この記事でわかるポイント
- 銀行融資の際の「評価」について
- 資金調達の戦略の立て方
- 会社の評価を上げるためにできる5つのこと
日本国内における業種の種類は、大別すると20種類ほどですが、さらに専門分野に細分化すると、その数は100種類ほどにものぼるとされています。
いずれにせよどの業種であれ、モノやサービスを売って売り上げを上げることは同様です。
また、融資の主力は銀行で調達していることも多く、銀行融資がスムーズに行われるのかが、一つのポイントになっています。
100種類以上って、多いのかあまり実感がないわね。
そうだね。仕事の多様化もそうだけど、専門的な要素が多くなったのが主な要因だね。
どの業界も、新型コロナウイルスの影響で、かなり大変みたいね。
コロナ関連の倒産も、世界的な規模で増えているね。
資金調達が、うまく行えなかったという事なのかしら?
今回の新型コロナウイルスの影響は、今世紀最大の危機といってもいいね。
そこで、円滑な資金調達を可能にする為にも、企業に対する銀行の信用評価について解説してみようと思う。
信用は大切だよね。
実は信用自体は、不明確なものだけど、スコアリングによって数値化できるものなんだ。
そうなんだ。
まずは、スコアリング評価について解説しておこう。
よろしくお願いします ! 先輩。
目次
銀行におけるスコアリング評価とは
多くの会社の経営者にとって、資金調達における銀行融資の位置付けは、非常に重要なものです。
なぜならば、融資は一回限りのものではなく、将来的にも設備投資や事業拡大時に、資金調達が必要となってくるからです。
しかし、必ずしも次回も同じ銀行から、融資が受けられるとは限りません。
というのも、スコアリングにより、審査の過程で評価が変わる可能性がある為、必ずしもスムーズな融資が受けられるとは限らないからです。
スコアリングとは、直訳すると採点を意味する言葉ですが、銀行では企業の格付け評価を意味する言葉で、信用格付けとも呼ばれています。
つまり銀行は融資の際に、このスコアリングを行うことにより、会社に順位をつけ融資可能かどうかを判定しているわけです。
このスコアリング評価ですが、銀行によってその内容は異なり、10段階から20段階評価が一般的とされています。
具体的に言えば、企業の格付けは、大まかに六つのランクに分けることができます。
銀行の6段階の企業格付け
- 【ランク1】正常先
- 【ランク2】要注意先
- 【ランク3】要管理先
- 【ランク4】破綻懸念先
- 【ランク5】実質破綻先
- 【ランク6】破綻先
つまり、この6つの区分けから、さらに細分化することによって、10段階から20段階評価がなされているということになるわけです。簡単に言えば、スコアリングが高ければ、それだけ融資が受けやすいということになります。
逆に言えば、スコアリングが低ければ、融資が困難なものとなり、融資枠が狭くなってしまったり、高金利や担保あるいは保証人をつけなければならないなど負担が高くなり、最悪の場合は融資が受けられないということになってしまいます。
スコアリングは、いうなれば信用格付けと呼ばれるものですが、利用者側からしてみれば、かなり不可解な部分に見えることでしょう。
確かに会社の信用度は、目に見えにくいものですが、それらを項目別に数値化することによって、学年末試験のように採点し、点数による格付けを可能にしたものです。
会社によって数値がわかれば、銀行としても簡単に選別がしやすく、融資における査定の根拠となるからです。
前述の通り、大まかなランクは6つに分けることができますが、正常先であってもさらにいくつかの段階に評価され、さらにその中で上位が正常先として認識されます。
ほかのランクも同様に、さらに細分化された10段階評価の中から、最終的な評価がなされていることになります。
つまり、スコアリングって、企業評価の信用格付けになる訳ね。
そういうことだね。
そこで、もっと詳しく、スコアリングの仕組みについて解説してみよう。次に、今回の主題である、銀行の金利に関して解説してみよう。
スコアリングの仕組み / 「定量分析」と「定性分析」
銀行におけるスコアリング評価は、企業ごとに細かな分類を行うことにより、企業の信用評価が目に見えるものとしてわかるようになります。
このことから、お金を貸しても問題なく回収できる企業であるかが、しっかりと判断ができるメリットがあります。
借り手側からすれば、このスコアリング評価における正常先に分類されなければ、融資はかなり厳しくなるものとなります。
スコアリングそのものが、どのようなものなのかが理解できたところで、さらに具体的なスコアリングの数値化について、どのように行われているかを理解しておきましょう。
まず、スコアリングの信用格付けにおいて、様々な項目について数値化を行いますが、主に定量分析と定性分析によって点数が決められる事になります。
まず、定量分析ですが、数値に表せるものとして、決算書の財務分析が重視され、その分析内容が安全性/収益性/返済能力の3つを判断する要素へと、さらに細分化されていく事になります。
具体的に、この3つをさらに数値化する数式は、以下の通りになります。
安全性
- 現預金や売掛金などを含めた当座資金÷流動負債=当座比率
