この記事でわかるポイント
- 電子記録債権「でんさい」について
- 電子記録債権「でんさい」はファクタリングが可能
- 債権というものの重要性について
コロナ渦を始めとする様々な諸問題で景気が低迷する今、多くの経営者の中で一番頭を悩まされているのが、資金調達をいかにして実現させるかにあります。
これまで、国内のほとんどの企業では、約束手形による取引が主でした。しかし、手続きや管理も面倒でインターネットの普及した現在、電子記録債権を利用する企業も随分と増えてきているようです。
コロナは早く解決して欲しいけど、収入がないのは死活問題だよね。
苦しいのは国民全員だから、今のところ国の支援策に期待するしかないね。
国も行政をあげて支援策を行っているけど、小さな会社は資金繰りが難しそうね。
国の支援策を利用するのはもちろんだけど、今回は新しい資金調達の形として電子債権に関して解説してみようとおもう。
電子債権 ? あまり聞き慣れないわね。
まずは電子記録債権の中で最も有力視されているでんさいについて解説しておこう。
目次
でんさいとは何のこと ?
「でんさい」とは、いわゆる電子記録債権の事ですが、一般の方にはあまりなじみのないものです。
でんさいは、電子的に記録されたデータを、インターネット回線を利用してやり取りするものですが、これでも立派な金銭債権として扱われています。
新たな金銭債権として大きな注目を集めているでんさいですが、これまでの金銭債権とはどこが異なっているのでしょうか?
そこで、でんさいのことをよく理解するうえで、正しい知識を学んでおく必要があります。
まず、「でんさい」は、でんさいネット内で流通している電子記録債権のことを指しています。そして、電子記録債権には、大きく分けて、4種類のタイプがあることを覚えておきましょう。
タイプ別電子記録債権の4種類のタイプ
- 全国銀行協会が提供する、でんさいネットで用いられる電子記録債権 (通称:でんさい)
- 三菱東京UFJ銀行が、独自に提供する電手決済サービスで用いる電手(通称:でんて)
- みずほ銀行が、独自に提供する電子債権決済サービスで用いる電子記録債権 (通称:電ペイ)
- 三井住友銀行が、独自で提供している支払手形削減サービス (通称なし)
以上の4種類が、現在国内で流通している電子記録債権となります。
つまり、あくまでも、でんさいネット内で用いられている店電子記録債権のことを、でんさいと呼んでいるわけです。なぜ、でんさいが注目を集めているかというと、銀行独自のサービスではなく、全国の都市銀行 /地方銀行/信用金庫その他で利用可能だからです。
全国銀行協会に所属する金融機関は多く、実際にでんさいネットに参加している金融機関は、500以上にものぼるものです。つまり、ほかの銀行の電子記録債権と比べてみても、非常に利便性が良いことがお分かりいただけるでしょう。
これまで、企業間での取引は、約束手形や売掛債権が用いられてきました。しかし、これらを現金化する為には、手形や債権が実存するものなのか、所有権が誰なのかを確認する必要もあり、手間やコストがかかりそれに伴うリスクもありました。
そんななか、でんさいは発生や譲渡の為に電子記録が必要となるため、二重譲渡のリスクを防ぐことが可能となりました。つまり、債務者が債権記録を確認すれば、債権の存在と帰属を即座に知ることができるようになったわけです。
同じ電子債権でも、管理する機関によって、その名称はさまざまという訳ね。
そういうことだね。
という事は、この機関が異なれば、取引することができないの ?
