この記事でわかるポイント
- リスケ(リスケジュール)について
- リスケ中でも融資は可能 であること
- リスケのメリットとデメリットについて
融資に関するブログやサイトを見ると、「リスケ」といった言葉がよく見かけられます。
リスケとは、リスケジュールの略語で、本来の持つ意味は、計画を変更することを意味した単語です。
IT関連業界でも、使われるリスケですが、金融業界では「リスケ」は借金やローンの返済を延期するように計らう、といった意味としてとらえておくとよいでしょう。
リスケって、職場の男性たちがよく使っているけど、今まで居酒屋さんのことだと思っていたわ。
ハハハ、確かにありそうな名前だね。
リスケジュールって、どういうことか分かる ?
えっと、スケジュールだから、何かの計画なのかしら !?
リスケは、ビジネスの世界やIT関連業界などでも使うけど、今回解説するのは金融関連でのリスケジュールなんだよ。
その辺が、よく分からないのよね。
今回は、その点も踏まえて、リスケの事を分かりやすく解説していこうと思う。
専門用語って、いまいち分かりにくいから優しくお願いします ! 先輩。
ではまず、リスケがどのようなものであるのかを、詳しく解説していくよ。
目次
リスケジュールの概要
ビジネス業界で、広く使われているリスケジュールですが、一般的にはリスケと短く訳して使用されているようです。
このリスケですが、ビジネスの世界で使われる場合と、金融業界で使われる際は、その意味合いはかなり異なった使い方がなされています。
まず、ビジネス用語としてのリスケですが、「計画を変更する」といった意味で使われ、スケジュールを組み直すという意味合いで、利用されることが多くなっています。
若い方であれば、リスケといった言葉を利用することは、当たり前になっているという方もいらっしゃいますが、使い方には注意しておかなければなりません。
なぜなら、「リスケ」は訳語として使われる為、上司や取引先の相手に対してふさわしくないからです。
つまり、リスケは、同僚や後輩に対して使われるべき言葉で、先輩や上司から言われることが多いからです。
ビジネスの現場では、現状で行われているプランの仕様変更や、キャンセルが行われた場合、スケジュールの見直しが必要になってしまう為、リスケをお願いしますといった形で使われています。
基本的には、予定の前倒して使われることはなく、スケジュールの延長などを目的にしています。
また一方で、金融関係者あるいは、経理の財務担当者などが、リスケといった言葉を使う際には、「借入条件の変更」を指すのが通例となっていますので、意味合いが異なることに対して、注意しておかなければなりません。
では、具体的に、金融業界などでは、このリスケといった単語が、どのような時に使われているのでしょう。
通常金融業界では、リスケとは返済条件の延期および、変更を借入先に申し込む手続きのことを指しています。
銀行融資においてリスケは、借入先が何らかの理由で返済が苦しくなり、銀行側に対して返済条件を見直してもらうということになります。
つまりリスケは、会社の経営再建の為に行われることが多いのですが、最終的には会社の経営を立て直して、元の返済条件に戻すことを前提としています。
リスケを行うケースは、様々な理由によるものですが、返済が困難になる理由は以下ようなケースが挙げられます。
借入金の返済に困る主な理由
- 経営者の事業計画の甘さ
- 取引先の倒産によるもの
- 市場の縮小などにより売り上げの減少
- 競合相手の出現により売り上げが半減
- 価格競争の激化に起因するもの
- 自然災害などによるもの
昨今は、コロナウイルスなどの影響により、リスケを実行する企業が、ずいぶんと増えているようです。
なるほど ! リスケってこういうことだったのね。
要するに、借入金が返せない状態に、陥っているという状況なんだ。
いろいろな理由があるけど、いま世間を騒がせているコロナの影響で、日本の企業は大変な状況よね。
確かにね。次に、資金調達の方法は、いろいろあるにかかわらず、なぜリスケを選択するのか、その理由をみていこう。
なぜリスケジュールが必要なのか
企業にとって、思ったような収益が上げられないことには、当たり前に返済を行うことはできません。
多くの企業の経営者たちは、経営に対して事業計画書を作成し、スケジュール通りに事業を遂行しようとしています。