- 流動資産÷流動負債=流動比率
- 純資産(自己資本)÷総資産=自己資本比率
- 固定資産÷純資産=固定比率
- 固定資産÷(固定負債+純資産)=固定長期適合率
収益性
- 経常利益÷総資産=総資産経常利益率(ROA)
- 経常利益÷売上高売上=高経常利益率
返済能力
- 営業利益+受取利息配当金)÷(支払利息+手形売却損)=金融費用に対する事業利益の比率及び倍率(インタレスト・ガバレッジ・レシオ)
- 有利子負債÷(営業利益+減価償却費)=債務償還年数
つまり、定量分析における、安全性の具体的な数値として、当座比率と流動比率、自己資本比率 /固定比率 /固定長期適合率を数値化することにより、企業の安全性を推し量っています。
同様に、収益性では、総資産経常利益率と売上高経常利益率を、そして返済能力の指標として、インタレスト・ガバレッジ・レシオと、債務償還年数を数字として、具体的に判断しているわけです。
銀行融資においては、これらの数値を総合的に判断し、信用格付けが行われています。
数値によっては、会社の成長度を判断する材料ともなるもので、決算書に記されるこうした数値は、銀行にとって非常に重視しているものと覚えておいて下さい。
すべてを数値化すれば、不公平がないという事だよね。
そうなんだけど、会社の規模によっても異なってくるよ。
次に、スコアリングのもう一つの指標となる、定性分析の事を説明しておこう。
次に、定性(ていせい)分析についてですが、定性分析は数値で表すことができない部分を評価するものです。
本来、定性分析とは、化学の分野で用いられているもので、ある試料にどんな成分が含まれているかを調べることです。
ビジネスの世界では、イメージといった形で用いられる事が多く、客観的な判断材料として利用されています。
例えば、ビジネスにおける定性分析には、以下のような評価分析が挙げられます。
ビジネスの定性分析
- 過去における経営者の実績や経営能力など
- 会社の業歴
- 会社財務の管理能力
- 事業展開している業界の成長性など
- 代表者の過去の借り入れ状況や返済状況
- 会社独自の技術やサービスの有無
- マスコミ等のメディアで紹介された実績の有無など
なるほど。確かに数値化できないわね。
そうだね。イメージに近いものだから、人によって感じ方が異なってくるものともいえるね。
そこで、さらに分かりやすくする為に、双方の大まかな特徴を見てみよう。
このように、数値で表せない客観的な部分が、定性分析の大きな特徴といえます。マイナス面としては、評価する側の基準によって左右されることも多く、適切な判断がなされない可能性もあります。
特に最近では、インターネット上などの口コミによって、会社の評価が大きく割れることもありますが、その真意を測るのが非常に難しい要素と言えるでしょう。
しかし、定性分析は、定量分析と組み合わせることによって、有効に判断する事ができる為、判断の自由度が増し、大局的なものの見方が可能になるメリットがあるのです。
では、定性分析と定量分析、双方の特徴を簡単にまとめておきましょう
定性分析のメリット
- 数値化した情報やデータが分析できる。
- 客観的にみることで、判断性のブレを減らすことができる。
- プレゼン及び、コミュニケーションに説得力が増す。
定性分析のデメリット
- 大局的な情報など、可能性が読み取れない場合もあり。
- 基本的には、過去のデータであること。
定量分析のメリット
- 数値で表せない情報やデータが分析できる。
- 全体の問題や論点を、大局的に判断することが可能。
- 過去のにとらわれない未来的思考の分析が可能。
定量分析のデメリット
- 客観性に欠けてしまう。
- 評価的リスクを考慮する必要がある。
以上のように、定量分析と定性分析の利点と欠点を具体的にみると、定量分析の短所を定性分析が補い、逆もしかりという事がお分かりいただけるでしょう。
つまり定量分析と、定性分析双方をスコアリングに利用することによって、合理的な分析結果が得られることになります。
より一層、制度で具体的な分析により、信頼性の高い信用格付けづくりが、なされるということになるわけです。
なるほど。こうしてメリットとデメリットを比較すると、かなり分かりやすいわね。
定量分析と、定性分析を組み合わせることによって、より一層企業の内面を分かりやすくしたんだ。
学生の時もそうだけど、評価を上げるのは大変そうね。
そうくるよね。だからこそ、企業評価を上げるテクニックが必要なのさ。
銀行融資の信用格付評価を上げるためできる5つのこと
銀行融資は、スコアリングによる企業格付けにより、審査の通りやすさに関わってくることが分かりました。そこで気になるのが、この信用格付けを上げられる可能性についてです。
この信用格付けの高さは、融資限度額や利息に比例するもので、格付けのランクの要素が、融資のすべてを決定しているといっても、過言ではないからです。
したがって、自分の会社の格付けが上がれば、融資を行いやすくなるばかりではなく、安定した事業資金の供給によって、これまで以上の業績を上げられる可能性さえあります。
では実際に、この信用格付けで企業評価を上げる為には、どのように実行すればよいのでしょうか?