できないことはないけど、スムーズに行えないことは確かだ。
共有すればいいのにね。
利用者にとっては、それが一番だよ。次になぜ、こうした電子債権の制度が行われるようになったのか、その経緯を説明しておこう。
電子記録債権制度創設の背景
この電子記録債権制度は、インターネットの普及した現代、IT化による電子的なデータの記録により、従来までの企業間の取引であった売掛債権や手形をより手軽なものとしたものです。
さらに、電子化による電子記録債権によって、権利の内容を定める事ができ、取引の安全性及び流動性の確保と、利用者保護の要請に応える新たな制度となりました。
つまり、従来までの企業間取引で、取り扱われていた債権や手形債権とは異なり、電子債権記録機関の記録原簿への電子記録を行い、その発生・譲渡をネット上で可能とする新たな金銭債権となります。電子記録債権は、2008年12月に施行された、電子記録債権法といった独自の法律があります。
電子記録債権法の創設の背景には、これまでの債権や手形の資金化には、様々なリスクがあったことから、これを改善する目的で、新たな制度を設ける必要があったのです。これまでにも、手形を含む、金銭債権を活用した資金調達の手法としては、担保融資やファクタリングといった手立てがありました。
確かに、事業資金を速やかに調達する手段としては、かなり利便性の高い方法です。しかし、譲渡の対象である債権が、本当に存在しているのか、また該当する債権が誰に帰属しているのかなど、その確認に手間がかかり、契約までにかかる様々な費用もばかになりません。さらに、二重譲渡といった問題もあり、リスク面の排除に関しては、早急な対策が必要だったのです。
これらを、すべて電子債権化にすることにより、これまでに挙げた懸念材料が、すべて払しょくされることになります。もちろん、債権の情報が、すべて電子債権記録機関に登録されている為、二重譲渡を防止するといった面でも優れています。
これにより、電子記録債権の活用によって、更なる資金調達の円滑化の促進となります。これまでの、様々な手間が省かれる事により、より一層迅速な金銭債権の現金化が行われ、コスト削減も図れることから、手数料も低く抑えられる事などが、大きなメリットとして挙げられます。
これまで、不動産担保ができなかった、中小企業や小規模事業者などには、朗報と言えるのではないでしょうか。ただし、ネックとしては、取引を行う企業間で共有する、電子債権記録機関が必要だというところでしょう。
なるほど、コスト削減にもつながるし、かなり便利なシステムなのね。
実際に、こうした電子債権を利用した、担保融資も行われているよ。
電子記録債権担保融資
これまでも、売掛債権を担保とした融資制度はありましたが、でんさいの項で説明した通り、確認作業に非常に手間がかかり、審査に時間がかかるといったデメリットがありました。
また、これまでの資金調達方法として、極端に不動産担保に依存していた経緯からも、ABLの推進を図りたい政府の思惑にもマッチしています。
ABLとは、動産 / 債権等の担保融資の事で、これら流動資産の規模は、資本金1億円未満の中小/小規模企業だけで みても、122兆円にも上ると予想されています。
つまり、こうしたABLを活発に行うことにより、これまで資金調達が困難とされた中小/小規模事業者に対して、円滑な資金調達を可能にすることにつながります。
電子記録債権担保融資は、記録原簿への電子記録をその発生 / 譲渡等の要件とすることで、スムーズな資金調達を可能とします。
電子記録債権は、既存の指名債権や手形債権とは異なる新たな金銭債権で新たな資金調達の形と言えるでしょう。
では、実際の取引は、どのように行われるのでしょうか。そこで、分かりやすく取引イメージを解説してみましょう。
電子記録債権担保融資の取引の流れ(イメージ)
- 電子記録債権の発生 →債権者と債務者の双方が、電子債権記録機関に「発生記録」の請求を行うことにより、記録原簿に記載され電子記録債権が発生。
- 電子記録債権の譲渡 →譲渡人と譲受人の双方が、電子債権記録機関に「譲渡記録」の請求を行うことにより、電子記録債権の譲渡が可能。
- 電子記録債権の消滅 →債務者口座から、債権者口座に金融機関を利用して、払い込みによる支払が行われた場合、電子記録債権即座に消滅する。これにより、電子債権記録機関は、金融機関から通知を受けることにより、遅滞する事なく「支払等記録」を行うことが可能。
流れを見てお分かりのように、かなり素早いスピードで、債権の譲渡及び債権譲渡の抹消が行えます。
これは、電子債権の特性でともいえるものですが、コスト面でもかなりのパフォーマンスを有している為、利用者側も依頼される業者も、双方に大きなメリットがあります。
こうした、電子記録債権を活用するサービスは、まだ一般的ではない為、不安な点や疑問に思うこともあるかもしれませんが、これからはますます普及していくことは間違いありません。
ファクタリングとよく似たシステムなのね。
似ていて非なるもの、とはよく言うけど、借入と売却といった大きな違いがあるんだ。
融資と債権の売却との違いね。
システム自体が大きく異なるから、両者を比較するのは難しいのだけど、共通する項目でその違いを比べてみよう。
「電子記録債権担保融資」と「ファクタリング」の違い
電子記録債権は、これまで企業間取引の手立てであった、手形や売掛債権のネックとなっていた部分を解消したものです。
いわゆる、電子化された金銭債権ですが、電子債権記録機関に登録する事により、誰でも手軽に利用することができるようになります。
電子記録債権のメリットは、手形の作成や交付及び、管理にかかる手間やコストが不要になります。また、ペーパーレスで電子データですので、盗難や紛失の恐れがない事も大きなメリットと言えるでしょう。
さらに、売掛債権として見ると、電子債権記録機関に問い合わせることによって、債権の存在や帰属先がはっきりとする為、二重譲渡の恐れがなく、そうしたリスクを回避する事ができます。
また、債権の譲渡に関しても、インターネットで簡単にできる為、債権譲渡通知を行う必要もなく、譲渡の抹消も自動的に行われます。
つまり、電子記録債権は、単に手形や債権を電子化しただけのものではなく、取引の安全性や確実性/利便性が、大きく高められた金銭債権なのです。
特に、でんさいネットであれば、全国の銀行などの窓口がありますので、手軽にサービスを利用できるといったメリットがあります。
では、「電子記録債権担保融資」と「ファクタリング」とではどこが異なるのでしょうか?