しかし、前の項で挙げたように、怠慢経営以外の項目は、いつでも起こり得る状況であり、特に昨今猛威をふるっている新型コロナウイルスなど、思いも寄らない経営の障害が現れることもあります。
この時、融資を受けている金融機関に対して借りている側が、少し返済を待ってくれないか、と申し出ることが、リスケジュールの本質だということです。
しかし、その前に最大の難関があります。なぜなら、銀行もビジネスとして融資を行っている為、必ずしもリスケを受け入れてくれるとは限らないからです。
ただし、これはあくまでも建前であり、実際には融資先の銀行のほとんどは、リスケを受け入れなければ仕方のない状況があります。
というのも、銀行融資がビジネスであるのと同様に、貸し倒れとなってしまえば、銀行側としても何もメリットが得られないからです。
先々を考え、企業再建の道があるのであれば、銀行側としても協力して債権を回収した方が得と考えるのは、自然な流れなのではないでしょうか。
ただし、借りた側がリスケをお願いする際には、それなりの条件を添えて、申し入れを行う必要があります。
つまり、銀行などの金融機関へとリスケを申し込む際には、それなりの改善案書類にして、銀行などに提出する必要があるわけです。
支払いが遅れてしまう、あるいは支払いの軽減を申し入れる際には、まず以下のような資料を用意します。
金融機関にリスケを申し入れる際に用意すべき資料
- 経営計画改善書
- 資金繰り表
- 試算表
- 銀行借入明細書
銀行側も本気度が伝われば、リスケによる猶予を与えることにより、倒産などによる貸倒を防ぎ、融資した債権を回収できますので、協力的に対処してくれます。
ただし、リスケによる稟議(りんぎ)には、通常1ヶ月半から3カ月ほどの期間がかかる為、余裕をもった行動が必要です。
尚、経営計画改善書の作成には、必ず代表者本人が携わる必要があります。
なぜなら、経営計画改善書の説明に対して、銀行側からの疑問点を多く出されてしまえば、稟議が通らない可能性が高まってしまうからです。
また、安易にリスケに走るのではなく、ほかの資金調達方法も検討し、最終手段として考えることが必要です。
返済に手が回らないといった状況は、なんだか今の現状をみているようね。
リスケを選択することによって、企業にとってはメリットも大きいから、知らなければ会社をつぶしてしまうことにもなりかねないね。
確かにそうね。
そこで近年リスケが行われている状況を確認しておこう。
気になるリスケジュールの現状
これまでの解説をご覧の通り、リスケとは融資の返済に対して、貸し付け条件の変更を意味したものです。
近年における、企業のリスケ状況を見てみると、2010年度のリスケの申し込みが約135万件あり、そのうち実行されたものが約128万件にのぼり、そのリスケ実行率は94.8%となっています。
近年では、この2010年をピークに、徐々にリスケ実行をそのものの件数が減少傾向にありいますが、2017年度のリスケ申込件数は約80万件、そのうち実行されたものが約77.8万件、実行率は97.2%となっています。
2010年度の前年度の実行率が、76.7%ということを見ても、近年ではリスケの実行率が高い水準で推移していることがわかります。
もう少し分かりやすくする為に、2017年度のリスケ状況を詳しく解析してみましょう。
2017年度のリスケ状況は、2017年4月から、2018年3月にかけてリスケジュールが行われたものです。
これによると、800,461社の企業がリスケの申し込みを行い、778,123社の企業がリスケを行ったことになっています。
実効数に差があるのは、リスケが実行されなかった為で、22,338社については金融機関の謝絶あるいは、申込者側からのリスケ取り下げが行われたのがその主な理由です。
2017年度時点の日本の中小企業数は、小規模事業者も合わせて約380.9万社ですので、この年に関して言えば約21%の中小企業が、リスケジュールの申し込みを行っていることになります。
この比率に関して、多いか少ないかは別として、現状ではこのくらいの割合で、リスケが行われていることは驚かざるをえません。
また、リスケの実行率に関しても、この年の実行率は全体で98.6%、ここ5年の平均値を見ても、95%以上といった高い数値で推移しています。