実際に、具体的なポイントについて、その方法を記してみましょう。
【その1】負債額を減らす
負債額の上昇は、これまでに説明したように、当座比率や流動比率の低下に直結するものです。
逆に言えば、負債額を減らすことさえできれば、数式上分母が減ることになり、各比率の数値を大きくする事が出来ます。
現状で事業が好調で、収益が上がったとしても、負債幅が多い状況下では、銀行も融資を貸し渋ってしまうことが考えられます。
【その2】自己資本率の上昇
自己資本とは、会社の内部にある資金を指す意味で使われ、具体的には出資額と会社の利益を積み重ねたものを言います。
自己資金比率は、通常40%以上あれば、会社は安泰とされているもので、負債による他社資本よりも、自己資金の多い会社は返済能力が高いと認められやすいのです。
【その3】コスト削減
収益を増やすことは難しくとも、支出を抑える事により、結果的に収益を増やすことと同義となります。
経常利益率を上げるためには、人件費及び仕入れコストの削減、通信費や光熱費の圧縮などが、対策として有効な方法です。
【その4】総資産を減らす
一見総資産が多いことは、会社にとって有利なように思えますが、実際には過剰な在庫及び過度な設備の投資など、マイナス面が多いものです。
リースを活用するなど、有効な手立てを行うことにより、バランスシート上の数値も有利に働きます。
【その5】付加価値の高い商品やサービスのシフト
企業によっては、薄利多売の手法により、モノが売れなくなった場合、極端に収益が下がることが考えられます。
高価値商品やサービスの提供は、増益を図る対策としても有効な可能性があります。
つまり、これらの5つの要素を見直すことによって、企業評価を高めることにつながるのね。
ズバリその通りだね。
もう少し分かりやすくする為に、次の項で簡単にまとめておくよ。
スコアリングを高くする為のポイントのまとめ
スコアリングを高くする事は、企業評価を高める事にもつながり、ひいては信用価値の高まりにより、銀行融資がスムーズに行えるといった図式に当てはまります。
その為に、具体策として、前項をご覧のように、各ポイントごとの打開策を提示しました。
頭の良い方ならお分かりのように、これらをまとめてみると、スコアリングを高くするためのポイントは、ずばり決算書にあるということがお分かりいただけたでしょう。
実際に、信用格付けのポイントは、この決算書の8割方によって決まるとされており、企業における信用度はある意味、決算書にかかっているといっても過言ではありません。特に決算書の中でも、重要視されているのが、返済能力の有無です。
つまり、ほかの数値がいくら良くても、この返済能力の数値が低ければ、融資が受けられないといった可能性さえあります。
その為にも、決算書とは別に、経営計画書がかなり重要な立ち位置を占めています。
なぜなら、この経営計画書が、重要な返済能力の判断材料になっているからです。
では、具体的に言って、経営計画書は、どのように書き記せばよいのでしょう?
経営計画書は、具体策として、今後どのようにして利益を上げていくのかを、書面で説明するものです。
したがって、経営計画書には具体的なプランとして、経営理念/経営方針/今後の事業展開/各数値目標/業界の展望/企業の立ち位置や方向性/目標を達成する為のプランなど、項目別に分かりやすく説明する必要があるのです。
通常、銀行融資の場合、担当者との面談が原則として行われます。
平たく言えば、対人との交渉が行われるわけで、銀行との付き合いが長く、互いの信頼関係が築ければ、ある程度の融通が利くとされています。あながち間違いではありませんが、必ずしもそれが融資に直結しているとは限りません。
なぜならば、実際の評価は、定性評価や実態評価、市場動向や競合状態/実質財産の価値評価など、様々な評価項目があるからです。
しかし、それぞれの項目の数値を改善し、スコアリングを高くすることに成功したとしても、それだけで安心してはなりません。
そのうえで、定期的に銀行の担当者との、コミュニケーションを図る必要があります。
いつでも融資が受けられる企業とは、信用評価が高く、銀行との信頼関係が強い会社なのです。
つまり、決算書と経営計画書が、重要な要素になる訳ね。
経営計画書、つまり事業計画書と同じものなんだ。
だけど、数値を良くするばかりでなく、全体的に事業を見直す眼も必要だね。
銀行とのお付き合いもしなきゃね。
要するに、全体的に物事を見る必要もあるということだね。
よくわかりました。有り難うございます ! 先輩。
まとめ
銀行にとってスコアリング評価は、貸し出した資金を安全に回収できるかの目安となるものです。
数字によって、物事を決められるということは、あまりいい気はしませんが、資金を貸す側にとっては重要な問題です。
会社の経営者としても、普段からこうした数値に気を配り、経営に携わっていくことをこそ未来につながります。
以上、銀行のスコアリング評価と信用格付評価を上げるためできる5つのこと…でした。
\ メリット盛り沢山 /