット盛り沢山 /