このことから見ても、リスケジュールを申請すれば、高い確率で認められているという事になります。
昨今、新型コロナウイルスの影響で、リスケジュールをお考えの経営者も多いかと存じます。しかし、注意しておかなければならないのは、返済条件の変更や返済猶予どちらにせよ、利息の支払いがストップするわけではないということです。
また、このリスケジュール実行中は、返済条件や返済の猶予が認められることになりますが、この間融資を受けることはできないということです。
一番重要なのは、改善計画に基づき、経営を立て直すことができるかにかかっています。
驚いた ! 数だけ見ると、かなりすごい数の企業がリスケを行っているのね。
全企業数の2割ほどにもなるから、かなりの数と言っていいよね。
実行率が高いということは、それだけリスケに成功しているという事だよね。
そうだね。不良債権化してしまえば、銀行としても回収不可能になってしまうから、受けざるをえないというのが本音かもしれないね。
そこで、リスケの事を正しく知る為にも、メリットとデメリットを詳しく見ていこう。
リスケのメリットとデメリット
リスケジュールが、どのようなものなのかを把握したところで、リスケによるメリットとデメリットには、どのようなものがあるのかを確認しておきましょう。
リスケを申請し、リスケが認められたとして、トントン拍子で上手くことが運ぶ可能性もある一方で、最も重要となるのは経営再建だからです。
場合によっては、より一層を経営が苦しくなることも予想され、毎月の返済ができなくなることもないわけではありません。
また、追加の融資も受けられませんので、こうしたことが理由で資金がショートして倒産という結末も、あり得る話だからです。リスケジュールによる、メリットとデメリットは以下の通りです。
メリット【その1】元本返済が一定期間限りなく0円にすることができる
限りなく0円とは、返済を待ってもらう一定期間中であっても、利息の支払いは行わなければならないからです。
リスケにより、元本返済を限りなく0円にする形は、一般的に行われており、期間は通常6カ月から1年間にすることが多いようです。
リスケによって、全く返済しないことは不可能ですが、実質的に1割以下の返済に抑えられれば、経営面での有利性はかなりのものと考えられるでしょう。
メリット【その2】倒産の危険性を回避できる
絶対とは言えませんが、返済額が抑えられることにより、経常利益の大幅な回復が見込まれます。
状況にもよりますが、赤字を黒字化することも可能であり、経営の立て直しを迅速に図れる事は、大きなメリットと言えます。
こうしてみると、企業にとってリスケのメリットはかなり大きいわね。
確かに。長期にわたって利息の支払いだけで済むのなら、これ以上有り難いことはないよね。
ただし、当然デメリットも、考慮しておかなければならないよ。
デメリット【その1】新規融資が困難
基本的には、リスケ中に追加融資を受けることはできません。
銀行では、独自に企業の格付けを行っています。
銀行の6段階の企業格付け
- 【ランク1】正常先
- 【ランク2】要注意先
- 【ランク3】要管理先
- 【ランク4】破綻懸念先
- 【ランク5】実質破綻先
- 【ランク6】破綻先
リスケを行うと正常先から→要注意先 or 破綻懸念先の格付けが下がってしまいます。
格付けは非常に重要なもので、基本的に銀行融資は正常先の格付けでしか、融資を受けられないからです。
ただし、正常の返済に戻る事により、正常先に区分が上がれば、新規の融資を受けられる可能性が出てきます。
【参考記事】銀行のスコアリング評価と信用格付評価を上げるためできる5つのこと
デメリット【その2】保証付融資でのリスケは新規融資も困難に
中小企業の場合、そのほとんどが、保証協会の保証付きで融資を行うのが一般的です。
というのも、銀行の融資には、保証付き融資とプロパー融資とがあり、プロパー融資の場合、銀行が100%の貸し倒れリスクを背負う為、大企業など信用力の高い企業にしか適用されないことがほとんどだからです。
したがって、ほとんどの中小企業は、この保証付融資で借り入れを行っていますが、リスケを実行してしまうと、当然保証協会へも連絡が入ってしまいます。
これが、何を意味しているかといえば、新たに融資を行いたくても、保証付融資が受けられないといった結果になってしまいます。つまり、違う銀行でお金を借りようとしても、保証協会の審査に通らない為、リスケが完了するまで、融資が受けられないことになるわけです。