電子記録債権担保融資のメリットとデメリット
メリット
- でんさいネット口座を持つ、企業間の取引がスムーズに行える。
- 取引企業が増えても、システムの共有により、負担軽減につながる。
デメリット
- 融資である為、借入金となる。
- 不渡りリスクがある。
ファクタリングのメリットとデメリット
メリット
- 債権の売却である為、会社の負債はならない。
- 償還請求権がない為、利用者には不渡りのリスクが生じない。
デメリット
- ファクタリング会社によってサービスの内容が異なり、状況に合致するファクタリング会社選びが大変。
- ファクタリングのタイプによっては、コストがかかってしまう場合もある。
- ケースによって、債権譲渡の手間があり、これにかかる費用も大きいこと。
以上のように、電子記録債権担保融資とファクタリングは、システム自体が大きく異なる為、簡単に比較する事は難しいといえます。
また、電子記録債権担保融資はでんさいネットを共有していなければ利用が難しいということもあり、電子記録債権の広まりがこれからはより一層強く求められます。
不渡りのリスクがあるということは、普通の手形と変わらないのね。
そうだね。この点も含めて、まだまだ改善の余地もありそうだけど、電子債権が優れたシステムがあることは変わらないね。
なるほど。
現状では、まだまだシステムを利用する企業も少なく、サービスを提供するファクタリング会社も多くないんだ。けれど、将来的にはさまざまな方向で、活用できる可能性はあるよ。
今後の電子記録債権活用の方向性
まだまだ企業間取引では、一般的とは言えない電子記録債権ですが、政府の考えとしてはさらなる利用の拡充が先決といった考え方でまとまっているようです。
というのも、これまで不動産融資に偏り過ぎていた為、かえって資金調達の方法を妨げていたという向きがあるからです。
これまで、幾たびか国内を襲って来た不景気ですが、バブル崩壊及びリーマンショックなど、不動産中心に融資が行われてきました。
こうした景気低迷等を背景とする不動産問題は、不動産価格の下落によって金融機関の貸出姿勢の慎重化がますます進み、結果として貸出金額及び、割合が低下してしまうという事態を招いてしまいました。
そんな中で、新たな金融債権とされる電子記録債権の活用は、貸し手と借り手側、つまり事業資金を必要とする経営者と銀行との、リレーションシップを高めることにつながります。
ひいては、中小企業及び小規模事業者の成長を促していくことにつながり、社会全体の景気が活発になることを期待しているからです。
現状では、多くの中小企業及び小規模事業者は、融資に対して信用保証制度を利用した、資金調達が活発に行われています。
その為にも、電子記録債権を活用した、割引サービス制度や担保融資を始め、様々な資金調達方法を促進することこそ重要です。現在、多少を停滞気味であった電子債権ですが、電子記録債権を記録 / 流通させる、新たな社会インフラが立ち上がりつつあります。
電子記録債権の普及が見込まれる今こそ、更なる法整備が必要と言えるでしょう。現状では、日本政策金融公庫が、保険を行っている根拠となる中小企業信用保険法において、電子記録債権はその規定内にありません。
その為、信用保証の対象に、電子記録債権を位置づけることによって、更なる資金調達の手段が増えることになります。また現状では、同じ債権を活用するファクタリングと比べて、リスクがまだ多いということが挙げられます。
というのも、電子記録債権は、あくまでも手形を利便性の良い電子化にしたにすぎず、不渡りのリスクを回避する事が出来ないからです。この点を考慮すると、同じ売掛債権を扱うファクタリングに、軍配が上がるのではないでしょうか。
電子債権の可能性は、かなり広がりそうね。
それにはまず、多くの企業に参加してもらわないとね。
かなり理解できました。先輩 ! ありがとうございます。
まとめ
電子記録債権に関して、初めて知ったという方も、少なくないのではないでしょうか。
資金調達の手段は、多ければ多いほど選択肢が増えますので、小さな会社を経営する経営者たちにとって、歓迎すべきものです。
ただし、あくまでも、資金調達しやすいだけではなく、リスクがどのくらい少ないのかも、資金調達の方法を選択する目安となります。
以上、電子記録債権を使った融資サービスとは?【分かりやすく解説】…でした。
\ メリット盛り沢山 /