デメリット【その3】融資担当者からの冷遇は避けられない
借りた側からしてみれば、リスケは返済期間を待ってもらえるなどの処置がなされる為、大変メリットの大きなものとして歓迎されるものです。
しかし一方で、銀行側はリスケを認めた内情は、倒産されるぐらいなら、元本返済を待っても、再建にかけた方が良いという判断からきています。
つまり、本来はやりたくないことを、やっているにしか過ぎないということを頭に入れておく必要があります。
実は銀行側にとって、リスケにはマイナス面が多く、貸倒引当金を多く積まなければならないといったデメリットがあります。
というのも、銀行の定めにより、信用区分に応じた「貸倒引当金」を計上しなければならないといった、決まりごとがあるからです。
貸倒引当金とは、貸倒損失によるリスクに備え、損失になるかもしれない金額を予想して、あらかじめ計上しておくものです。
参考:https://freeway-keiri.com/blog/view/184
つまり、勘定科目では、資産のマイナスを意味するもので、銀行にとっては迷惑以外なにものでもないからです。
当然そうなると、銀行の利益が減ってしまう恐れがあり、担当者の営業成績にもマイナスの影響があるのです。
さらに、リスケを行う際には、稟議書の作成 / 起案など手間ばかり増えてしまい、担当者にとっては百害あって一利なしというのが、このリスケの実態です。
デメリット【その4】6か月~1年程度の期限付き
リスケの期間は、6カ月から1年といった、期限が設けられているのが一般的です。
もちろん、条件によっては、さらに期間延長も不可能ではありませんが、実際にはかなり厳しいと言わざるをえません。
それというのも、もともと6カ月から1年といった期間を限定し、経営改善を目指していかなければならないのに、さらにその期間を延長する事は、それまでの経営改善計画を、実行できなかったことを意味するからです。
したがって、銀行側に延長を打診したとしても、シビアな対応がなされる可能性が高いと言えるでしょう。
シビアな対応とは、銀行側が債権をサービサーと呼ばれる、債権回収会社に売却してしまうことを意味します。
不良債権として、会社や資産を手放すことにもなりかねないわけです。
ただし、経営改善計画の80%ほど達成したと見なされれば、リスケ機関の更新が承認してもらえることもあります。
デメリット【その5】精神的な負担がかなり大きい
経営者にとって、リスケジュールは、会社を立て直すにあたり、かなり有効な方法となります。
しかし前述の通り、銀行にとってリスケは、実質あまり歓迎されないものであり、担当者にとっても百害あって一利なしと断言できるものです。
この状況で、経営者はリスケを懇願しなければなりませんので、精神的な負担はかなり大きいものと知っておく必要があるでしょう。
経営者自らが、金融機関に何度も赴いて、頭を下げて回る必要があり、万が一外に漏れてしまえば、取引先からの取り引き停止や縮小をといった結果も招きかねません。
つまり、外部に情報が漏れないよう、対策を施す必要もあり、経営再建に心血を注がなければならない、といったプレッシャーもかなりの負担になるはずです。
こうしたデメリットも踏まえて、リスケを考える際には、十分に熟慮し実行していく必要があります。
企業にとってリスケって、すごいメリットがある事って思ったけど、やっぱりデメリットも大きいのね。
リスケは、強力なカンフル剤になり得るんだけど、逆に毒薬にもなりかねないんだ。
経営者の手腕が問われるのよね。
そういうことになるね。
経営難を立て直すのはわかるんだけど、しっかりと先行きを見据えた事業計画と対策を立てないと、足元をすくわれかねないんだよ。
大変勉強になりました。有り難うございます ! 先輩。
まとめ
現在、様々な影響を受け、売り上げが伸びず、借り入れの返済が難しいといった企業がずいぶんと増えてきています。
リスケそのものは、決して悪いものではなく、会社の経営を立て直すのには、かなり有用性の高い手段として考えられています。
ただし、メリットは大きいものの、それなりのデメリットもありますので、十分に留意してリスケを行いましょう。
以上、知らなきゃ損する ! リスケ(リスケジュール)の申請方法…でした。
\ メリット盛り沢山 /